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永遠の数字十五

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第五章

「日本一になるわよ」
「まあ頑張ってね」
「というか今年優勝は阪神だけれどね」
「クライマックスで待ってるわよ」
「皆お兄ちゃんと一緒のこと言うわね、けれど願掛けも験担ぎもしたから」
 だからだというのだ。
「今年もいけるわ、阪神」
「だといいけれどね」
「応援はしてあげるわ」
「え、クライマックスで待ってるわよ」
「絶対によ」
 千佳は強い声で言った、そのうえで三学期最初の一日を過ごした。そのうえで家に帰ってからは宿題をしてから友人の家に遊びに行ったが。
 遊びから帰ると寿も帰ってきていた、するとリビングで新聞を読んでいた。千佳はその兄にまずはこう聞いた。
「部活も出て、よね」
「ああ、気持ちよく運動もしてな」
「それでリラックスしてよね」
「今は戦略を考えているんだ」
 寿は妹に熱心な声で答えた。
「阪神のな」
「またデイリー読んでるのね」
「ああ、そうだよ」
 見れば本当にデイリーを読んでいる。
「いつも通りな」
「毎日読むわね」
「悪いか?」
「いや、お兄ちゃんがデイリー読まなかったわ怖いわ」
 かえってとだ、千佳は兄の向かい側の席に座ってから言った。その前にホットミルクティーを自分で作って飲みはじめている。
「そうじゃない日があったら」
「月刊タイガースもだよな」
「そうよ、週刊ベースボールも読んでるでしょ」
「当然だ」
 見れば寿はダイアモンドを描いた紙に選手達の名前をそれぞれのポジションの場所に書いている、投手陣についてもだ。
「阪神の戦略を考えるのは僕の義務だ」
「義務なのね」
「ファンとしてのな」
「そこまで言うのね」
「そう御前はどうなんだ?」
 ここでだ、兄は自分の向かい側で紅茶を飲んでいる妹に問うた。
「そう言う御前も週刊ベースボール読んでるだろ」
「カープのことなら何でもよ」
「調べてるよな」
「それでどうすべきか考えてるけれど」
「まだ小学生でもだな」
「こういうのは小学生関係ないでしょ」
 千佳は強い声で言い切った。
「カープのことを想うのなら」
「その通りだな」
「今年も優勝しないと」
「それは僕もだ、こうしてデイリーを読んでな」
「若手の人もチェックしてなのね」
「今年、そして未来の阪神も考えているんだ」
「それで何かいい答え出たの?」
「一塁だ」
 そのポジションだとだ、寿は言った。
「誰が守るかだ」
「李さん獲得するって?」
「どうだろうな」
「ゴメスさんはどうなるの?」
「退団だな」
 そうなるとだ、寿は暗い顔で答えた。
「だから李さんかはたまた別の助っ人か若しくは若手か」
「若手いい人いる?ファースト」
「今探しているんだ」
 必死の顔での言葉だった。
「誰がいいか」
「難しい問題ね」
「そう言う御前はどうなんだ」
 寿はまた千佳に問うた。
「黒田さんの代わりいるか?」
「あんな凄い人の代わりなんてね」 
 それこそとだ、千佳も難しい顔で返した。
「今私も探してるのよ」
「そっちも大変だな」
「チェックしてるけれど」
「十五番の後の人はか」
「若手で誰か出たらいいけれど」
「そっちも大変だな」
「そうね、何か珍しく弱気になってるけれど」
 千佳は紅茶を飲みつつ言った。
「十五番はやっぱり偉大だったわ」
「それは事実だな」
「そっちのファースト以上かもね」
「そうかもな、しかしそれでも阪神は優勝だ」
「その言葉そっくり返しておくから」
 何だかんだでこのやり取りは変わらない、千佳も自分の部屋に戻るとカープのことを調べつつ彼等の今シーズンの戦略を考えた、そして十五番の抜けた穴をどうするかも熱心に考えていた。だがその答えは今は出なかった。


永遠の数字十五   完


                        2017・1・27 
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