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花火と犬

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第五章

「そうするか」
「そうしましょう、私もお酒はね」
「後にするか」
「この子達が嫌うから」
 タロ、そしてワラビを見て答えた。
「だからね」
「そうするか、じゃあ今からな」
「サンルームで観ましょう」
「今ここでな」
 明るく話をしてだ、そしてだった。 
 早百合はサンルームの自分用の椅子を出した、そして夫婦で並んで座ってサンルームから花火を観た、すると。
 ワラビはすぐに権造のところに来た、そのうえで。
 彼の足に顔を寄せて寝た、権造がその頭を撫でると。
 嬉しそうだった、権造はそのワラビを見て微笑んだ。
「やっぱりな」
「家族が傍にいるとね」
「それだけでな」
「落ち着く娘よね」
「そうした娘なんだ」
 ワラビはというのだ。
「本当にな」
「そうよね」
「ああ、しかもな」
 ここでだ、権造は。
 タロも見た、タロを見るとだ。
 興奮していたがだ、それでもだった。
「タロも来たな」
「私達のところに」
「二匹一緒になったな」
「そうね、どちららの子もこうなのよね」
「俺達が好きなんだな」
「家族がね」
「じゃあな」
 権造は優しい目で言った、顔は厳しいがよく見ると目はいつも優しい。そしてその優しい目を普段以上にそうさせたのだ。
「これからは花火大会はな」
「このサンルームで観るのね」
「ああ、ワラビが落ち着く」 
 花火の音を怖がる彼女がというのだ。
「だからな」
「こうするのね」
「そしてな」 
「お酒はなのね」
「もう飲まない」
 花火大会を観る時はというのだ。
「そうするな」
「わかったわ、それじゃあね」
「こうして観ていくな」
 花火があがる、タロははしゃぐがワラビはまたびくっとした。音が怖いのは相変わらずだ。
 だが権造の方を見てだ、ほっとした顔になってだった。
 彼のところに寝そべるのを続ける、その彼女の頭を撫でてから。
 権造は花火を観た、早百合はその夫の横で一緒に花火を観ている。一家は揃ってサンルームでいた。最後の花火があがるまで。


花火と犬   完


                         2017・1・17 
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