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レーヴァティン

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第五話 神殿でその二

「けれど巨人は雑魚じゃないだろ」
「それは確実だ」
「だろ?だったらな」
「自信はないか」
「ああ、そうだよ」 
「力量が伴っていない」
「デカブツを向こうに回して勝つなんてな」
 それこそとだ、久志は軽いが確かな口調で応えた。
「まだそこまで強くないさ」
「武器が違えばわからないが」
「特別な武器だとか」
「並の剣や刀だとな」
「巨人の相手は出来ないか」
「そう思っていいだろう」
「じゃあ今は出て来ないことを祈るだけか」
 久志は腕を組んで言った。
「現実はそうか」
「生きたいならな」
「そりゃ俺だって死にたくないさ」
「ならそうするぞ、いいな」
「名誉ある撤退ってことか」
「命あってだ」
 英雄のこの主張は変わらない。
「わかったらその時はだ」
「逃げるか」
「連中がいない場所までな」
「こいつも連れてだな」
 パンシャも見てだ、久志は問うた。
「やっぱり」
「旅の仲間だからな」
「やっぱり見捨てたら駄目だよな」
「その時はよくても後で苦いことになる」
「仲間を見捨てたらな」
「そんな思いをしても平気か最初から思わないならいいが」
「俺もそこまで鬼じゃないぞ」 
 久志は英雄にすぐに言い返した、それも眉を顰めさせて。
「幾ら何でもな」
「俺はそうした奴は嫌いだ」
「仲間を見捨てる奴はか」
「友人もな、自分が都合が悪くなって仲間や友人を切り捨てる奴はな」
「信用出来ないからな」
「人間やロバやそういう問題じゃない」
「仲間ならな」
 久志はパンシャを見たまま話した。
「やっぱり見捨てたら駄目だな」
「道具と思ってるならいいが」
「いや、こいつは仲間だよ」
 パンシャのその目を見た、実に優しい目だ。
「道具なものか」
「ならだ、見捨てずにいくぞ」
「連れて逃げるか」
「絶対にな」
 例え巨人なり他の強力なモンスターが出てもとだ、それでもと話しながらだった。二人はパンシャと共に道を進んだ。幸い巨人も他の強力なモンスターにも遭遇せず。
 ある大きな町に着いた、英雄はその町に入って久志に言った。
「さて、この町だが」
「ああ、これまでの村と違うな」
「人も店も多い」
「ついでに言うと金もある」
「馬を買うか」
「そうするか」
「あと出来ればロバも余計にだ」
 英雄もパンシャを見た、ここでそうした。 
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