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ドリトル先生と悩める画家

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第五幕その十

「芸術、そしてスランプは」
「太田さんがスランプを抜けたって核心したら」
「まさにその時は抜けたってこと」
「そうしたものなの」
「つまりは」
「結局はね、芸術家の感性はその人の感性」
 その創作する人のです。
「だからだよ、果たしてどうなのかだよ」
「太田さんが完全に抜けたって思えば」
「完全にだね」
「その時が太田さんのスランプが終わった時」
「そうなるの」
「うん、そうなるよ。そして太田君は」
 その人はといいますと。
「とにかく前向きだよ」
「霧の景色も観ていたしね」
「本当に前向きよね」
「芸術に対して貪欲っていうか」
「凄く前を見ている感じで」
「芸術に生きている」
 先生はこうも言いました。
「そうした人だね」
「じゃあ将来は画家さんかしら」
「そうなるかしら」
「あの人も」
「ゴッホみたいな」
「うん、それだけで食べていくことは難しいかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「いい芸術活動を続けていけるかも知れないね」
「熱意故に」
「それがあると」
「うん、そうも思ったよ」
 先生の口調はしみじみとしたものになっていました、そしてそうしたことをお話してでした。先生はここで窓の外をふと見ました。
 するとです、霧からでした。
「雨だね」
「ええ、降ってきたわね」
「しとしととした雨が」
「静かな雨だね」
「降ってきたわね」
「こうした静かな雨もね」
 どうにもというのです。
「風情があるね」
「何か柳や松のところに降るとね」
「余計に風情があるわね」
「そうね」
「そうしたところだと余計に」
「日本の草木にはそうした雨が合うのかな」
 先生は窓の外の雨を見つつまた言いました。
「やっぱり」
「そうなのかしらね」
「日本の草木には静かな雨」
「それが合う」
「言われてみれば」
「短歌や俳句でもね」 
 日本の詩でもというのです。
「そうしたものがあったかしら」
「雨と草木を歌った歌」
「そういえばありそうね」
「それもかなり奇麗かも」
「確かあったね、和歌はね」
 この歌、日本の文学の一つも思い出した先生でした。
「景色と恋愛を短い言葉の中に見事にミックスさせていてね」
「奇麗なのね」
「そのミックスがまた」
「そうなのね」
「あの芸術はね」
 まさにとです、先生は皆が淹れてくれた二杯目の紅茶を飲みつつまた言いました。 
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