レーヴァティン

「毒もな」
「この世界のマンティコアの書も読んだが」
「俺が読んだ本にはなかったな」
「毒があり針も飛ばせる」
　そうしたマンティコアだというのだ。
「だから注意しろ」
「やれやれだな」
「倒すならだ」
　英雄は左手に天羽々斬を持ちつつ久志に告げた。
「一撃だ」
「針を飛ばされないうちにか」
「そうした方がいい」
「面倒にならないうちにか」
「そういうことだ、いいな」
「ああ、わかったぜ」
　久志も英雄のその言葉に頷いた、そしてだった。
　マンティコアをあらためて見た、そうして敵の動きを一旦見たが異形の獣は餓えたその目で彼を見ながらだった。
　久志に飛び掛かってきた、獣は尾を使わず襲い掛かる方を選んだ。そのモンスターに対してだった。久志は。
　レーヴァティン、今は主が念じた為に紅蓮に燃えるその剣を一閃させた。するとモンスターは正面からだった。
　真っ二つになり着地したその瞬間にゆっくりと左右に分かれていった。そうしつつその左右に燃えた身体を燃やしていった。
　その倒れた獣を見てだ、英雄は言った。
「腕を上げたな」
「実戦はしていなかったがな」
「鍛錬は欠かさなかったからだな」
「ああ、それに剣がな」
　レーヴァティン、それがというのだ。
「凄いからな」
「あのマンティコアはかなり強かった」
「だよな、やっぱり」
「しかしだな」
「ああ、その強い奴でもな」
「一撃でか」
「攻撃を仕掛ける前にな」　
　まさにその前にだった、久志の一撃は。
「いけたぜ」
「毛も皮も骨も両断したな」
「すげえな、ただ真っ二つにしただけじゃないぜ」
　久志は炎を纏ったレーヴァティンの剣身を見つつ言った。
「刃こぼれ一つしてないぜ」
「どうした感じで切れた」
「もう何でもなくだぜ」
「何でもなくか」
「熱いナイフでバターを切るよりもな」
　こうした例えで話したいのだった。
「ずっと楽にいけたな」
「そこまでか」
「その強い筈のモンスターもな」
「そうして倒せたか」
「ああして燃やしてな」　
　真っ二つになって分かれたモンスターの身体は今も燃えている、しかしその炎は次第に弱まってきていて金貨になるのはあと少しだった。
「いけたぜ」
「そうか」
「凄い剣だぜ、これは」
「伊達に世界を救う剣とはされていないな」
「だよな、多分御前の刀もだぜ」
「天羽々斬もだな」
「これ位は斬れるぜ」
　久志は英雄ににやりと笑って告げた。