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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  あたしは絶対認めない



「さやかは・・・・もう戻せねーのか?」

「あの人が無理だって言うなら・・・一体誰が・・・?」

杏子の言葉に、翼刀が返す。




翌朝

今彼らが集まっているのは、暁美ほむらの家だ。
独特なレイアウトの部屋の中に、彼らは招かれた。

議題は一つ。



「遅くて明日、早ければ今晩に、ワルプルギスの夜がこの街に来るわ」

「な!?」

「にぃ・・・!?」


あまりに唐突な事態に、翼刀と杏子に衝撃が走る。
ただ一人、映司だけはよくわかっていないようだが、説明を聞いて驚いた。


「そんな奴が!?」

「でも・・・・まださやかが!!」


そう。
今だ公園は閉鎖中で、魔女はあの結界の中にいる。

あれがさやかだとわかって、それを討つ事など出来るはずもないのだ。


しかし


「あれが来るとなると、俺の結界も壊れる」

「えぇ。そうなると、さらにあの魔女も相手にしないといけないわ。それだけは絶対に避けたい。だから」

「だからさやかを殺すってのかよ!?」

バン!!


杏子が両手を机に叩きつけ、猛烈に抗議する。
しかし、今の彼らの手元には、魔女化した魔法少女を戻す術はないのだ。


「・・・・あたしはやるぜ。さやかを戻す」

「そんなこと―――ッ!!」

「出来ないって誰が決めたんだよ!!」

ほむらの言葉に、杏子が反発する。
やらないうちに諦めてなるものか。

自分たちも不条理を覆して魔法少女になった。
ならば、なった後にもそれが出来ないなどと誰が決めた。


「絶対にできないってわかるまで、あたしは諦めない」

「ワルプルギスの夜が来たらどうするつもりなの!?」

「だったらそいつも私がブチのめす!!」

「バカなこと言わないで!!そんなこと出来るはずがないでしょう!!!」

「だったらなんだ!!お前さやかを殺せって言うのかよ!?」

「あれはもう美樹さんじゃない!!!魔女よ!!」


感情をあらわにして、らしくもなく叫ぶほむらに杏子は押されてたじついてしまう。

だが、グッと顔を引き締めて、資料を手にして部屋の外に向かった。


「どこへ行くの!?」

「言ったろ。さやかを助ける」

「だから――――!!」

「あんた、あのまどかってやつを助けたいんだよな?」


言って聞かない杏子に、ほむらの声が飛ぶ。
だが、それもその質問に塗りつぶされる。


「そうよ・・・・だからなに」

「そうさ。それと同じさ。あたしはさやかを助けたい。あんたはあの子を助けたい。それだけさ」


ガチャリと、扉が開く。

「あいつには、まだ答えを見せてもらってねーんだ・・・・それまで死ぬなんて、あたしは絶対認めない」

「答え・・・・?」

気にすんな、とほむらに一言返し、部屋の外に足を踏み出す杏子。
と、立ち止まって肩越しに振り返った。


「でもよ・・・・あんたあの子を護るって言うなら、あの子の周囲のすべてもまもらなきゃいけねぇんじゃないのかい?」

「ッッ!!そんなこと――――!!」

「じゃあな」

パタン、と
軽いと音がして、杏子が部屋を立ち去る。


「俺ついて行きます!!なにか決まったら連絡してください!!」

そう言い、バッタカンを置いて杏子を追う映司。




部屋には翼刀とほむらだけが残された。

「あなたは行かないのね」

「俺の本来の目的はワルプルギスの夜だ。それに、映司さんがついていれば問題ないさ」


そう言って、広げられた地図を見る翼刀。
どうして揃えられたのかわからないほどの資料が、ここに有る。


「倒せるのか?」

「一人では決して無理よ。だから、彼女もいっしょに戦ってほしかったのだけれど」

「・・・・実際、杏子ちゃんにさやかちゃんを戻すことはできるのか?」

「それは・・・・わからないわ」


確かに、彼女の言い分もわかる。

魔法少女は条理を覆す存在だ。
ならば、それが出来たところで驚きはしてもおかしいところはない。


だが


「今までにないことよ。そんなことができるなら――――」

「誰かがそれを願い――――魔法少女になるしかない、か?」

「まどかにアイツが近づけば分かるようにしている。心配はないわ」

「だが・・・・」


まどかの性格からして、たとえ相手があのキュゥうべえであろうとも、親友を取り戻す為ならば覚悟を決めるだろう。
それを防ぐために、まどかの周囲にはほむらの簡単な感知魔法のほかにも、カンドロイドが巡回している。

キュゥべえに大した攻撃能力はない。
カンドロイドがいれば、翼刀たちが到着するまでの時間は稼げるだろう。


「それで・・・・ワルプルギスの夜はおそらく、ここから来るわ」

「わかるのか?」

「・・・・統計よ」

「舜さんとかショウさんもそう言ってたな。ほむらちゃん、まだ何か隠してないか?」

「・・・・・」

「ほむらちゃんの魔法は時間操作魔法だ。だったらもしかして――――君は・・・・」

「それがわかっているなら黙って聞いてちょうだい」


翼刀の言葉を遮り、ほむらが言葉を続ける。
話したくないならいい、と翼刀もそちらの話題に耳を傾ける。


「私の魔法を知っているなら、話は簡単よ。ありったけの武器を用意して、時間停止で一斉に発射。兵器の連続砲撃で、あいつを倒す」

「いや、待ってくれ。それはダメだ」


ほむらの提案に、翼刀が待ったをかける。
そう、翼刀の目的はワルプルギスの夜を倒すことだが、それよりもまず


「俺は唯子を助けに来たんだ。それで倒したら―――」

「唯子・・・・?前に行ってた、ワルプルギスにつかまった人のことかしら?」

「そうだ。だから、あいつを助けるまではその攻撃は看過できない」

「でも・・・・そんなことを言っていて、あれを倒せなかったらこの街が!!」

「君がまどかちゃんのことを何を捨ててでも守りたいように、俺はあいつを護るためなら街一つ壊滅しても構わない」

「ッッ―――!!」


翼刀の両眼が、ほむらを射抜く。

この男は本気だ。


もし救えるのならば、街も人も、すべて救うだろう。
だが、もしそれが無理ならば――――


「幸運にもワルプルギスによる嵐のせいで街は空っぽになる。最悪、街がなくなるのは仕方がない」

フッ、とさっきの迫力が嘘のように、翼刀が柔らかく言う。

ほむらはその声に少しホッとする。
流石に人命を投げ捨ててでも、彼女を助けようとはしないようだ。


「甘いのね」

「街もできたら壊さないでおきたいけど、それは無理だろうからな。最初から諦める」

二人の話し合いは進む。
果たして、あの巨大な魔女から唯子を救い出せるのだろうか?



そして


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「行くぞ・・・・」

「まって、杏子ちゃん!!」

公園に足を踏み入れようとする杏子。
その肩を掴んで、引き留めるのは映司だ。

杏子はすでに魔法少女に変身しており、槍を握っている。

肩に置かれた映司の手を振り払って、杏子が叫ぶ。



「なんだよ!!あんたも無駄だって言いたいのかよ!!」

「そうじゃないって!!だけどいきなりで行っても、失敗はできないんだぞ!?」


映司は別段、杏子の案に反対しているわけではない。
自分も化け物になったところを、仲間に助けてもらった身だ。

だが、いくらなんでもいきなり踏み込んでいってどうにかできるわけもない。


「・・・・チッ、解ったよ。だけど、どうするつもりだ?」

「これ、使ってみようかなって」

そうして取り出したのは、一枚のメダル。
だが、映司がいつも使っているような色鮮やかなものではなく、無骨な銀色をしたセルメダルだ。


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「さやぁかぁ~~~~!!さぁ・・・やぁ・・・・かぁ~~~~!!!」


「どう?」

「どう?じゃねーだろ!!」

スパン!!


公園の中で、杏子が映司をはたき倒す。

映司がどう?といったのは、まさしく杏子から生み出されたヤミーだ。


生み出されたヤミーは、その人物の欲望を叶えてセルメダルを蓄える。
そしてどんどん協力になり、しだいにすることが大きくなり、やがて欲望が暴走するのだ。

結果、最終的には「こんなつもりじゃなかったのに!!」とヤミーの親を泣かせることになるのだが・・・・



「いや、こればっかりは別に暴走してもいいかなって」

「おい!!」


まあ確かに、少しくらい無鉄砲に突っ込んでくれた方がありがたい。
その方が、どんな罠があるかわかるというものだ。


彼らがいるのは、あくまでも翼刀の結界内だ。
魔女結界はこの公園の中央にある。


そこまで歩いていこうと思っていたのだが・・・・


「お、おぉ、おぉぉおお!?さやか!?さっやか!!さっやか~~~ァ!!」

「あいつのテンションおかしくねぇ?」

「ヤミーって意外と頭いい感じの多かったんだけどなぁ・・・」


ヤミーは暴走して走り回っている。
しかもまだ最初の一歩すら叶えてないのだから、セルメン状態。いうなればミイラ男状態である。

だが、それでも結界に向かって一直線に進んでいる。
走って。


「あいつ大丈夫なのか・・・?」

「さあ?まあ囮だしいいんじゃない?」

「あんたって実はいい性格してるよな・・・・」


そうして、結界にたどり着いた一同。
そこでヤミーが雄たけびを上げ、脱皮するように変貌を遂げた。


「あれは・・・・」

「カマキリ・・・?」

「前に見たのとは違うなァ・・・・カマキリよりも蟷螂、って感じだな」

「とうろう?なにそれ」

「ある話では、雀すら倒すカマキリのこと」

「すげー強そうじゃん!!」


現れたヤミーは、どう見てもカマキリだった。

だがその姿からは、映司の言う通りのイメージしか出てこない。
女性型だが、どうにも武人と言った出で立ちなのだ。


しかも鎌は、鎌と言うよりも手刀に近い感じになっている。


まあ実際にはハナカマキリヤミーであるのだが。



そのヤミーがさらに気合を上げて、結界の中に踏み込んで行った。

二分後


「ウボァァァアアアア・・・・・・」

ゴトッ、ジャララララ!



「ダメじゃねーか!!」

結界からヤミーは帰って来たものの、その場で崩れ落ちて無数のセルメダルに崩れてしまった。
それに対し、やはり映司をド突こうとする杏子。

だが映司はしゃがみこんでしまい、その手は何もない空を切る。


おっとと、と態勢を整え、杏子が振り返ると映司は崩れたセルメダルを手に何やら調べているようだった。


「何やってんだ?」

「杏子ちゃん、これ」

「?」

中腰でその傍らに寄ると、映司は一枚のセルメダルを取り出してきた。

それを手に持ってみると、少しひんやりとした冷たさがあった。
見て見ると、濡れているようだ。


「これは・・・・」

「中のフィールドのどっかに、少なくとも水があるってこと。あと、これは斬られたメダル」

「・・・・武器はそのまんまなんだな」

「使い魔のか魔女のかどうかわからないけどね」


相手の動向も少しはわかった。
だが、問題はこのまま行っても意味がないということだ。

あくまでも自分たちの目的は、相手を倒すことではないのだから。



一瞬、このメダルをさやか自身に投げて見るのも考えた。

だが魔女となった今では、その願いは呪いにしか向かないだろう。
そうあっては最悪だ。強力な使い魔の完成である。



「結局・・・ここまで来て出来ることはないのかよ・・・・・」

「そんなこと・・・ない!!!」

「!! まどかちゃん!?」


二人が振り返る。
そこにいたのは――――

走ってここまで来たのだろうか。
息を切らし、肩で息をするまどかだった。



今日

まどはか変わることなく、いつもどおりに学校に登校し、いつもどおりに授業を受けていた。
だがしかし、その教室の光景に耐えられなった。


早退したのである。



毎日いたはずの人がいない。
毎日聞いていた声が聞けない。
毎日話していたようなことが話せない。

そんな光景に悲しみが押し寄せ、更に上条恭介からの言葉がとどめだった。


「鹿目さん。さやかがどうしたか、知らない?」


彼は知らないのだ。
もうさやかが学校に来れないことを。
それどころか、その思いを伝えることもできないことを。

その言葉を聞き、まどかはカバンを掴んで教室を飛び出していた。

担任の先生に呼びとめられたが「生理です!!」と言ってそのまま逃げるように早退してきたのだ。



「まどかちゃん・・・それ・・・・」

「はい・・・今になってとても後悔してます・・・」

「なんてこと叫んで来てんだあんた・・・・」

カァ、と顔を赤くして恥じらうまどか。
だがそれを振り払って本題に入る。


「さやかちゃんは、みんなを護るために魔法少女になったんだよ?だったら、その力がこんな風になっちゃうのなんて、私認めない」

「まどか・・・・」


「私も行く。絶対について行く。やり方はわからないけど、さやかちゃんを絶対に戻す!!」

「でも・・・どうやってやるんだい?」

「は、エージ知らないのか?こういうのは親友の呼びかけとか涙とかで元に戻るもんなんだよ」


そう、それはただの願望だ。
愛と勇気が勝つ物語だ。


しかし、そんなものでグリーフシードがソウルジェムに変貌するならば、魔女も魔法少女もいなくなっているだろう。



それでも――――



そうして彼らは踏み込んでいく。

この先に待つのは激しい戦闘。
そして、悲しい結末だけかもしれないと知りながら。


そして――――――




悲しい哉。
世界はそれを裏切らない。




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数時間後


見滝原市一帯に避難命令が発令された。
超巨大なスーパーセルが、この街に接近しているというのだ。

まどかは昼ごろに早退したが、どっちにしろ学校は生徒を家に帰していた。


しかもそのスーパーセル、今までなかったというのに突如観測されたというのだ。

見滝原市にそれがやってくるのは、夜更けの21時ごろ。
深夜にかけて、本格的に市内に入るらしい。


この季節ならまだ空は明るいはずなのに、すでに先行してきた分厚い雲で日光が閉ざされる。


一晩もすれば通過するという感覚からか、避難する人たちは怯えながらもまだ安心している。
避難所の建物で、一夜を明かせば終わるのだから。


だがその中に、鹿目まどかの姿はない。
そも彼女は、避難のことすら知らないのだ。


「くそ・・・あの子、どこ行っちゃったんだよ・・・」

「おねーちゃんどこー?」

「うーん・・・・もうどこか別の場所に避難したのかな?」

避難所ではまどかの母、詢子と父の和久、弟のタツヤが、その心配をしていた。

当然、避難所は市から多少離れた場所だ。
そして、何も避難所はここだけじゃない。

それに学校からの早退の連絡は来ているので、もしかしたら別の場所に避難しているのかもしれない。
だが、携帯電話からする留守番電話サービスの声が、彼女の不安を駆りたてる。


(まだ来たわけじゃないから、携帯の電波がダメになるなんてことはないだろうし・・・・)


焦る気持ち。
少女は戦いの中にいる。



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そして、さらに二時間後




バタンッッ!!!

「!?」

「え、映司さん!?まどかちゃんも!!」

「どうしたの!?」



「・・・・杏子ちゃんが、やられた」

「な・・・・」


午後八時。

準備を進めていたほむらの家に、まどかを抱えた映司が飛び込んできた。


話によればあの後さやかのもとに向かい、必死に説得を試みたようだ。

だが、すでに届く言葉はなく。
映司の協力もあって、かなりの時間耐えながら言葉を投げかけたらしいのだが―――――


「攻撃の手が鈍ったんだ。叫び声が途絶えたんだ。絶対にあれはさやかちゃんだった・・・・なのに・・・」

そう。
彼等の諦めない心は、魔女になったさやかに届いたように見えた。

だが、それまでだ。
元に戻す術がない。しかも、その変化も一瞬で直後にはそのゆるんだ分を取り戻そうとするかのような猛攻を仕掛けてくる。


そうして、限界が訪れた時



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「エージ。あんたはその子を連れて外に逃げな」

「な・・・・バカ言うな!!そんなことできるわけないだろう!!だったら杏子ちゃんも一緒に―――」

「コイツを置いてはいけねぇよ・・・・」


ザシッ、と
槍を地面に突き立てて、しょうがない奴だなと言うように微笑みながら振り向く杏子。

そして魔女が視界に入った瞬間、その体は巨大な腕に捕まれて連れて行かれる。


「杏子ちゃん!!」

「早く行け!!じゃなきゃ、まどかも一緒に死んじまうぞ!!」


そうして、ソウルジェムを握りしめてすべてのエネルギーを収束する。

握られた身体は、もはや感覚がない。
戦いも長引きすぎたし、仮にそれを修復しても、ソウルジェムは濁りきってしまうだろう。


だったら――――

ギュ・・・・


「あたしが一緒に行ってやるよ・・・・さやか・・・・」



ゴ――――ォォオオオオオゥッッ!!




一人ぼっちは、さみしいもんな―――――






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「それで・・・・佐倉さんは・・・・」

まどかをソファに座らせ、翼刀が飲み物を手渡す。

映司は唇をかみしめ、悔しそうに拳を握る。


「映司さん。その・・・・」

「翼刀君・・・俺は・・・また・・・・」

「大丈夫です」


映司の言わんとすることはわかる。

目の前で杏子が自爆したのだ。
魔女を巻き込んで、一緒に。


だが、翼刀はある種の自信に満ちた顔で、映司の肩を叩く。


「魔女になったら、舜さんでも戻せないって、言ってました」

「でも・・・だからって!!」

「だけど・・・・あの人は「戻す方法はある」って、そう言ったんです!!」


グッ、と
拳を握り、語る翼刀。

彼に、彼らに救われた自分だからわかる。


彼等が救うと、救える言うのなら、それは必ず信頼できると。


「舜さん自身にできなくても、舜さんは突破口を見つけてます。だから、今はそれを信じましょう」



『失われたものすら取り戻すだろう』

その一言は、そう言うことだ。
蒔風は、救えるものは根こそぎ救う。

救えないモノを、救うとは言わない男だ。


それに、と翼刀は言葉をつづけ

「あれだけの人がいる「EARTH」で、救えない人が思いつきませんよ」

「・・・かな・・・」



そう言って、ひとまず立ち直る映司。

今は悲しみに暮れる時ではない。
脅威が、今も街に迫っている。


「行こう」


彼等が扉に手を掛ける。

戦いが、始まる。



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鹿目一家の避難する、市外の体育館。

いまだに彼女との連絡は取れず、言いようもない不安に詢子はイライラしながら館内の廊下をウロウロしていた。


もう時間は21時を回ろうとしている。
そろそろ災害が街に及ぶ時間だ。


「なんで繋がんないんだよ・・・この・・・あっ」

ドンッ!


携帯画面を睨みうろつく詢子が、前から来た人にぶつかってしまった。

すみません、と軽く頭を下げる詢子。
それに対し相手の男は、落ちた彼女の携帯を拾って手渡した。


「あ、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ・・・鹿目詢子、さんですね?」

「え・・・はい、そうですが・・・・・」


携帯を受け取ると、その男はいきなり詢子の名前を聞いてきた。
どうして知っているのかと、いつもなら警戒する彼女だが、状況が状況なだけにそこまで気が回ってない。


「いま避難している人を調べているんですが、御嬢さんがいないんですよね?」

「は、はい・・・・連絡も取れないで・・・・」

「大丈夫です、安心してください。ほかの施設に避難してると、今連絡がありましたよ」

「本当ですか!?」

「はい。ただ断線してしまったようで、向こうとの連絡は取れないんですが・・・・」

「いえ!!ありがとうございます!!はぁ~、よかった・・・・」


ホッ、と胸を撫でおろし、安堵の表情を浮かべる詢子。
その詢子に、男は語りかける。


「今は連絡が取れませんが、収まり次第連絡を取ります」

「あ、お願いします」


頭を下げ、お願いする詢子。
子を想う母の有るべき姿だ。

その姿に、男は頭を上げてください、と謙遜して言った。


「大丈夫です。娘さん・・・・まどかさんは、必ず連れて戻ります」

「あ・・・はぁ・・・」

「お友達も、その大切なものも。これまでと、これからを。すべてひっくるめて、必ず」



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バタン!

「ふう、これで大丈夫だろう・・・さて、準備はいいか?」

「お前の言う通りのメンバーを揃えた。やろうとすることはなんとなくわかるが・・・・できるのか?」

「やってみないとわからないなぁ・・・・」


数分後

吹き荒れる風の中、車に乗り込んだのはさっきの男だ。
運転席に座る男との簡単な会話を済まし、車を発進させる。


後ろに乗り込んだ数人のメンバーと共に、車は見滝原市に向かって行く。




向かう先には、大嵐。
その中に、最大の魔女が待ち構える。




to be continued
 
 

 
後書き

杏子ちゃんの戦闘シーンは省きました。
映司がいるだけで、原典と何も変わらないからです。

グダグダと続くだけになりそうだったのでカットしました。

空気にしてごめんね・・・・

同時に杏子脱落。
やはり運命は変わらないのか・・・?


それにしても一瞬でもコメディパート入れたせいで余計にひどいな、展開!!
武闘鬼人は「上げて落とす(鬼畜)」を覚えた!!


唯子パートは入れられなかったので、ここから本格的に始まる・・・のかな?


唯子
「まだなんですか?」

うーん、本当に書きながら決めるからわからない。
でも次話の頭はお前で決まってるから、安心してくれ。


唯子
「わーい!!」

だが十行で終わるかも・・・

唯子
「パニッシャー!!」

うっ、ごパァッ!!



これからのワルプルさんの予定は

18時:見滝原氏に到着
それから数時間かけて街を横断、一晩で抜けていく、というのが観測から導きされる予測。

だけどこいつは魔女だから――――


まあそんな見立て、役に立ちませんね。


杏子
「次回、どこかのお話?」

唯子
「私のお話」

ではまた次回をお楽しみに!!


 
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