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アメリカン忍者

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第四章

「ジェームス=ボンドは創作で」
「忍者もスパイだからだ」
「地味ですか」
「実はな」
「映画とかでの活躍は」
「あくまで創作だ」
 その世界のことだけであるとだ、猪鹿はスティーブに言い切った。
「だからだ」
「それはですか」
「信じないことだ」
「ショー=コスギさんはですね」
「あれは忍術というよりはだ」
 猪鹿は彼が演じる忍者についてはこう言った。
「ヒーロー、超人だ」
「キャプテンアメリカみたいな」
「そんなものだ」
「そうですか」
「何度も言うが実際の忍者は違う」
「スパイなんですね」
「その通りだ、それでもいいのならだ」
 スティーブの顔を見つつ言った。
「この道場への入門を許可する」
「正直驚きました」
 スティーブは自分の心情を素直に話した。
「まさかです」
「忍者がスパイだったとはか」
「思いませんでした、超人か格闘家か」
「そんなものだと思っていたな」
「実は違うんですね」
「忍術も魔術とは違う」
 ここも断るのだった。
「よく覚えておいてくれ」
「大きな布をパラシュートみたいにしたり大凧に乗って空を飛ぶことは」
「出来ないこともないだろうが、特に凧はな」
「あと木の葉隠れや水遁は」
「それも出来ることは出来るが」
「全部地味ですか」
「映画の様に派手ではない」 
 そうだというのだ。
「壁に隠れることも難しい」
「壁と同じ色の布を出してその中に隠れる」
「段差や手が出ていてばれる」
「じゃあ壁や天井を歩いたり」
「それは出来ない」
 これははっきりと否定した。
「常識の中のことだけしか出来ない」
「蝦蟇を出して乗ったりとかは」
「それは妖術だ」
 それになるというのだ。
「日本や中国にあるな」
「そうしたものですか」
「だから違う」
 また断った猪鹿だった。
「忍術は忍術でだ」
「超能力や妖術じゃない」
「そこは強くわかっておくことだ」
 こう言うのだった、スティーブに。
「いいな」
「はい、わかりました」
「その様にだ、では入門だが」
「忍者の現実を受け入れるのなら」
「いいが」
「お願いします」
 微笑んでだ、スティーブは猪鹿に答えた。
「それで」
「では君に本来の忍術を教えよう」
 猪鹿も微笑んで応えた、こうしてスティーブは剣道に加えて忍術も学ぶ様になった。猪鹿が教える忍術は確かに地味だった。
 手裏剣は投げるが一発ずつでこちらの練習に時間はあまり割かない、跳躍や水泳何よりも隠れることに集中していた。
 物陰や水の中に隠れる、どう逃げるかどう追手を捲くのか。そうしたことが殆どだった。忍者の道具もそうしたことに使ってばかりだった。
 スティーブは忍者装束、黒いそれを着つつだ。猪鹿と共に修行をしつつ言った。今は跳躍の練習だった。 
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