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決して折れない絆の悪魔

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出会い

「お母さん!ああ良かった、まさか本当に来てくれるなんて!ごめんなさい、お母さんはISには関わらないって言ったのに」
「何を言う。自分の子供がわざわざ仕事場に招待してくれたんだぞ?来ない訳がないだろう」
「有難う。それにお父さん、貴方まで来ていただけるとは光栄の極みです」
「本日はお招き頂き有難うございます、いやぁ立派になりましたねぇ」

未来院の久世とサムスはとある研究所からの招待を受けて、その研究所へとやってきていた。招待されたのはサムスが元々IS操縦手として名を馳せていたからだ、IS同士での対戦の世界大会であるモンド・グロッソ、ある国の国家代表として大会に出場し射撃・飛行部門において優秀を収めている程に才能と実力に溢れていた。今やってきている研究所は未来院にて過ごした者達が立ち上げた未来IS総合研究所、通称未来研である。

「それでそちらのお二人は孤児院の?」
「ええ、私たちの息子たちで君の新しい弟です。ほらご挨拶を」
「三日月、じゃなくて未来 三日月、です」
「未来 一夏です、本日は宜しくお願いします、えっと姉さん?」
「ああ宜しく、私の名前はエミザーダ。好きに呼んでくれていいよ、あっでもお姉ちゃんって呼んでほしいかも!」

今日、この研究所に招かれたのは現行している次世代型となる第3世代ISの研究が大詰めになっており操縦者であった母の意見を聞きたいという物だった。現役引退と共にISからスッパリ手を引いた彼女だが我が子の頼みを断るわけもなく笑顔の二つ返事でOKした。

「お父さん、孤児院の方は如何です?仕送りなんか足りてます?足りていなければまだまだ出せますけど」
「十分ですよっというか寧ろ多すぎて使い道に困っている所ですよ……。貴方達は毎月どんだけ金を送り付けてくる気なんですか、ここだけで毎月40万の仕送りとか普通じゃないんですけど」
「えっアメリカのガイ兄達よりは自重してるよ、毎月300万とか送ってくる人達よりは」
「自重してる気持ちあるなら少しはガイを説得してください……」
「ごめんそれ無理」

久世の頭を悩ませているのは孤児院を旅たち世界を活躍の場としている子供達だ、誰もが優秀で素晴らしいが仕送りと称して毎月多額の金を送ってきている。誠意と感謝の気持ちが籠っているだけに受け取らない訳には行かず、そうすると今度は受け取ってもらえて嬉しく思ったのか日に日に増えていき今では300万も送り付けてくる始末だ。一応運営資金分は使いそれ以外は保管しているが……自分と同じく酷く頑固で一度親父たちに送った金は受け取らんと聞かずに困っている。

「はぁ……駄目だあのバカ息子の事考えたら頭痛くなってきた、忘れたいから早く案内して貰えます?」
「そりゃ良いけど……あの風来坊の尻拭いするみたいで嫌だなぁ…」

複雑そうな顔をするエミザーダに案内されて一同は研究所の第3世代型研究部門へと通される。そこには宛らロボットアニメに出てくる整備ドックのような空間、ISの腕部や脚部のパーツが納められつつも逐次データが取られており改良に改良が重ねられ続けている。一夏は瞳を輝かせて興味津々といった様子で周囲を見回すのに対してミカはふーんと僅かに湧き上がっている興味に流されるようにデーツをおやつのようにポリポリと食べつつパーツなどを見ている。

「どうお母さん!?」
「ふむ……それは如何にも腕部の装甲が大きすぎるわね、削れないの?」
「ああ~……あれは補助ブーストを兼任しているからあれ位ないと駄目なのよ」
「でもこれじゃ駄目、邪魔になりすぎて直線的な速度しか上がらない。本末転倒だ」
「あちゃ~……手厳しいけど参考になるから困るなぁ~」

サムスは早速エミザーダが今現在製作中のパーツを自ら装着して総評を開始した。既に退役している身といっても動かし方は身体に染みついているのでまったくもって無問題、それどころか現役の国家代表よりもよく動いている気がする。試験用のISで軽々と宙返りをしたりしている。

「……?」
「どうしたんだミカ?」
「こいつ」

少々飽きてきたのは適当に流し見をしていたミカだがある物を見た途端足を止めた、それを心配するように一夏が近寄る声をかけると目の前のものに目を奪われていた。人間の骨を全て鉄に置き換えたかのような骨組、頭部は鋭角で水平に伸びている二本の角は何処か悪魔のようにも見える。もう一つの方は背中に大きな翼を背負った天使にも見える。

「気になる?えっと三日月だっけ」
「うん、こいつは?」
「これが今うちで開発中の第3世代型ISよ、従来のISとは違って原点回帰したの。これは全身装甲(フルスキン)型で外付けに武器を付ける事で拡張領域を大幅に開けることに成功させつつ段違いの性能にする予定よ」
「名前は、あるんでしょ」
「うーん開発コードはあるんだけど個体名称はまだなのよね」

説明を受けて一夏はへっ~と言葉を漏らす、だがミカはそんな事聞いていなかった。名前がないと言っていたのにこのISは自らの名前を声高に叫んでいるように思えた、そして街灯に誘われる虫のように、それに引き寄せられるようにミカはゆっくりと近づいて行った。

「こいつ、バルバトス…」
「えっ?バルバ?」
「バルバトスって言うのか、お前…?」

問いかけるようにそっと呟きつつフレームだけのそれに触れると接続されている機器がアラート音を吐きだした。エミザーダは機器に飛びつくように画面を確認するとそこに表示されているのは起動完了という文字が浮かび上がっていた。

「ウ、嘘起動してる!?起動テストだってまだしてないしメインシステムだって不完全なのに!?って、ていうか三日月貴方男の子よね!!?」
「女に見える?」
「……お、お父さん……?」

顔の筋肉が引き攣らせながらガクガクと首を父である久世の方に向けるとそこには頭痛を覚えたのか妻に膝枕をされながら同じように引き攣った笑いを浮かべている久世がいた。

「……サムス、今日一緒に寝ましょう」
「ええ勿論」
「いやそれ所じゃ無いでしょなに夜の営みの予約してるのよ!?」

未来 三日月、男でありながら女しか稼働させられないISを起動させる。この後、一夏も恐る恐るISに触れた所同じように起動させてしまいこの事は徹底的に隠蔽された。が、後日世間を騒がせるニュースが飛び交った。

モンド・グロッソを征した織斑 千冬の弟である百春がISを起動させたという、それによって未来院の一同は頭を痛くした。 
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