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スリラ、スリラ、スリラ

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招く

…戦う?戦うと云うのは、つまりその、会社と…だろうか。そんな事が果たして可能なのか?カイナは纏まらない思考を渦巻かせたまま何の気なしにアギトをじっと見詰めた。
「…カイナ、あんまり見ないでよ。恥ずかしいじゃん」
「…あんたはそう云う女々しい所を直さない限り結婚どころか彼女の一人も出来ないわよ」
「…うーん?」
もじもじと赤らめた頬を触りながら、『女々しい』男・アギトは唐突に続きを話し始めた。
「あの、うん。戦うって云うのは勿論悪の屍株式会社と、なんだけど…無理、かな…いやほら、カイナも一応ウイルスを打たれたわけでしょ。て云うことはさ、カイナの中にも殭屍の部分が多少なりともある訳じゃない。…出来ないかな、屍の首を取る」
然し乍ら、カイナには1つ心配な事があった。それは、『未だ殭屍ウイルスの効果が見られない』事であった。だからカイナは今殭屍であるのか人間であるのかが分からない。ましてや自分の身体には見えない部分も数多ある。それに変化の起こるのが体表のみとは限らない。もしそれが体内の、更には臓腑の中であったならば、「殭屍ウイルスは効いてないよ!」とは言えないのである。
「…いや…出来なくは…無いかも知れないけど。まだ私は人間だから。…いつ、どういう風に殭屍になるのかも分からないし」
「…勿論、判断はカイナに任せる。でも、僕はこのまま逃げ続けるのは嫌だ。…せめて、せめて少しでも、悪足掻きをしてみたいんだよ」
「アギト…」
どうもカイナは、アギトの頼みに弱い様だ。
「…仕方ないわね、一緒にやってあげるわよ…まぁ、本当に役に立つかは置いておいて」
「良かった、カイナならきっとやってくれると思ってた」
「…あ、そう」
斯くして2人の殭屍戦線は生まれたのであった。

近辺は赤錆の団地に囲まれている。この辺りはもう殆どが廃墟になっている(十余年程前に殺人鬼事件があった)ので、本部は此処に置けば良いだろう。複雑に入り組んだ道は追手を撒くのにもうってつけである。
「はあ、然し困ったね。2人だけでは流石に無理かな」
「自分から言っておいて何で弱気になってんのよ。どうせ私もアギトも追われてる身なんだから、逆に云えば何でも出来るでしょ」
「…それはそうなんだけどさ。もう少し人が居れば心強いでしょ…」
そんな事言っても、と言いかけて、カイナはあの時の部長の言葉を思い出した。
『殭屍ウイルスの被験者になってもらうよ』。
それは、カイナが初の被験者であるということか…?? 
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