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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第十章 仮想世界
  第10話 騒がしい朝

朝ご飯を食べ終えて、五河家の皆はそれぞれ学校へ出かける準備を始めた。




士道「上条、今日って数学のプリント提出日だったよな?」

上条「…………え?」

士道「最後の問題だけ全然分からなかったから後で見せt……って、お前、まさか」

上条「……よし、学校に行く準備はオッケーっと」

士道「あからさまにプリントを机の上に置いてんじゃねぇ!!しかも真っ白じゃねぇか!!!」





琴里「……ねぇ涙子。香水変えた?」

佐天「お、そこに気がつくとは流石ラタトスク総司令官様だね!この前セールしてたから買ったんだ」

琴里「その言い方はムカつくけど、いい香りね」

佐天「あ、琴里もつけます?士道さんをおとせるかもよ?」

琴里「ばっ……かじゃないの!?何でここで士道が出てくるのよ!?関係ないでしょ!それに私たちは兄妹だから……!」

佐天「でも義理なんでしょ?」

琴里「ああもう!!」





一方「……うるせェ連中だな。朝くらい静かにしろよ」

或守「……朝は静かなのが普通なのでしょうか」

一方「ンなの人の好みだろ」

或守「好み……それは愛と関係があr―――」

一方「ねェに決まってるだろォが」






……そんなこんなで五河家の朝は穏やかに(?)過ぎていった。



――――
―――
――




一方通行以外の五人は留守番を彼に任せて家を出た。

扉の先にはいつもの面々が揃っていた。

十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦。騒がしい二人とおしとやかの二人というバランスのとれた(?)メンバーである。

十香「おはようなのだ!」

士道「十香おはよう。四糸乃も耶倶矢も夕弦も」

士道が十香の挨拶に手を上げて答えた。その元気な声に少し安心する。

なんせこの世界に来て『一日目』なのだ。いつもと変わらない生活が送れるとはいえ不安は少なからずあっただろう。十香の笑顔はそんな士道の心配をすっ飛ばしてくれた。

上条「四糸乃も学校に行くのか?」

と、上条が四糸乃に問いかける。確かにそうだ。いつもは一方通行と一緒に家でくつろいでいるのに今日は十香達と一緒にいるはずなのに……

その質問に、四糸乃の右手にいるよしのんが得意げに答えた。

よしのん『四糸乃はね、先生になったんだよ!』

佐天「先生ですか!?」

士道「そっか。四糸乃はそういう設定なのか」

よしのん『そう!士道君をびしばし教えるから覚悟してね―!』

士道「教えるなら上条の方が……」

上条「上条さんは四糸乃の教えがなくても大丈夫ですよ?」

士道「どの口がいってんだか……」

と士道は朝のやりとりを思い出しながらつぶやいた。

耶倶矢「ほう、世界の創始者とあろう御方が我らの領域に踏み入れるとは……我の暗黒眼(ダークアイ)が貴様を捉えるぞ……?」

夕弦「要約。どうしてあなたが学校に行くのですか?」

耶倶矢は……いつも通りとして、夕弦は或守が一緒にいることに驚きを隠せないようだ。

琴里「愛を知るために、士道近くで観察するためによね。士道のクラスに転校してくるんでしょ?私と涙子も飛び級で士道の学校の三組に転校するし」

或守「はい。勝手だとは分かってはいますが……」

上条「(それ言い出したら俺たちを仮想世界に閉じ込めた時点で勝手だよな……)」

思わずツッコミそうになったが、何とか押しとどまった。変な顔になってしまったが。

夕弦「……不安。何をしているのですか?」

上条「……喜怒哀楽がわかりにくい女の子が割と大真面目に上条さんのことを心配してるのやめてくれます!?俺が変人みたいになるだろッ!?」

それを、しっかりと夕弦に見られていたが。結構がっつり心配されたが。

しばらくして狂三、美九、折紙とも合流した。

士道達は琴里や佐天と高校に向かうことに違和感を覚えながらも自分の学校へと向かった。


――――
―――
――



或守や狂三が士道達と一緒のクラスになったこともあり、一組の机の数が少々増えていたが他は何も変わらない、いつものクラスだった。

友達と楽しく会話する者、読書をする者、勉強をする者、士道の隣を誰が一緒に歩くかで争う者……うん、いつも通りだ。

士道「……いや、最後はおかしいだろ」

上条「いやいや、上条さんが見る限り普通ですよ?」

士道「……じゃあもう一つ付け加えとく。上条の不幸を笑う者。上条が女の子にフラグを建てる事」

上条「……俺笑われてるのか!?それに上条さんは女の子にフラグを建てるとかいう主人公ポジションじゃありませんからね!?そもそも一つじゃないッッ!!!」

士道「この鈍感め……」

お前だけには言われたくない、とクラスの誰かが呟いた気がするが、多分気のせいだろう。うん、そうに違いない。

士道と上条はため息をしつつ自分の机の上に鞄を置いた。登校しただけなのにやけに疲れるな……と思いながら鞄の中から筆記用具、教科書、ノートを取り出す。士道は今日苦手な数学があることに嫌気が刺しつつもそれを机の中にしまった。

上条「あっ……」

折紙「……どうしたの?」

十香との激しい討論(恒例行事)を終えた折紙が士道のところに向かう途中で上条に話しかけてきた。上条は折紙が士道以外で心を許している数少ない人物だ。

最近では学校内でも精霊のこと関係なしに会話するようになっていた。

上条「筆箱、忘れた……不幸だ……」

だから。

折紙「……あなたの不注意が原因」

上条「……返す言葉もございません」

上条の異常なまでの不幸も知っていた。

折紙は一旦自分の席に戻り、筆箱の中からシャープペンシルと消しゴムを取り出して上条の机の上に静かに置いた。

上条「……サンキュー」

折紙「……例を言われることでもない」

と静かに言い残して折紙は士道のところへ向かった。

上条「(変わったよな、あいつも……)」

恐らく数ヶ月前の折紙ならこんなことはしなかっただろう。いや、そもそも話しかけてすらくれなかっただろう。

そんな事を思いながら見る視線の先では十香VS折紙の討論第二開戦が始まっていた。

上条「(いや、あんま変わってないか……)」




――――
―――
――


四糸乃「……み、皆さーん。し、静かにしてください。……て、転校生を紹介しますよー」

どうやらこの世界では四糸乃がこのクラスの担任の先生のようだ。 タマちゃん先生、ドンマイ。

士道は心の中で先生に励ましの言葉を送りながら、転校生の姿を見た。

もちろん或守だ。クラスの皆はその女の子の姿を見るなりかなりざわついているが、上条や士道は特に驚きはしない。転校してくる事は知ってた上に一緒に登校してきたしな。

或守が軽く自己紹介を終えたところで質問タイムに入った。そしてこの男が立ち上がる。

殿町「はいはーい!或守さんはどこから来たんですか?」

殿町だ。仮想世界でもこんなテンションなのだから再現度は本当に凄いと思う。

或守は殿町の言葉に静かに答えた。

或守「はい。それは士道の家からです」

刹那、クラスの空気が凍り付いた。



あっ、マズい。



士道は本能的にそう思った。

何秒くらい経ってからだろうか。そんな凍り付いた空気を壊したのは一人の男の怒号だった。

殿町「……い~つ~か~ぁ?これはどういうことだ?説明しろぉ!!」

士道「待て、落ち着け。話せば分かる」

クラス中の視線が士道に降り注ぐ。そして殿町が騒ぎ出したことを引き金にありもしない噂話が次々と飛び出す。

「ちっ……また五河かよ……」

「なんか弱み握られてるんじゃないの……?」

「だとしたら五河君の周りの女の子全員そうかも……」

「こ、これは十香ちゃんに新たなライバル登場の予感ッ!?」

「転校生をいきなり口説くとか……」

「まじ引くわー」

「やっぱ五河君より上条君よ!」

「だよね……!あの黄昏れている感じがキュンってなるっていうか……!」

「士道の嫁は私。誰にも渡さない」

「む!?どうして貴様が士道の嫁なのだ!?士道の嫁はこの私なのだ!!」

「士道は浮気性だからな」



……どうしてこうなった?



あと上条、浮気性とはなんだ浮気性とは。俺は別に浮気なんか……そもそも誰とも付き合ってないしな。

上条「(お前、この半年で何人の女の子とキスしたか思い出してみろ)」

士道「(……やめろ。やめてくれ。いや、マジで。そして助けてくれ!)」

と心の中で会話しながら上条に助け船を求めた。

上条はため息をつきつつも少し大きめの声で。

上条「なんでも士道と或守の両親が知り合いで、仕事の関係でこっちに来たんだけど急なことで住む家が決まっていないから、住む家が決まるまで士道の家で泊めてもらってるんだとさ」

言って、上条がこちらを向く。



――これでいいか?

――あぁ、ばっちりだ!



アイコンタクトで二人は短い会話を済ませると士道は事態を終結させるために皆に説明する。

士道「そ、そうなんだ。そういう事情があって……」

と言っても上条の言葉に賛同したカタチになってしまったが。

殿町「あ、或守さん、それは本当なのか?」

或守に話を振られて、皆或守の方を向く。

或守は「ふむ……」と少し考えた後に、いたずらっ子の様な悪い笑みを浮かべた。

或守「はい。当麻や士道の言うとおりです。急なことでしたので五河家には無理を言って居候させてもらってます。私の説明不足で皆さんの混乱を招いてしまい申し訳ありませんでした」

と軽くお辞儀をして謝る姿勢をとった。何故かこちらが申し訳なくなってしまうではないか。

クラスの皆は「そういうことか……」と納得した様子で席についた。

何とか、変な噂を立てずに済んだ、と士道は安堵し、一息ついた。

と、或守が数秒のお辞儀の後に顔を上げてこちらに口パクで何かを言ってきた。

えっと……なになに?



――貸し、一つですよ?



何故だろう。事態は終結したはずなのに悪寒が走った。

そのまま或守は四糸乃先生の指示に従って空いている後ろの席に着いた。













十香「む!?そうだったのか!?知らなかったぞ!」

あの……十香さん?空気を読むって言葉知ってます?



 
 

 
後書き
ちなみにあいまいみーの三人もちゃっかり登場しています 
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