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星河の覇皇

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第六十二部第三章 投票直前その一

               投票直前
 連合はある一定期間でその悪意を全開にする時がある、それはエウロパ総統選直前の時である。その時になるとだ。
 常にだ、ネットや居酒屋でだ。彼等は口々に書き込みくだを巻くのだ。
「次のエウロパ総統はな」
「ああ、イギリスの貴族様だよな」
「何とかいう侯爵だったな」
「ギルフォードだったよな」
 名前は結構いい加減だった、彼等の認識は。
「確かな」
「ああ、そうだったな」
「ギルフォードとかいったよ」
「何か凄い性格悪いらしいな」
「傲慢でな」
「それも賄賂取るんだろ?」
「女性問題も派手らしいな」
 少なくともギルフォードは賄賂は摂らないし女性問題とも無援だ。彼自身はそうしたことに興味はない。だが連合ではエウロパの総統候補者は必ずこうした属性が付く。
 それでだ、こうも話されるのだった。
「エウロパの連中らしいな」
「性格悪くてな」
「性根が腐ってるんだよ」
「貴族だからな」
 貴族イコール傲慢で無能な権力者、これが連合市民の認識だ。
 それでだ、彼等もこう言い書き込むのだ。
 こうしたことが常に連合内で言われる、ネットでも居酒屋でもこう話されている。そしてその中においてだった。
 中央政府でもエウロパについて色々と検証されていく、ただ彼等は敵国のことなので冷静に検証していく。
 その検証の中でだ、キロモトは首相であるアッチャラーンに言った。
「エウロパの次の総統だが」
「はい、どうやらです」
「ギルフォード侯爵だな」
「彼でほぼ決まりです」
「そうか、彼か」
「彼はかなり危険だ」
 そうだと言うキロモトだった。
「我々にとってな」
「連合にとって、ですね」
「エウロパを立ち直らせてだ」
「強くさせますね」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「彼はな」
「厄介な相手ですね」
 連合にとって、というのだ。
「エウロパは暫くあのままでいて欲しいが」
「それが適いそうにありませんね」
「中から乱すか」
 ここでこうも言ったキロモトだった。
「これまでは我々がやられていたが」
「これからはですね」
「連合からエウロパに入れるか」
 工作員を、というのだ。
「そして色々とやるか」
「いえ、しかし」
「それはだな」
「出来る状況ではありません」
 それは、と言うアッチャラーンだった。
「それならばマウリアルートになりますが」
「人種的にだな」
「骨格までレントゲンで検査されればです」
 それで、というのだ。
「どれだけ上手く変装してもばれてしまいます」
「人種的にな」
「そのことがあってだったな」
「はい、これまでも」
 工作員を連合からエウロパに入れることはだったのだ。
「出来ませんでした」
「連合では純粋なコーカロイドもいるがエウロパではモンゴロイド、ニグロイドはいない」
 しかも混血もしていない、連合とエウロパの人種的な違いはそうなっている。純粋な白人かそうでないかだ。 
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