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マイ「艦これ」(みほちん)

作者:白飛騨
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第9話(改2.5)<秘書艦(仮)>

 
前書き
ようやく着任した私は提督代理の艦娘から報告を受けた。彼女は手際が良かった。 

 

「提督が鎮守府に着任しました」

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マイ「艦これ」(みほちん)
:第9話(改2.5)<秘書艦(仮)>
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 改めて執務室内を見回した私は神棚を見つけた。

自分自身ボロボロの姿で神前に立つのは申し訳ないと思いつつも、その下で私は大きく拍手(かしわで)を打った。

祥高さんは恐らく司令部の人間たちが行う所作には慣れているのだろう。私の行動には表情を変えなかった。

だが山城さんは目を丸くしていた。
(彼女は、こういう経験がないのか?)

……帝国海軍の軍人としては、これが基本だと思うが。

それに、ここの神棚の(さかき)は元気なく枯れてホコリだらけ……頂けない。

私は振り返った。
「祥高さん、当面は君が秘書艦を担当してくれ。最初は執務室の整理だ。特に神棚の掃除は直ぐに頼む」

彼女は直立して敬礼をした。
「はい。至りませんでした!」

その反応の速さに私は苦笑した。さすが代理を務めるだけある。

状況が理解できない山城さんに私は言った。
「正式な任艦は上の指示を仰がないとダメだけどね。だが彼女が秘書艦で異論はないだろう?」

彼女は頷いた。

 そして新たな秘書艦(仮)となった祥高さんは敬礼をして宣言するように言った。
「提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります」

まるで何かのスイッチが入るようだ。

 艦娘は巫女っぽい服装の子も多い。だから神棚と艦娘というのは相性が良いかも知れない。
(それも何か意味があるのかな)

 祥高さんは脇の二人の艦娘に指示を出した。
「山城さんと寛代ちゃんの報告は後から聞きます。二人は、いったん下がって下さい」

「わかりましたぁ」
山城さんは気だるそうに敬礼するとヨロヨロと歩き始めた。

(彼女はたった一人の戦艦として、この鎮守府の守りを固めている。その重圧は大変だろう)
山城さんが退室する際に会釈をしたので私も軽く返した。その時フッと彼女さんの表情が緩んだ。

一瞬、鳥肌が立つと同時にホッとした。
(彼女にも人間らしい感情があるのだ)

山城さんが退出した執務室は、ちょっと気が抜けた。

「さて」
ふと見ると……。

「あれ?」
「……」
まだ無言で立ち尽くす駆逐艦『寛代』が残っていた。
なぜか動かない。

「寛代ちゃんも、聞こえた?」
祥高さんが重ねて聞いて、やっと駆逐艦娘は顔を上げた。

「……」
少しボーっとしていたが、のそのそ退室して行く。

 二人の艦娘が退室して、ようやく落ち着いた。私は腕を軽く回しながら言った。
「美保は独特なのかな? やっぱり」

祥高さんは頷いた。
「そうですね。他の鎮守府に比べて歴史も浅いですし」

 そのとき廊下の方が急に騒がしくなり「キャッキャッ」という女子の笑い声が響く。

祥高さんは微笑む。
「艦娘たちが外で待ち構えていたようですね」
「そうだな」

 艦娘は普通の人間では無いがロボットでも無い。一種、独特な雰囲気を持っている。あの山城さんや寛代だって、そうだ。

ところが、この秘書艦たる祥高さんは、それともまた違うようだ。

彼女は普通の艦娘には無い何というか、人間に近いものがある。

「司令、お着替えは?」
その問いかけで私は現実に戻った。

「いや、まだいい」
上着を脱いだ私は司令の席に近寄りながら言った。

「それより先ほどの戦闘の状況と戦果の報告を頼む」
「承知しました」
軽く敬礼した祥高さんは自分の机に積み上げたメモや資料を整理する。

「済みません、少々お時間を頂けますか?」
「あぁ構わないよ。私も準備しよう」
ヨイショッと私は司令の椅子に座った。

そこで思わず叫ぶ。
「あ痛っ!」

腰回りから足首に掛けて激痛が走った。
「打撲……か」

だが秘書艦は動じない。提督代理を務めたから肝が据わっているのだろう。資料を整理しながら言った。
「先ほどの戦闘ですか?」

まさに秘書艦の(かがみ)だ。
その雰囲気は海軍省の中央司令部の役人どもに感じが似ていた。

私は改めて自分の体のダメージに気付いた。
「草むらで逃げ回った時に、あちこち打ったようだな」

腰をさすりつつ私は聞く。
「あの寛代は何ともなかったのか……艦娘だから当然だが」

その問いに祥高さんは微笑んだ。
「そうですね。あの子は通信に特化しているので……さほど最前線には出ませんが身のこなしは柔軟です」

「なるほど」
納得した私は腕を組んだ。

「通信に特化か……何となく、そんな雰囲気はあるな」

微笑んだ秘書艦は続ける。
「あの子は通信を中継する任務が多いから……出撃回数自体は他の艦娘より多いですし、いざとなったら高速で前線から離脱するので意外と鍛えられているのかも知れません」

「ああ、そうなるのか」
確かに、あの子はそういうタイプだろう。

早々に書類をまとめた祥高さんは言った。
「では、よろしいでしょうか?」

「ああ」
私はノートとペンを取り出してメモの準備をした。
聞くだけでは、なかなか頭に入らないから。

 立ち上がった彼女は執務室に有る黒板を併用しながら説明を始める。

1)今朝07:40頃、山陰海岸は由良沖の日本海に突然、深海棲艦の軽空母と航空機が出現した。

2)敵は由良と境港にある2箇所の陸軍の砲台を電撃的にピンポイント攻撃した。

3)遅れて上がってきた美保空軍基地の迎撃機もまた一瞬で、すべてが撃墜された。

4)当、美保鎮守府も多少、敵の攻撃を受けた。

しかし山城さんを始め演習航海中であったため艦娘への被害は、ほとんどなし。また残っていた艦娘たちも全員が避難していた。

 そこまで聞いて私は改めて悟った。
「なるほど避難さえスムーズに行えば有事の際に艦娘っていうのは便利なものだな」

何処の鎮守府でも艦娘の退避は早い。

 ところが彼女は、あまり浮かない顔をしていた。
「そうですね」

少し気になったが私は敢えて何も言わず続きを促した。

5)ちょうど海上では演習から帰還中の山城さんが島根半島の先端にある美保関(みほのせき)に差し掛かったところだった。
だが美保空港付近までの距離は遠く、そこからの射程はギリギリだ。

6)山城さん自身の疲労もあったが緊急を要するため祥高さんが指令。
美保関沖から美保空軍基地付近の敵機に対して遠距離砲撃を開始した。

「山城さんが海上に居たのが幸い……と言えるのか微妙ですが」
祥高さんは言い訳のように言葉を付け加えて続ける。

7)空港近くにいた駆逐艦『寛代』からの観測通信を受けて弾着観測射撃を実施。数発、着弾がそれたが速やかに弓ヶ浜地区を襲っていた敵機を制圧した。

「なるほど。まさか海上から攻撃を受けるとは敵も想定外だったか」
「はい」
私の言葉に彼女は頷く。

8)同時に美保関港に待機していた電や島風など駆逐艦と併せ、海上の軽空母も合流して短時間で敵を挟み撃ちする形で制圧した。

「以上です」
「ふむ、なかなかの戦果だ。鎮守府としても最大限の威力を発揮して制圧出来たわけだ」

「有難う御座います」
そこで彼女は資料を閉じる。

私は言った。
「その電撃作戦のお陰で、こちらは命拾い……」

そこまで言って私は苦笑した。
(まあ場合によっては死にかけたのかも知れないが)

それでも敵の攻撃を押さえ込んだのは確かだ。

多少、現地で私が攻撃に巻き込まれたとしても、それは仕方がないと思った。


以下魔除け
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禁止私自轉載、加工 天安門事件
Prohibida la reproduccion no autorizada.

 
 

 
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府」の略称です。  
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