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制服が邪魔をする

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第四章

「私達と一緒に遊びに行くみたいにね」
「普段着で普段のままで」
「自然体で行けばいいじゃない」
「ただ遊びに行くんだしね」
 一人は悪戯っぽく笑ってこんなことも言ってきた。
「気にすることはないじゃない」
「そ、それはそうだけれど」
 内心を読まれてるかと思ってぎくりとしながら返した。
「じゃあとにかく自然体ね」
「それでいったらいいじゃない」
「もう普通にね」
「そうしていったら?」
「二人でね」
 皆私に妙に温かい笑みを向けて言ってきた。そうして私もその皆の言葉を受けてそれで決めた。
 土曜日の九時五十分に中華街の入り口に来た。ゆっくりと来たつもりなのに時計を見たらその時間だった。
 もう人通りが激しくなっている入り口で時間を見てから自分で自分にこう言い聞かせた。
「別に。早く来たくて来た訳じゃないから」
 自分でこう言い聞かせて相手を待った。その間妙にいらいらした。
 まだ来ないのかしら、周りと時計を交互に見ながら待った。そうしたいらいらとした中で五分位過ごしているとやっと来た。
 その彼に開口一番こう言った。
「遅いわよ」
「遅いってまだ九時五十五分だよ」
「えっ!?」
 そして言ってから気付いた。待ち合わせ時間は十時、まだ五分あった。
 彼は早く来た。けれどだった。
「そ、そういえばそうよね」  
 私は焦りを必死に隠しながら彼に応えた。心なし直立して手が後ろになった。
「まだ五分あったわね」
「そうだよ。まだ十時じゃないよ」
「間違えたのよ。時間をね」
「十時じゃなかったら何時だったの?」
「ちょっとね。まあ何ていうか」
 顔が赤くなっているのが自分でもわかる。彼から視線を逸らして顔も心なし逸らしてそのうえで彼に対して答えた。
「少し間違えたのよ」
「少し」
「いいじゃない。とにかく今からよね」
 私はとにかく自分の中の焦りを抑えながら彼に言った。
「中華街の中で」
「そうしよう。お饅頭とか茶卵食べて」
 どっちも中国のお料理だ。彼は最初にそれを出してきた。
「食べ放題に行ってね」
「そうするのね」
「それでそれからカラオケに行って」
 まずは食べてからだった。
「遊ぼう。そうしよう」
「ええ、じゃあね」
 私は何とか落ち着きを取り戻して彼に応えた。そうしてからだった。
 二人でお饅頭を買って食べて茶卵も一緒に食べた。それから中華バイキングのお店に入ってそちらも楽しんだ。そしてカラオケにも入った。
 カラオケボックスの中に二人で入って歌っている時に彼は私にこんなことを言ってきた。二人用の小さな部屋の席に座って手を叩いて私の歌のリズムを取った後で。
「ねえ、今ってね」
「今って?」
「凄く可愛いよ」
 歌い終わった私に笑顔で言ってきた。
「とてもね」
「可愛いって。お世辞?」
「俺お世辞言わないから。本当に可愛いよ」
「そんなこと言われたことはじめてだけれど」
「はじめてって。本当に可愛いよ」
「全然可愛くないわよ」
 私はこう彼に返した。少しむっとした顔になって。
「無愛想でいつも不機嫌で」
「最近かなり変わってきたから。それにね」
「それに?」
「今の服だってね」
 私の今の服もだという。今の私は白いフリルのあるミニスカートに黒と白のストライブのハイソックス、上着は淡い赤のブラウスと黒のネクタイ、そして紅のベレー帽、皆にこれが似合うと言われた格好をしてみた。この子の為じゃない。このことは絶対に言えた。自分自身に何とかにしても。
「可愛いよ」
「これ考えたから」
「俺の為に?」
「違うから」
 ムキになって彼に返した。
「私が自分に似合う服を着てるのよ」
「ふうん、そうなんだ」
「そうよ。あんたの為じゃないから」
 このことはとにかく断った。 
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