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レーヴァティン

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第三話 生きるか死ぬかその八

「慎重になれ」
「上手い話には近寄るなか」
「そうしろ、最初からな」
「裏も取ってか」
「そうして生きろ、どの世界でもな」
「そうするか、じゃあ剣が抜けなかったら」
「その時は仕事を慎重に選べ」
 こう話してだ、そしてだった。
 二人は神殿に向かっていた、歩いているうちに夕暮れになりそれも遅くなってきてであった。そうしてその暗がりの中で。
 久志は英雄にだ、眉を顰めさせて言った。
「おい、夜になるな」
「そうだな」
「俺達飯も食ってねえし」
「金もない」
「どうなるんだ」
「どうなるもこうなるもない」
「飯を食わないまま野宿かよ」
 久志は夜になろうとしている道の中で言った。
「近くに村もないしな」
「そうだな、ではだ」
「野宿かよ」
「答えは一つだ」
「おい、それって大変だろ」
「そう思うか」
「こんなところで野宿だぞ、じゃあな」
 それこそという口調でだ、久志は言う。身振りまで入れてそれが余計に必死さを出していた。実際彼にとっては大変な問題だった。
「何があってもな」
「外で寝ている間にか」
「寒いだろうしな」
「そうだな、しかしな」
「しかし。何だよ」
「俺達は金も寝るのに使う道具もない」
 英雄はこの時も現実を淡々と語った、道の左右にある森は既に真っ暗でありその中を見ることは出来なくなっている。
「しかもだ」
「そして飯もな」
「何もない、ならだ」
「黙って寝ろってか」
「夜まで歩いてな」
「ったく、いや」
 ここでだ、久志が思い出したことはあった。それは何かというと。
「金はあったぜ」
「そういえばそうだったな」
「さっき盗賊を倒してか」
「連中から貰っていたな」
「ああ、借りるんじゃなくてな」
 倒したからだ、こうはならない。
「貰ったな」
「一人辺り金貨十枚程度だった」
「合わせて百枚位な」
「それを山分けしたな」
「ちょうど割り切れたしな、金はあったんだ」
 迂闊にも忘れていたが今思い出せた。
「それならだよ」
「村に入ればだな」
「そこで飯買って食って宿屋にでも入って」
「そこで寝られるな」
「そうだよ、俺達は助かるんだよ」
「野宿をせずにか」
「ああ、野宿から逃れられるぞ」 
 村さえ見付けられればとだ、久志は希望を取り戻して言った。 
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