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高くて悪いか

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第二章

「頭ぶつけるどころじゃなくてね」
「交際も満足にできない」
「そういうことね」
「誰かいないかしら。背が高くてもいいって子」
「あんたのお母さんやお姉さん達みたいな人いるでしょ」
「絶対何処かにね」
「だといいけれどね」 
 この背の高いことが亜美の悩みだった。高過ぎて交際相手も見つからないのだ。それで彼女は彼氏が欲しいのに誰もいなかった。それでだった。
 今度はだ。こんなことを周囲に言うのだった。
「何か背が低くなる方法って」
「ないわよ」
「そんなのないから」
「絶対にないから」
 周りはきっぱりと否定してきた。完全には。
「背が高くするのも難しいのに」
「というかそれは牛乳とか飲んでもなるとは限らないから」
「それで低くって?」
「確かに歳取ったら背中が曲がったり間接の間が縮んで背は全体的に低くなるけれど」
「それでも。今すぐにっていうのは」
「絶対にないから」
「じゃあ私ずっとこのまま?」
 周りの容赦ないコメントにだ。亜美は泣きそうな顔になった。
 それでだ。今度はこう言うのだった。
「背が高いままなの」
「普通背が高いのって嬉しいことだけれど」
「高過ぎるっていうのね」
「そう。私にとっては困ってることなの」
 とにかくそれで困っているのは事実だった。彼女にとっては切実なのだ。
 周りも確かに容赦のないことを言う。だが、だった。
 亜美が切実なことはわかっている。それで言うのだった。
「だったら。せめてね」
「背が余計に高く見える髪型にはしない」
「あとヒールの高い靴は履かない」
「そうした工夫をしてね」
「ちゃんとしてね」
 こう言うのだった。そしてだった。
 亜美は実際に髪型もストレートにして上にあげたりはしなかった。しかも靴もだ。
 平らなものにしてできるだけ背を目立たない様にさせていた。しかしそれでもだ。
 やはり女の子達の間にいると一際高い。目立つのだ。  
 頭一つ抜け出ている場合もある。だから余計に人目についていた。 
 その彼女が校内を移動するのを見てだ。男連中は言うのだった。
「大林ってやっぱりな」
「ああ、高いよな」
「でかいんじゃなくて高いんだよな」
 身体はすらりとしているのでだ。そちらになるのだった。
「目立つよな、本当に」
「何かモデルみたいだよな」
「けれどな。付き合うとかだとな」
 彼等もこうした話をするのだった。
「自分より背が高いとな」
「それはちょっとした変わらないってな」
「横にいたら困るんだよな」
「だよな。高過ぎるんだよ」
 とにかくだ。その高さ故にだった。
「一緒にいるの引くな」
「美人だし性格いいのにな」
「どうしたものだろうな。もうちょっと背が低かったらな」
「俺も声かけるのにな」
「俺もだよ」
 この辺り彼等も残念に思っていた。彼等から見ても亜美の長身は問題だった。
 だがその亜美がある日だ。こんなことを女の子達に言ったのだった。
「何か私よりずっと大きいね」
「大きいって背が?」
「そうだっていうの?」
「そう。駅前のファミレス」
 八条レストランだ。あるグループが経営しているチェーン店だ。女の子の服が可愛いことで知られている。その店においてだというのである。
「そこに凄く背の高い人がいるのよ」
「高いってどれ位?」
「どれだけ高いのよ」
「一九〇超えてるかしら」
 そこまでだとだ。亜美は言うのだった。 
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