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決して折れない絆の悪魔

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「はぁ……胃が、痛い……」

IS学園職員室、山田 真耶の机。

昼休みの時間になり一時の休息をとっている真耶だが気は重く、異様に胃が痛く感じられた。原因は早退してしまった二人の男子生徒だった、否彼らが悪いか否かと言われれば否だろう。境遇などを考えれば十二分に理解出来るし納得も行く。だが教室の空気は最悪、その一言だった。

「これでも後で渡さなきゃいけないなんて……まだ新学期の始まりだっていうのに」

机の上にあるプリントには代表候補生の再教育補習の案内と書かれた紙があった。これは自分のクラスのセシリア・オルコットに渡す物だ、彼女がクラス代表決めの際言った言葉は大問題だ、日本人を差別しているしISを生み出した篠ノ之 束を侮辱している事にも繋がる。そして彼女の立場は国家代表候補生、ゆくゆくは国家を代表するものになるかもしれない存在である彼女らのような存在の言葉はその国の言葉として受け取る事も可能なのだ。この場合、イギリスが日本を侮辱した事になり深刻な国際問題に発展しても可笑しくない。

「未来君達が宿泊している料亭の電話番号はっと……やっぱりお電話しなきゃ駄目ですよね……はぁ、気が重いなぁ」

妙に気が重い腕を動かして電話を取る、早退の件は学園長に報告したが致し方がないと言われたが今後はそうしないように注意はしてほしいと言われてのでそれを兼ねて言わなければならない。しかしあの二人は本当に怖いもの知らずだと思う、あの織斑 千冬の目の前であんなことをしたうえで堂々と批難までしたのだから……。

「(まあ私もあれは先輩が悪いと思いますが……って慌てるだけ慌てて止められなかった私も同罪ですね……)」

軽く自分に辟易しながらボタンのプッシュ音が耳に入ってくる、気持ちが重いのはこれから大切な生徒に対して後ろめたい気持ちがあるからだろうか、それとも大切な生徒を守ってあげられなかったのが情けないからだろうか。誰も答えは教えてくれないまま、コール音は途切れた。


料亭 新鳥

「はい、はい。そうですか解りました。代表選考には参加しましょう、しかし俺とミカは専用機開発に協力しますので当日まで休みます。ええ政府には言ってあります」

まだ授業も終わってない時間に帰ってきた二人にサムスは驚いたが事情を聴くと額に青筋を立て必死に怒りを抑えているかのようだった。彼女も自分の事を幾ら悪く言われようが子供や久世の事を悪く言われると激しく怒るタイプ、一応一夏は抑えるように言ったがどうなるか……。二人が部屋で寛いでいると内線経由で学園の真耶からの連絡がやってきた。

『解りました、処理はこっちでしておきますのでその……この際ゆっくりと休んじゃってください。ごめんなさい、情けない先生で……』
「何言ってるんですか、山田先生はちゃんと仲裁しようとしてたじゃないですか、それに教室を出ていこうとする俺たちを心配して見に来た。あの担任と比べたら何倍も良い印象ですよ、それじゃあ」

ゆっくり受話器を置くとテーブルのノートを広げつつ院長が作ってくれた漢字ドリルをサムスに見てもらいつつやっているミカの前に座りながらポットの電源に入れて湯を沸かす。

「茶、要るか?」
「要る」
「母さんは?」
「貰おう。一夏、私な学園に乗り込んで暴れてやろうかなぁって思ってるんだ」
「笑いながら何物騒な事言ってんだよ……」

が、何処か冗談にも聞こえないので一夏は唯々呆れるしかない。

「取り敢えず1組で注意しておくのは織斑 百春と織斑 千冬、セシリア・オルコットだな今の所。母さんが注意しとけって言ってた篠ノ之さんはどっちかというとまともな人間だったよ」
「そうか……しかし久世やお前達を侮辱するとはな……その小娘許さん……!!」
「母さん母さん、机に罅入ってる」

ああ済まないと力を緩めるが机の一部にはくっきりとサムスの指跡が残り罅が走っている、本気でキレていると解る。まあ怒っているのは一夏とて同じ、今冷静でいられるのはセシリアに対する報復をミカがある程度やってくれたのと久世からミカを宥めるブレーキになってほしいと言われているから。だから冷静でいる、もしもブレーキになれと言われていなかったら―――すでにセシリアはこの世にいない。

「専用機は如何なんの?」
「ああ、未来研が二人とも受け持つ。例の試作型3世代型ISが二人に譲渡される」
「バルバトス……あいつが来るのか」
「ああ、ミカにはそのISが来る事になっているな、一夏の方の名前は……まだ決まっていないらしい。今のうちに考えておいたほうがいい」
「解ったあと母さん一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「殺す、一歩手前までなら多分OKだよな、母さん?」
「構うな、私が許す」

そう言われると一夏の口元は大きく歪んだ、三日月のように。ミカもその言葉を何処か待っていたのか口元を少し緩めていた。


未来院 院長室

「全く、未来院その物を侮辱するなんて……命知らずですね、そのお嬢さんも」
「俺もそう思うよ」

院長室では久世とオルガが共に揚げポテトをつまみながら話をしていた、内容は勿論先程サムスから来た学園で起きた事について。その場にいる本人を侮辱するならまだしも未来院を侮辱するのは自殺行為に等しい、自分を侮辱されるのがいいが未来院を侮辱するのは許さないという考えを持つ者は此処には沢山いるからだ、寧ろその場でミカがその程度で止まったのに驚きを覚える。予想では腕が圧し折れる寸前で一夏は止めると思っていた。

「んで如何すんだ院長、イギリスに抗議文でも送るか?」
「そうですねぇそれは少し待ちましょう。オルガ、君に依頼したいことがあります」
「俺に?」
「ええ……一週間後、二人の専用機の運搬を鉄華団にさせるように手配させます。その時にはサムスも同行します、そして学園にサムスと共に赴いて見て来なさい。ミカの蹂躙を」
「へっ了解」 
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