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夢幻水滸伝

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第四話 夢と現実その十二

「一体」
「三十人位です」
 部将の一人が言ってきた。
「大体」
「三十人か」
「はい、それ位です」
「そやったらな」
 ここでだ、これまで黙っていた鵺が言ってきた。中里を乗せて歩いていたのだ。
「自分だけで充分や」
「三十人位やとか」
「もう余裕や」
 それこそというのだ。
「何も心配いらんわ」
「そうか、それやったら軍勢はそのまま進ませて」
「部将の人等に任せてな」
「その間にな」
「賊退治やな」
「わしも戦えるで」
 鵺は自分自身もと言ってきた。
「そやから余計にや」
「三十人位やとか」
「まあ自分の神具の一振りか二振りでほぼカタつくけどな」
「神具ってそんなに強いんやな」
「特に自分等神星が持ってるもんはな」
「そうか、ほなその言葉信じさせてもらうで」
「神具は嘘吐かん」 
 鵺は中里にこうも言った。
「そやから安心せえ」
「そうか、じゃあ今から行こか」
「はい、その間進軍続けてますさかい」
 部将の一人が中里と鵺にここで言ってきた。
「早いうちに帰って来て下さい」
「ああ、そうするな」
「あとお昼になったら飯です」
 これはしっかりと採るというのだ。
「沢山食えますで」
「兵糧よおさん持って来てるしな」
 後ろの輸送隊がだ、米俵に入れた飯の他に漬けものや味噌、干し肉や干し魚等の他には武具も運んでいる。
「食えるんやな」
「そうです、うちはそういうのには苦労してません」
「太宰君のお陰やな」
「はい、宰相さんがそこんとこしっかりしてくれてるので」
 だからだというのだ。
「そこでは困ってません」
「それはええこっちゃ、やっぱり腹が減っては戦が出来ん」
「現地で買うことも出来ます」
「兵糧とかもやな」
「武具もです」
「足りんと買わなあかん」
 この現実もだ、中里はわかっていた。
「やっぱりな」
「そうです、そやからそこは安心して下さい」
「いざという時のお金もあるからか」
「はい、出雲までそうしたところは楽に行けます」
「後は速いうちに着くだけやな」
 出雲までとだ、中里は状況を理解して頷いた。
「そのこともわかった、ほなな」
「これから行って来ますか」
「賊成敗してくるわ」
 中里は微笑み明るい口調で率いる者達に告げた。
「その間頼むで」
「はい、わかりました」
「その間は任せて下さい」
「ほなな」
「飛んで行くで」
 鵺は自分の背に乗る中里にこれまた明るい声で言ってきた。
「出雲までの賊の居場所は全部わかってるしな」
「もう頭の中に入ってるんか」
「この灰色の頭脳の中にな」
「鵺の頭脳は灰色か」
「そや、これから行く賊の隠れ家もな」
 そこもというのだ。
「そこにすぐに行ってやっつけるで」
「そこに全員おるか?」
「あの連中は夜に出て昼寝る、そやからな」
「今は午前中やしな」
「寝てる、そやから全員おる」
「ほな寝込みを襲う形でやな」
「倒すで、今から」
 やはり明るく言う鵺だった、そしてだった。
 中里は鵺に乗ったまま空に出た、そうしてだった。彼に導かれて風の様に賊のところに向かうのだった。


第四話   完


                     2017・2・1 
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