| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十一話 岐阜城にてその十九

「だからここはだ」
「領地を割譲してぎゃ」
「兵を返してもらいだ」
 関西が捕虜にしている一万の兵をというのだ。
「そして関東に向かえ」
「そうした方がええだぎゃな」
「それとも領地を一時的に失うのがそこまで嫌か」
 エルフは坂口に問うた。
「貴殿はそこまで小さいか」
「おい、わしがそんな男だと思うだがや」
 坂口はエルフの言葉に目を鋭くさせて問い返した。
「おみゃあさんは」
「思っていないからここに来た」
「土地は何時でも取り返せるぎゃ」
「しかし飲み込まれるとだ」
「それで終わりぎゃ」
「駿河、甲斐が狙われてる」
 東海の領地であるこの二国がというのだ。
「だからすぐにだ」
「あの二国から一気に飲み込まれんうちにぎゃな」
「ここは主力で東に向かえ、私も既に越後の東に兵を送った」
「そういえばあいつがおらんぎゃ」
「そういうことだ」
 エルフは即答で返した。
「わかったな」
「ああ、よくわかったぎゃ」
「そういうことだ」
 エルフは今度は中里達に言った。
「ここは講和してだ」
「退いてか」
「そうだ」
 そうしてというのだ。
「領土を渡す代わりにだ」
「兵を返せっちゅうんやな」
「そうしてもらう」
 こう芥川に話した。
「いいな」
「美濃の西か」
 割譲される領土についてだ、芥川は言った。
「もう少し欲しいがな」
「そう言うか」
「ああ、こっちとしてはな」
「攻め取った分はそこまでだが」
「だからっちゅうんか」
「それで我慢してもらう」
 有無を言わせない言葉だった。
「いいな」
「そういう訳にもいかんで」
「こっちもぎゃ」
 芥川も坂口も言った。
「こっちもまだやれるぎゃ」
「美濃全土と尾張や」
「城はこのまま守れるぎゃ」
「攻め取るまでや」
「そう言うと思っていた」
 エルフも既にわかっているという返事だった。
「だがお互いそう言っていられる状況か」
「知ってとるんか」
 芥川はエルフのその言葉に目を鋭くさせて言った。
「こっちの事情を」
「東にかまけて西はおろそかに出来るか」
「何かあったっちゅうんか」
「これから大いにあるだろう」
 エルフは芥川を彼のその目に負けないだけ鋭い目で返した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧