星河の覇皇
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第六十三部第二章 円卓その四十七
「ただそれだけのことです」
「言葉では簡単だな」
「はい、非常に」
「しかしその中にあるものは大きいな」
「宗教は宗教です」
「しかし政治も関わる」
「政治は関われないのです」
この政教分離の原則をだ、ビルギストンはあえて言うのだった。この政教分離がわかっているからこその言葉である。
「ですから追認だけです」
「その通りだな」
「この動きは止まりません」
エウロパはエウロパで教皇を戴くという考えはだ。
「何しろキリスト教は我々のものですから」
「イエス=キリストが生まれてからな」
「はい、そこからでした」
「キリスト教がローマに入り長きに渡った弾圧を耐え」
「ローマ帝国に認められてより」
「キリスト教は欧州、エウロパのものになった」
これがエウロパにおけるキリスト教の考えだ、歴史によるものだ。
「だからだ」
「それで、ですからね」
「連合のものではない」
「所詮は」
「その為だな」
「彼等は確かにバチカンを自分達の中に組み込みました」
このことは確かだというのだ、エウロパ戦役の結果バチカンは連合に移転することになった。そして今教皇は連合各国を歴訪している。
しかしだ、それでもだというのだ。
「条約にはそのことは書かれていますが」
「エウロパが教皇を独自で立ててはならないとはな」
「一言も書かれてはいません」
「条約は重要だな」
「はい」
どう重要かという話だった、今の話は。
「そこに書いてあることは絶対です」
「破ってはならないな」
「それは信頼に関わります」
「貴族は約束を破らない」
モンサルヴァートはこの言葉を出した。
「例え何があろうとな」
「はい、ですから」
「このエウロパ条約にしてもだな」
「破りません」
ビルギストンもモンサルヴァートに言う。
「このことは絶対です」
「その通りだな、しかし」
「そう、しかしです」
まさにと言うビルギストンだった。
「そこに書かれていないことは」
「していいな」
「条約はそうしたものです」
「そこに書いてあることは守らなくてはならない」
「しかし書いていないことは」
「しても構わない」
「はい、ですから」
この外交上の、それこそ古の頃から存在していることを言うのだった。
「我々もです」
「教皇を立てていいな」
「むしろ立てた方がいいです」
「政治的にはだな」
「左様です」
今度はだった、ビルギストンはこうしたことを言った。
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