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白き竜の少年 リメイク前

作者:刃牙
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今、出来る事

最上階で、ハルマ達三人はダイゴとシリュウの二人と対峙する。レツとカナは眼中にない様子でハルマを睨み付けるダイゴを見て、レツがハルマに耳打ちをする

「おい、何かやったのか?めっちゃ睨んでるけどよ」

「城に行った時にやり合ってな」

「ダイゴ。貴方の望み通り、彼は貴方に任せましょう」

シリュウが動いた。印を目で捉えきれないスピードで結んでいく

警戒心を強めた三人。ハルマが瞬時に印を止めようとクナイを投げるが、それはダイゴが放ったクナイに弾かれ、行く手を阻まれる。それでもレツが彼に迫り、拳を放つが瞬間、光が二人を包む

「レツ!」

光が収まった時、そこに二人の姿はなかった。術者自身も消えた事からどこか別の場所に移動したのだろうが、そこがこの国の中なのか。はたまた別空間なのかは分からない。後者の場合は生きて帰れるかも怪しく、心配ではある。しかし、今は目の前の戦闘に集中しなくてはならず、レツの事を考える暇はなかった

「場所を移動しただけだ・・・・」

ハルマから一度距離を取ったダイゴが言い放ち、印を結んでいく

「そして、貴様らもこれから死ぬ」

「口寄せ・穢土転生‼︎」

人が一人入れそうな棺桶が召喚される。軋んだ、重いを音を立てて開かれていく。聞いた事も見た事もない術にハルマ達は動揺する

「何だ・・・・口寄せ・・・・・・なのか?」

「でも、聞いた事ない。人同士の口寄せ契約なんて・・・・」

ハルマとカナの動揺は異例の口寄せ術を見た事にある。人と人が口寄せ契約をするなんていうのは基本的に不可能なのだ。二人が動揺してもおかしくはない。しかし、アサヒの動揺は違う。彼女は忍でないから忍術の知識がある筈もない。彼女が動揺していたのは、口寄せされた人間が自分がよく知る人物であったからだ

「そんな・・・・・・何で」

「兄様」

棺桶から出て来た紺色の着物を着た、右眼が隠れる程に長い黒髪と黒ずんだ結膜と白い瞳が特徴の青年。彼をアサヒは兄様と言った。アサヒの動揺振りから親しい人物である事は簡単に想像できる。そして、アサヒの言葉と看板での話からハルマはある一つの結論を出す

「兄様? まさか、死者が蘇ったというのか?」

「そう!この術は死者を蘇らせる術。穢土転生!こいつは私が殺した火の国、大名家の侍。感動的だろう?死んだ人間が現世に蘇るのだからな」

ハルマの結論を肯定し、話しをするダイゴ。二人に動揺している様子は見られない。それどころか、人の命を弄んだ術を使うダイゴに怒りを滾らせる

「人の命を馬鹿にしやがって」

「最低な奴ね‼︎下劣って言葉が一番似合うんじゃない?」

二人からの罵倒。しかし、それを受け流すダイゴには何を言っても無駄のようだった

「何とでも言え。全ては結果なのだ」

穢土転生された侍の姿が袖から巻物を取り出し、開く。現れたのは一振りの直刀。木で作られた柄と鞘。そして、抜かれて現る黒の刀身。夜桜だとハルマは一瞬で理解した

「やれ」

侍がアサヒの前に現れ、刀を振り下ろす。間一髪、ハルマが間に入ってクナイで防ぎ、カナが八卦空掌を放つ。躱されたが、わざとそうさせたのだから落胆はしていない

「にい・・・・・・さま・・・・・・」

「姫。少し下がっていろ・・・・聞いてるのか?姫!」

むしろ、カナにとって気掛かりなのは呆然として床にヘタリ込んでしまったアサヒだ。目は虚ろで焦点が合っていない。ハルマの呼びかけさえも聞こえていないようだった

「無駄だ!並の人間なら、親しい者に剣を向けられたら堪える‼︎光の国を滅ぼすついでに火の国の姫も殺してやるよ!」

「ちっ・・・・くそっ」

「(水遁・水龍弾の術!)」

ハルマが印を結び、チャクラを水に変換して口から放つ。それは龍を模り、ダイゴ達に迫るが侍が印を結び、口から吐いた土が壁を形作る

「(土遁・土流壁! )」

水龍弾の術が土流壁に当たるが、砕ける事なく防がれてしまう

「土の性質変化か・・・・」

二対二という状況ではあるが、アサヒを庇いながらの戦いはキツい。もう少し距離が取れれば、状況はマシになるが、戦いの舞台は砦の中。自由に戦うには狭すぎた。しかし、任務は果たさなくてはならない。その為に最善を尽くす。任務に最善を尽くすのは忍の基本。それを今、ハルマは実践しようとしていた

「影分身の術!カナ。お前は穢土転生の奴を頼む!」

両手の人差し指と中指を十字に交差し、影分身を一体作り出す。影分身がダイゴと競り合う。カナは白眼を発動し、侍と対峙。そして、ハルマの本体はアサヒの方を見ていた

「分かったわ‼︎」

「姫!聞いているのか?姫‼︎・・・・・・アサヒ‼︎」

反応がなかったアサヒは自身の名前を呼ばれて初めてハルマの方を向く

「大切な人に剣を向けられて心を乱すのは分かる。だが、あんたは覚悟を決めた筈だ。夜桜を取り戻す覚悟を。なのに、このまま死んでいいのか?あんたの覚悟は偽物なのか?」

あくまで諭すように優しく問い掛けるハルマの問いにアサヒは首を横に振る

「・・・・いいえ。違います」

ハルマをアサヒが見つめた時、彼女の目には力が戻っていた

「なら、下がって見てろ。しっかり見届けろ。それが戦う術を持たない姫。あんたに出来る事だ」

「はい。夜桜を・・・・お願いします」

「ああ。任せろ」

ハルマが柔らかく笑いかけ、ダイゴに向き直る。影分身は倒されてしまったようでもういない

「俺にこの眼がある限り倒す事は出来ない」

「お前は写輪眼を・・・・自身の力量を過信し過ぎだ。写輪眼があろうと使いこなせないなら宝の持ち腐れ。お前は正にそれだ」

「何⁉︎」

眉を顰めるダイゴに向かって不敵に笑い、眼を左手の人差し指で指し示す

「今から証明してやるよ。前に言った、お前がうちはでない事の証明と共にな」

「ぬかせ‼︎」

「(火遁・火炎弾の術!)」

印を結び、ダイゴがチャクラを火に変換して吐く。しかし、それはハルマの水遁の術で相殺され、ダイゴは明らかに動揺する

「(水遁・水乱波の術)」

「何故だ⁉︎何故、俺が押されて・・・・」

ならばとダイゴは体術で勝負を仕掛ける。しかし、右ストレートを放てば、片手で容易く受け止められ。もう片方の手で放ってもそれは同様。手があっさりと解放されたと同時に距離を取る

「その程度か?」

「何故だ⁉︎何故・・・・」

「言っただろ。宝の持ち腐れだと。真実と偽り。それに気付かなかった時点でお前の負けは決まっていたという事だ」

視界が黒く染まる。ダイゴはそれと同時に自身の首に手をやり、絞める

「何⁉︎」

自分の意思に反した行動である事は明白で、ダイゴの顔が驚愕に包まれている

「今のお前は既に俺の術中にある」

「・・・・・・幻・・・・術」

「分かっても、もう遅い」

更に力強く首が絞められ、ダイゴの意識が途切れる





「本当に写輪眼を使いこなせてないな。眼が合った時に幻術を仕掛ければ良かったものを」

ハルマが呆れたように話す。ダイゴは地面に倒れ伏し、気を失っている

あの様子だと幻術がいつ仕掛けられたのか彼は気付いていないだろう。幻術が不得手以前の問題を抱えている可能性もある

そもそも写輪眼というのはそれ自体に術を宿した血継限界。目を合わせただけで幻術に掛ける事すらも可能なのだ。彼の性格は傲慢で過信しやすい。それからして使わなかったのは使えなかった事に他ならない。見抜く眼を持っていても幻術に掛からない訳ではない。瞳力を上回る幻術ならば掛かってしまう事もあるだろう

しかし、写輪眼を十分に扱う事すら出来ず、それでいて自身の力を見誤り、幻術を見抜けなかった間抜けさには呆れる他ない。自身の過信が招いた結果と言えるこの戦いにはハルマも苦笑し、呆れるが同時に教訓として胸に刻み込む

「まあ、とりあえずは眼を後で回収するか」






波打ち音が聞こえる。周りは海。目の前にはシリュウ。そんな場所にレツはいた

「ここはどこだよ?」

「貴方の死に場所と言ったところですかね〜まあ、他の二人も私が貰いたかったところではありますが」

シリュウの言葉にレツは自信ありげに笑う

「そんな事言ってられるのも今のうちだぜ‼︎」

「面白い!やってみなさい‼︎」

 
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