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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  カケラ紡ぎ Tips2



「私、前にも言ったわよね。無用なトラブルとは無縁でいたいって」

「ッ!?」

ほむらは今、マミのリボンで締め付けられて身動きが取れない。
ここはお菓子の魔女の結界。

マミの傍らには、まどかもいる。


このままでは、マミは首から上を失い死ぬことになるだろう。


(本当にいきなり・・・・こんな状況で、どうすれば――――!!)

カケラの内容に、こちらの都合などはお構いなしらしい。

さっきからそうだ。

咄嗟の行動。
思いつきの言葉。

それを必死に捻りだし、その場をやりきっていくことばかり。



カケラ紡ぎは続いている。




少しだけうんざりするほむら。
だが、ここでのマミの死は回避しなければならない。

それはさやかの契約につながり、そして魔女へのきっかけだ。
マミという戦力を失うのも、手痛い。



「巴マミ・・・あなたは・・・・・」

「ごめんなさいね。私、あなたを信じ切ることができないの」

「?」


その言葉に違和感を感じる。
まるで、マミはほむらを信じて見たいような口ぶりだ。

だがその確証がなく、まだ怪しいほむらを疑っている事実。


その疑念と信頼の狭間で、彼女は今揺れている。


(これは・・・・カケラの結果・・・・?)

ともあれ、これなら突破口も少し見えてくる。



「巴マミ・・・」

「・・・なに?」

「私のことは、まだ信じなくてもいいわ」

「そう?」


意外そうにするマミ。
だがその一言で、重かった彼女の表情が、少しは軽くなる。


「でも忘れないで。私たちは、魔法少女よ」

「・・・・・そうじゃない子を巻き込むなってこと?」

「それもだけど・・・・それ以上に」

「?」


「その子を連れていくと言うのなら、あなたは絶対に負けちゃダメよ」

「・・・・・」

「あなたが負け、死んでしまったら、鹿目まどかも美樹さやかも死ぬことになるわ」

「・・・・そう・・・ね」

「つれていくなら、覚悟を決めなさい。共にいてほしいなら、その人を護るだけ強くありなさい」


ほむらの言葉に、マミの表情がこわばっていく。
それは恐怖からの物だろうか。


「あなたは・・・・私を脅しているの?一人でいろというの?」

「いいえ。私は・・・・」


私は・・・・なんだろうか?



まどかを護ってもらいたい?
確かにそう。

でも、それだけ?


マミという戦力を失うと、この先のワルプルギスの夜戦で不利になるから?
それもある。

でも、それだけ?



ほむらの言葉はそこで詰まり




------------------------------------------------------------



「あら、このカケラは早かったみたいね」

「あ・・・・」


そこでほむらはカケラ空間に戻っていた。
胸の前には、先ほどの欠片が浮かんでいる。


だが、そのカケラはピンボケのように中身が見えない。

半分は見える。マミの姿だ。
だが、その奥がぼやけてよく見えない。



「どういうこと?」

「ああ・・・それはまだ必要なことがあなたの中に備わってないからよ」

「?」

「そのカケラをさらに見るには、他のカケラを見て、それにふさわしい手札がないとダメよ」


手札。つまりは手段だ。
ほむらにはまだそれがないらいらしい。



「あの場面でどうすればいいのか、まだそれがわかってないのよ。あなたは」

「じゃあ・・・あのカケラは・・・・」

「ああ、大丈夫よ。別に失敗じゃないから。これはここに置いておきましょう。もしこの中身がわかるようになったら、カケラは自然とあなたのもとに行くわ」


ツイ、とそれを自分の傍らに持ってくる梨花。
そうして「さ、次よ」と言わんばかりに目を細める。



振り返った先に広がる、無数のカケラ。

次に選んだのは――――――



------------------------------------------------------------



「あなたに、大切な家族や、護りたいものはあるかしら?」

「え?・・・っと・・・」

「今のあなたは、家族や、友人や、街を・・・・失いたいとは思ってないわよね?」

「う・・・ん。私、この街もみんなも大好きだもん」



学校の渡り廊下。
保健室に向かう途中、ほむらはまどかにそう切り出した。


「な、なんでそんな話・・・・」


いきなりの話だ。

しかも、重い。
普段なら笑うことができたのかもしれないが、ほむらの眼光はそれを許さない鋭さがある。



「失いたく、無いのよね」

「うん・・・・」





【だったら、今の自分とは違う自分になろうとしないで】

ほむらは今まで、そう忠告してきた。
それが最後にどんな結果になろうとも、この警告だけはしなければならない。

だが、本当にこれで正しいのか。



ほむらが次に口から発するべき声は、何か―――――



「得体の知らないものに手を出すな」
「都合のいい話に乗らないで」
「絶対に誰かを助けられると思わないで」


鹿目まどかという少女は、たとえそれが無駄だとしても、誰かのために走り出してしまう子だ。
それゆえに、キュゥべえの「誰かを助けられる」という提案に乗り、契約してしまうケースが多い。

だからそう言った警告をする。
彼女だけに向けた警告。



だが、ほむらは口から出てくる言葉が見つからない――――――



------------------------------------------------------------



「あら、また引いたの?逆にすごいわね」

「・・・・・・」


またらしい。
これも、まだ手段のみつけられていないカケラらしい。


それを梨花が除けておこうとするが、ほむらがちょっと待ってと静止をかける。


「なに?」

「少しだけ、それいいかしら?」


梨花は少しだけ止まり、そしてほむらにそのカケラをフイッ、と送る。
それを包むように手にし、中身を見つめるほむら。



そして周囲を見渡し、一つのカケラを真正面に見据える。

「うん」


一言だけ呟いて、カケラを梨花の方へと戻してそれへと向かった。

そのカケラは



------------------------------------------------------------



「まどか!!」

「ほむら・・・ちゃん?」


夜の公園。
契約を誘うインキュベーダーを、その手の銃で撃ち抜いたところだ。


「どうして・・・殺すことないのに・・・・」



カケラの始まりは、その目撃から。
気付いたほむらの視線の先で、今まさにまどかがキュゥべえと契約を交わそうとしている瞬間だった。


時間停止の魔法。
盾の裏から取り出される拳銃。

そしてその照準をキュゥべえに向け、一発だけ撃った。

弾丸はキュゥべえの胸元を打ち抜き、その勢いでそれはベンチの下に落ちる。


目の前で殺されたキュゥべえに、思わず涙してしまうまどか。
今彼女が願おうとしたのは、魔法少女となってしまったさやかを救う願いだ。


それを阻止したのはいいが、まどかは思わずほむらに敵意を向ける。

だがほむらはそれにかまうことなく、ベンチ下に落ちたキュゥべえを蹴りつけ、街灯の光にさらした。



「ほむらちゃ」

「契約なんてしちゃいけないって、言わなかったかしら?」

声をかけてくるまどかを半ば無視して、ほむらが幾度もした警告をする。
有無を言わさぬその言葉に、まどかはおどおどしながらも言い返してきた。


「でも・・・私しかもう助けられないって・・・あんなことになっちゃったさやかちゃんがかわいそうだよ!!」

「まどか・・・・」



美樹さやかは、ここでは自暴自棄になってしまうのだろう。
そして、魔女へと身を堕とす。

そうなればもう救うすべはない。

今の内、まどかの願いで救うしかないのだ。



だが



「じゃあ、あなたが守りたい人は美樹さんなの?」

「私はさやかちゃんを助けたい」

「だったら美樹さやかはそれで喜ぶ人間なの?」

「え・・・・」


「身代わりのように救われて「私の代わりに人間やめてくれてありがとう」なんていう人かしら?」

「ち、違うよ!!それに、お礼がしてほしくてやるんじゃないよ!!」

「そうね。でもあなたがそこまでして守りたい人がいるように、あなたをそこまでして助けたい人間がいるとは思わないの?」


静かに
だが、それでも胸の奥の鼓動は鳴りやまない。



「あなたがそうまでして誰かを救いたいなら、あなた自身も誰かの「救いたい誰か」であると思ったことはないのかしら?」

「それは・・・・」

「あなたのそれは、そうしようとしている人間の頑張りを無駄にすることよ」

「じゃあ・・・どうすればいいの・・・・」


どうすればいいのか


美樹さやかを助ける?
魔女化を防ぐ?

彼女は感受性が豊かだ。
人としては良しとみられるそれも、魔法少女である以上はソウルジェムの濁りを推進させるものに過ぎない。

そんな彼女を止めることなど、この先そのカケラを選んだ時に、私にできることなのだろうか―――――



そこで、このカケラは終わることなく閉じてしまう。



------------------------------------------------------------



「今のあなたは、家族や、友人や、街を・・・・失いたいとは思ってないわよね?」

「う・・・ん。私、この街もみんなも大好きだもん」


このカケラに戻ってきた。
ここで掛ける言葉は、すでに答えを得ている。


「あなたが家族や友達を大切に思うように、家族や友達も、あなたを大切に思っているわ」

「うん・・・・」


「だから、もしも何かを決断する時は・・・・・・その人たちが悲しむかどうかと、良く考えなさい」

「・・・・・」

「たとえあなたがその命と引き換えに家族や友達を助けたとして、みんなが本当に「笑顔だけ」で結末を迎えられるかどうかを・・・・よく考えてちょうだい」



ほむらはその場から去ってしまう。

その背中に、まどかが叫ぶ。


「ねえ!!」

足が止まる。
振り返り、まどかを再び見る。


「ほむらちゃんも・・・・私の友達だよね?」

「・・・・そうよ。だから、良く考えて」


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「これでこのカケラは完成ね。それにしても、二、三段階必要なカケラも出てきたわね」

フゥ・・・と、疲労から深いため息をつくほむらに、宙で座って足を組む体勢の梨花が感心するように語る。


「ま、安定させてあげてるから、それになりに進みはいいけど」

それでも面倒な道筋してるわね、とやはりクスクス笑う梨花。



「まさか、時系列が前後して解決できるカケラがあるとは知らなかったわ」

「未来に答えがあることも当然あるわ。ま、今からしたらすべて過去だけど」


だからここにカケラも揃えられる、というわけだ。




少しだけ話をしてから呼吸を整える。
そしてほむらが、次のカケラに手を伸ばした。



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「私が魔法少女になった理由?」

「ええ・・・そうね。それを聞くらしいわね」

「?」


帰り道の、魔法少女のパトロール。
マミはまどかと一緒らしく、今はさやかとほむらという珍しい組み合わせだ。


どうやらそこでそういう話題になったらしい。

最初こそ恥ずかしがって言わなかったらしいさやかは、照れながらもようやくその契約の話をする。



「私さ・・・幼馴染に恭介ってやつがいてね」

「・・・確か、バイオリン奏者だった・・・」

「あれ?まどかにでも聞いた?まあいいや。で、そいつが今病院に入院してんのよ」

意味が被ってるわ、と突っ込みをこらえ、黙ってその話の先を聞く。


「そいつ、才能あってさ。でも事故で弾けなくなっちゃって・・・・治っても、前みたいに演奏は出来ないんだって」

それは知っていることだ。
その彼を憐み、治してあげることを願い、彼女は魔法少女になった。

まだリハビリ中で病院にはいるが、時期に退院してくる。



だが、知っているからと言ってそれを流してはいけない。
それを、ここ数回で学んだ。


「じゃあ・・・・美樹さんは上条恭介が好きなのかしら?」

「い、いきなりフルネーム呼び捨て?ってか、え?えぇっっと、その・・・・昔からいた腐れ縁だからね・・・・ただ、あいつが苦しそうにしているのは見ていられなかったんだ・・・・」

「怪我に苦しんでいるから?」


さやかがそこで考え込んでしまう。
はっきり見たわけではないが、そのかばんの中には彼に送るつもりのCDが入っているのだろう。

献身的な、さやかの行動。
その行動の根幹を、知らなければならない。


「う~ん・・・・恭介は怪我に苦しむって言うよか、もうバイオリンが演奏できないってことが辛いみたいだったかな・・・・・」

「そう・・・・私もその人、会ってみたいわね」

「え、ええ!?ま、まさか好きに・・・・」

「話だけではそうはならないわ。でも、あってみたい気はするわね」

「むむ・・・・興味ありか・・・・あいつも隅に置けないねー!!」


あはは、と笑うさやか。
だが、ほむらはさらに踏み込まなければならない。


「あなたはそれでいいの?」

「いいのって・・・」

「だって、ずっと彼のことを見てきたんでしょう?彼のことを護って来たんでしょう?」


その痛みから
その辛さから

クラシックCDをプレゼントして、それを和らげよう
いつも楽しい話をして、演奏できない辛さを忘れさせてあげよう



私だってそうだった。

過酷な現実から守ろう
悲惨な未来を回避させよう

ただ私のは約束で、彼女のは献身的なものだ。



「そこまでして彼のことを護って、それで他の人にとられてもいいの?」

「ええっと・・・・」


そうして、さやかは想像してみた。

恭介がほかの女の子と歩いている。
自分を差し置いて、他の子と


「あ・・・あはは・・・・わたし、いま凄いヤなこと考えた」

「?」

「恨んじゃった、んだ」


それは嫉妬か。
だが、さやかは付け足すように言葉を続ける。


「でも、相手の子じゃなくて恭介に、だね」

「え?」

「お礼の一言ぐらい言いやがれー!!って。多分、一発くらいは殴っちゃうかも」



うん、と頷いて、言葉をもらうさやか。
それはあまりにも儚く見え、それでいて力強い言葉


「いやぁ、やるねぇ転校生。私気づいたわ」

「なにに?」

「私、今も言ったみたいに「あいつが演奏できない」のがかわいそうだったんだ」


その言葉に、まだ理解が及ばないほむら。
首をかしげるが、さやかの独白は続く。


「うん。私、あいつの演奏好きだった。それがもうだれの耳にも届かないのが嫌だった」

「・・・・・」


「私は、あいつが元気でバイオリン弾けたらそれでいい・・・・かな?」

「美樹さやか・・・・」


「私、誰かを助けたかったんだ。あいつの演奏、もう一度聞きたかっただけで・・・・あれ?」


ポロポロと、彼女の瞳から涙がこぼれる。


そうか
そうだったのか


ほむらは知る。
さやかは単純な恋慕で願いを叶えたのではなかった。

彼女は憐れんだのだ。

怪我に苦しむ彼にではなく
演奏できない彼にではなく



彼が演奏できないという、そのことを哀しいと思えたのだ。




「あなた、とても優しいのね」

「ううん・・・でも、もしまた誰かを救えるんなら、私はそれで満足だよ・・・・」


涙ながらに笑顔の彼女は、夕日に光ってとても美しく輝いた―――――



------------------------------------------------------------



「次はそれにするの?」

「ええ」


再び、ほむらがカケラを選ぶ。
彼女がカケラを選んでいる根拠は直観だけ。


だが、だからこそ面白いと梨花は言う。



「そういえば・・・・彼女たちは私がこうして接触していることを知っているの?」

「どういうことかしら」

「つまりこれからカケラの中で会う巴マミは、私が縋り付いたことを知っている巴マミなの?」

「ああ、そう言うこと・・・・カケラに連続性はないわ。残るのはただ結果のみ」


つまり、縋りついただとかの事実は知らないが、記憶の片隅に「キュゥべえを疑う」というちょっとした意識が結果として残る、ということだ。


「そう・・・・・」

「あら?もしかしたああいう行動取るのは少し恥ずかしかったりするのかしら?」

「・・・・・」


少しだけ昔を思い出すほむら。
だが、そのころの自分は臆病な自分だ。

今はそう言っていられない。



次の欠片に手を伸ばす。



傍らには、クスクスと笑うカケラの魔女だけ。



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「これは・・・・・」


目の前の風景は、見たことのないモノだ。


場所は高速道路の高架橋か。
二台の車が衝突し、見事に大破している。


その惨事の中を歩くほむらだが、まったく熱を感じることがない。


まるでビデオを見ている気分だ。
ただこれは、その光景の中にいる、という物だが。


(なんか、魔法使いの映画にこんなシーンがあったわね・・・・)



ということは、これは過去の回想なのか。

ほむらはこれに近い状況を、マミから聞いたことがある。
ならばこれは



『たす・・・・けて・・・・・』


ひしゃげた車の隙間から、少女の弱々しい声がした。
自分が知っているより二、三歳幼いが、巴マミだ。


周囲はガソリンが漏れて焔が踊り、身体が徐々に焼かれていく。

鉄くずになった車の反対側からは、彼女の両親の腕が突き出している。
それはもう二度と動くことなく、真っ赤な血液をガソリン以上に垂れ流していた。


マミもそれを知っている。
すでに両親は死んでいる。

二度と自分の前に笑顔を見せることはない。


だが、それ以上に


『誰か助けて・・・・・』


彼女自身の命が、危機に瀕していた。
救助隊はいずれ来るだろうが、それよりも彼女が限界を迎える方が圧倒的に早いだろう。



「くっ・・・・」

ほむらはその中を進み、マミに向かって手を伸ばしてみる。

だが、これはあくまでも見るだけのカケラだ。
ほむらの手は幽霊のようにすり抜け、何もできないことに拳が振るえた。


「この光景に・・・・何があるの・・・・?」

干渉することがなく、ただ眺め見るだけのカケラ。
いったい、これに何があるのか。


こんな惨状を見せられて、ほむらは憤りしかなかった。



周囲には炎が爆ぜる音と、鉄がそれで軋みを上げる音

そして、少女の助けを求める声だけがする。



そんな絶望の中



『大丈夫かい?』

願いをかなえる、自称魔法の使者が現れた。


『助けて・・・』

『ボクの名前はキュゥべえ!いきなりだけど、君に叶えたい願いはないかい?』

『助けて・・・・・』

『と言っても、今の君が願うことはわかりきっているけどね』

『助けて・・・・』



ただ助けてと呟く少女と、願いをかなえるというキュゥべえ。

それは、どんな願いもかなえてみせると言い、少女は魂の底から願う物を持っていた。



「これは・・・・・」



話には確かに聞いていた。
マミ曰く「悩む時間すら許されない」

だが、聞いた話と実際に見るのとでは、感じるものが全く違った。



親の死ですら気にならないほどの、自身の命の危機。

そんな絶望の中

君が助かる
命を助ける
願いをかなえる

そう囁かれて手を伸ばすなと、そう言われて拒絶できる十代になったばかりの少女がいるだろうか。

本能が「死にたくない」と叫び続け、死にかけの身体であるにもかかわらず、この地獄から抜けだそうともがくほどの状況で、それに抗える。
そんな少女がいるだろうか。


それは、よほどのことを経験した者でなければ無理に等しい。
そしてそのよほどのことを、彼女は今、経験しているのだ。



ほむらは、マミのことを今まで誤解していたのかもしれない。


確かに、すぐに誰かに縋ってしまうその心は、ほんの一突きで脆くなるかもしれない。
盲目的にキュゥべえを信頼するその姿勢に、うんざりもした。


だがこの状況を見て、そんな彼女を責められるものがいようか。
自らの命すら失われようとする惨劇の中、その終わりの寸前で、救いの手が伸びてきたのだ。


あのキュゥべえに対する信頼も、「自分の友人」という領域に踏み込んでくる輩に対する警戒心も、仲間を求め、渇望するのも


すべてここが始まりなのだ。
今現在の彼女を形作る、巴マミの始まりなのだ。



そして、マミが魔法少女の契約を交わす。
そこでそのカケラは閉じられて終わる。




------------------------------------------------------------




「だんだんカケラも増えてきたわね・・・・・」

そう言って、梨花は散らばるカケラを見渡した。



今ほむらはカケラの中に入り、覗いているところだ。




そんななか、一つのカケラが生まれようとしていた。

また輪郭も曖昧で、そこにあるのかどうかも分からないようなカケラ。


「これは・・・そう」


梨花は、このカケラがどんなものをもたらすのかが、なんとなくわかっていた。

今にも消えてしまいそうなそれは、きっと実体化すれば、何よりも強く輝くカケラになるだろうことが、カケラの魔女にはよくわかった。





to be continued
 
 

 
後書き

マミさんに始まり、マミさんに終わる。

そう言えばカケラ紡ぎって、順番通りやらないと見れないカケラあったなー、とか思いだしましたよ!!




このままなら、順調にカケラを集めてカタチに出来そうですね。
次回か次々回にでも終わります。



二、三度潜らないといけないカケラ
一度見るだけで済むカケラ
それらを見ていくことで、新たに発生するカケラ



ほむら、カケラ紡ぎ続行!!!

梨花
「マジほんと簡単すぎるのですよ」

羽入
「あぅあぅ!!僕たちがどれだけ苦労したかと!!」

二人
「ねー!!!」



梨花ちゃまは百年経過しているうちに、いろいろ離れて行っちゃったからね。
そのぶん、ほむらはまだ近いから思いだしやすいんだよ。


梨花
「そういうものなのですか?」

そういうものだと思いますですよ!!




でも一回ミスっちゃったから、ほむほむは「奇跡の前借りのカケラ」は見れません!!
残念!!!


ショウ
「あれノーミスだっけ?」

だな




グダグダしててつまらないかもしれませんが、もう少しお付き合いをば!!




ほむら
「次回。カケラ紡ぎ、その三・・・!!」

ではまた次回

 
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