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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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67部分:第六話 馬超、曹操の命を狙わんとするのことその十


第六話 馬超、曹操の命を狙わんとするのことその十

「それがわかったか」
「わかった、そうだったんだな」
「ではこれでいいな」
 二人は同時に構えを解いた。そうしてだった。
 馬超はその場に崩れ落ちた。夏侯惇はそれを見ようとしなかった。
 その彼女から背を向けてだ。関羽に対して言ったのである。
「関羽殿」
「う、うむ」
「後は貴殿に任せた」
 こう告げたのである。
「それではな」
「ああ、わかった」
 こうして二人だけにされた。馬超はそのまま泣き崩れた。関羽はその彼女の肩をそっと抱いて泣くに任せたのだった。これで全てが終わった。
 翌日馬超はまず曹操の元に出向いた。曹操は彼女の姿を見るとすぐに周囲の者を下がらせた。だが荀彧がそれを止めようとする。
「生かしておくだけでも危険だというのにそれは」
「いや、桂花これでいい」
「こうするべきなのだ」
 夏侯惇と夏侯淵がその彼女に言った。
「ここはだ。華琳様の仰る通りにするのだ」
「いいな」
「そんな馬鹿なこと通るものですか」
 しかし筍或も言う。
「華琳様を殺そうとした者と。しかもそれは昨日の話なのよ」
「いえ、ここはね」
「それがいいわ」
 だが曹仁も曹洪も言ってきた。
「是非ね」
「二人だけで」
「貴女達まで言うの?そんなことは絶対に」
 筍或も必死の顔である。彼女も曹操を心配しているのだ。
 だが曹操にとっては血縁者であり無二の腹心である彼女達に言われてはだ。荀彧にしても頷くしかなかった。しかも四対一であった。
「・・・・・・わかったわ。それなら」
「うむ、我等は去ろう」
「それではな」
「馬超、いいわね」 
 荀彧は去り際にきっとした顔で馬超を見て言った。
「華琳様に何かしたらその時は」
「安心しな、もうそれはないさ」
 馬超もこう彼女に返した。
「何があってもな」
「その時は私が何があっても」
「だからわかったら行くぞ」
「いいな」
 夏侯惇と夏侯淵は何とか荀彧を連れて行った。曹仁と曹洪も去りだ。馬超は曹操と二人になってそのうえでまずは土下座をした。
「済まない!」
「間違いは誰にもあるものよ」
 曹操はその馬超にこう告げた。何時の間にか自分の席から相手の前に来ていた。
「それだけよ」
「それだけ?」
「そして」
 曹操は言葉を変えてきた。
「立ちなさい。貴女程の武人がそうした姿勢になるのはよくないわ」
「えっ、じゃあ」
「どうやら貴女は私の配下にはならなさそうだけれど」
 顔をあげた馬超にさらに言う。微笑んでの言葉だった。
「それでもね。そうした姿勢はしてはいけないわ」
「曹操・・・・・・」
「だから立ちなさい。そして今度は他の、貴女に相応しい場所で会いましょう」
「あ、ああ」 
 これで二人の話は終わった。馬超は曹操の前を後にした。そのうえで関羽達の前に行きそのうえで彼女達にも別れの挨拶をするのだった。
「じゃあまたな」
「別れるのか?」
「ああ。一旦涼州に戻る」
 まずはそうすると張飛に話す。
「母ちゃんのことを皆に話さないといけないからな」
「だからなのだ」
「そうさ。それからまた武者修行を再会するさ」
「また旅をするのか」
「涼州も袁紹の領土になっちまったしな」
 ここでもこのことが影響していた。
「一族の人間も結構仕えるみたいだけれどあたしはちょっとな」
「あの方は癖が強過ぎるからな」
「あの鰻を胸で掴むのは無理だ」
 それはどうしてもだと。趙雲に返す。
「絶対にな」
「それはそれで艶かしいと思うが」
 だが趙雲は悪戯っぽく笑ってこう述べた。
「ふむ。貴殿はまことに生娘だな」
「じゃああんたはそういう経験があるのか?」
「それはな」
 一瞬だけ頬が赤くなる趙雲だった。だがそれはほんの一瞬で誰も気付かなかった。それを隠してそのうえで話したのであった。
「とにかくだ。袁紹殿には仕えぬか」
「暫くは武者修行さ。それじゃあな」
「うむ。ではまたな」
「ああ、また会おうな」
 こうして一行と別れる馬超だった。彼女は城の門を出てそのまま姿を消したのだった。こうして一行はまた四人に戻った。
「また機会があれば会えるのだ」
「そうですね」
 ナコルルは張飛の言葉に頷いた。
「馬超さんとは絶対に会えますよ」
「そうなのだ?」
「はい、見えます」
 こう言うのだった。
「暫くしてから」
「そうなのだ」
「そしてずっと一緒にいることになると思います」
 ナコルルは話す。
「ですから安心して下さい」
「わかったのだ」
「それに張飛、いえ鈴々さん」
 ここで張飛の真名を呼んで問うた。
「お顔が最初からかなり明るいですけれど」
「人は別れの時の顔を覚えているものなのだ」
 ナコルルにもこのことを言うのだった。
「だからなのだ」
「そうなのですか。だからなのですか」
「その通りなのだ。ではまた行くのだ」
「はい、それでは」
 こうして一行は再び旅をはじめることになった。今度は擁州に向かった。匈奴の勢力圏だった場所から黄河を超え山に入りだ。そのうえで擁州に入ったのである。


第六話   完


                2010・4・15
 
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