| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第77話:第一発見者は、重要な容疑者

(グランバニア城)
ウルフSIDE

午後3時になりソロが俺を迎えに来たので、部下達に目で合図を送り休憩をしに席を立つ。
執務室から出て中庭に向かっているとレクルトが近付いてきた。
「何あの店!? 物凄く高いんですけど!!」

「何お前……本当に昨日、同伴したの?」
「するに決まってるだろ……あんなに可愛く迫られたら!」
そんなモンかねぇ?

「じゃぁ今後は行かなきゃ良いじゃん」
「そんな訳いかないだろ! サビーネちゃんは城で働く宮廷画家エウカリスなんだし、頻繁に会う事になるんだから、無視なんか出来ないよ!」

「そうかな? 俺は無視出来るけど……」
「そりゃウルフ君みたいに心臓に毛が生えた図々しい奴は無視出来るだろうけど、僕は小心者なんだから無視なんて出来ないよ!」
酷い言われようだな。

「じゃぁ考え方を変えろよ。いっその事エウカリスを落とすくらいの気持ちでキャバに通ってさ、店が終わったらホテルに誘い込むような感じの「馬鹿なの君!?」
うぉっと……最後まで喋らせてもらえなかった。

「ホテルに連れ込めるようになるまで、あんな高級キャバに通ったら破産しちゃうよ!」
「知らねーよ、そこはキャバ嬢との駆け引きだろ。“店に来てほしかったら俺の誘いに乗れ”的なさ! 職場で顔を合わす機会が多いのなら、一層この戦法が有効だと思うけどね」

「ば~か、ば~かぁ! そんな駆け引きが出来るくらいなら僕はもう出世してるよ! そんな器用な事が出来ないから、僕は今の地位にいるんだろ!」
一体幾ら支払ったんだ? こんなに興奮して文句を言うなんて……

「ちょっと落ち着け……ん?」
レクルトを落ち着かせようとしてたが、視線の先でリュカさんが俺を手招きするのが見えた。
その事に気付いたレクルトも俺の視線の先に注意を向ける。

「悪ぃレクルト。また今度相談に乗ってやるから、今は我慢しろ」
そう言ってリュカさんの方へと近付く。レクルトも陛下からの用件じゃ引き下がらずを得ない。大人しく俺に道を譲った。

「如何しましたリュカさん?」
「僕、ナイスタイミングだったろ?」
「ええ、完璧でした(笑)」
「じゃぁこの後、出掛けても良いよね?」

そう言って笑いかけると懐からラーの鏡をちらつかせる。
なるほど……やっとラインハットに鏡を返却するんだな。
まぁタイミングとしては妥当な所か。マオがグランバニアを去った直後じゃ、アイツが犯人だったとばれる可能性も高いし……

「分かりました……俺はポピーさんからの通信を待ちます」
「宜しく……アイツは100%お前から情報を得ようとするから」
リュカさんは俺に目で合図して、そのまま中庭へと歩いて行った。

俺は一旦執務室に戻り、休憩明けもオフィスに戻らず別の場所で仕事してると、スタッフ等に告げに行く。
仕事と言っても誰にも聞かれない場所で、ポピーさんの通信を受ける準備をするだけだけどね。

ウルフSIDE END



(ラインハット城)
ヘンリーSIDE

執務室で事務処理を行ってると、デールの部下から謁見の間に呼び出された。
『グランバニア国王陛下がお見えになりました。至急謁見の間へとおいで下さい』との事。
珍しい事もあるモンだ……

アイツがラインハットに来ても、まるで自分家の如く勝手に歩き回って目当ての人物を探し出すのに、わざわざデールへと先に会って俺を呼び付けるとは……
公式な訪問か?

「おーヘンリーお久ぁ! 遊びに来たよ☆」
あ、遊びにって……全然公式感が感じられない。
本当に何しに来たんだ?

「お前……何しに来たんだ?」
「あれぇ? ヘンリーってば重度の健忘症? 今言ったよね……『遊びに来たよ』って」
い、言ったけど……

「言ったけどお前だって暇じゃないだろ! 近日中にはホザックから大使が訪れるって話だろ? それなのに国王が他所の国に遊びに来てて良いのか?」
「良いに決まってんじゃん。大使だって未だ来てないし、お出迎えの準備は部下達が進めてるし、王様は暇を持て余してるんだよ。だから友達の家に遊びに来たって良いんだよ」

「えぇ……ヘンリー様に会いに来ただけですかぁ?」
「ううん。それは立前だけぇ☆ 本当はマリソルに逢いに来たのぉ♥ でもマリソルはヘンリーの秘書をしてるでしょぉ……だから如何でも良かったんだけど、ヘンリーも呼び出したのぉ!」

「如何でも良いとは何だコラ!」
「相変わらずねぇお父さん(笑) ウルフを宰相に据えて、更に仕事が楽になったのかしら?」
後ろから声が聞こえ振り返ると、そこにはコリンズとポピーが寄り添って現れた。

「そういう事さ。だから可愛い娘にも会いに来たって事」
そう言って優雅な動作でポピーに近付くと、愛おしそうに抱き締める。
だが突然一歩引いてポピーとコリンズを見詰めだした。

「ど、如何したリュカ?」
「ポピーにも子供が授かったんだね!」
ポピーのお腹に視線を移し、嬉しそうに娘の妊娠を語り出した。

「え、本当お父さん……私、妊娠してるの!?」
「本当ですかリュカ陛下……俺もとうとう父親になれるんですか!?」
凄いサプライズだ……だが何で母親よりも先に妊娠に気づけるんだ?

「お前が父親だとは限らないだろコリンズ(笑)」
「ちょっと目出度い事なんだから変な冗談は止めてよお父さん。私はお父さん以外とは浮気しないわよ(ニヤリ)」
「じゃぁ俺の子じゃなくリュカ陛下の子かもしれないのかい?」

「大丈夫だコリンズ……娘には手を出してないから」
コリンズも言うようになったが、それでもリュカを慌てさせるには及ばないか……
それにしても目出度い事だ。

「大きな吉事である事だし、僕からプレゼントを進呈しよう」
夫婦で嬉しそうに新たな命が居る場所を擦り逢ってるのを、やはり嬉しそうに眺めてたリュカが思い出したかのように懐から風呂敷に包まれた何かを取り出した。

「はいコレ。お祖父ちゃんになるヘンリーにあげるね」
そう言って手渡された風呂敷包みを開けると、中にはラーの鏡が入っていた!?
「お、お前……これ如何したんだ!?」
コレは3年以上前に突然居なくなったメイドに盗まれた我が国の宝だ!

「拾った」
「ひ、拾ったって……お前ふざけるなよ! コレはメイドとして我が国に潜入してた泥棒に盗まれた代物だぞ! お前の国にも現れたのか? 其奴を撃退して取り返したのか!?」

「だから拾ったんだって……外のお堀の壁に引っかかってたんだよ。僕も先刻(さっき)見つけたばっかり。よく探しなよぉ……無くし物なんて意外と近場にあるんだからさぁ」
「無くしたんじゃねーよ! 盗まれたんだよ!!」

「酷いなぁ……無くした物を盗まれたと言い張って、罪無き人々を断罪するつもりだったんだね?」
「人聞きの悪い事言ってんじゃねーよ! あのメイドは如何なった? 捕まえたのか? 我が国は多大な被害に見舞われたんだ……引き渡しを要求する!」

「それは拾った物だ。盗んだメイドなんて存在しない。存在しない者を引き渡す事は出来ない! 従ってこの話はココまで! さぁ解散、解散……おっと、そこの彼女ぉ~今暇ぁ? 僕とデートしよ」
「暇、暇ぁ♥」

リュカは拾ったと言い張りこの話を強引に打ち切った。
そして俺の秘書を連れて何処かへと逃げてしまう……暇ではなく、まだ仕事が残っているのに。
相変わらず逃げ足が速い。



「如何思うデール?」
あっという間にリュカが居なくなり、暫くの間沈黙が我々を包み込んでたが、それを打ち払うようにデールへと問いかける。

「リュカさんの言う堀の壁に引っかかってたってのは無理があると思います……ですが嘘を吐くならもっと信憑性の高い嘘の方が良いのに、何であからさまな嘘を言うのかが気になりますね」
「確かに……ポピーは何か聞いてないのか?」

「お義父様……私はもうグランバニアの人間ではないのですよ。そう簡単に内情を知る事は出来ません……ただデール様の仰る通り、嘘を吐くのならもっと上手い嘘を言えたはずだと思います」
「そうだな……何だってあんな嘘を?」

「これは私の推測ですが……あからさまな嘘を真実だとラインハットに言わせたかったのではないですか?」
「? 何だそれは……如何いう意味だポピー?」

「つまり、先程のグランバニア国王の発言は国としての正式発表であり、この世界にメイドとして潜入する泥棒は存在しないと言ってると思います」
「な、何を言うか!? 泥棒は存在するし、我が国はその被害に遭ってるんだ」

「そうです。ですがグランバニアは例の泥棒を引き渡す事が出来ないのだと思います。事情は解りませんが引き渡しが出来ないけど、ラーの鏡を取り返した為それだけでも返却したんだと思います」
「引き渡しが出来ないのに、何でワザワザ盗まれた物を返してきたんでしょうか?」

「はいデール様……それは未来の事を考えてだと思います。グランバニアにラインハットの盗まれた国宝がある事が後々知れ渡ってしまったら、両国の関係性に亀裂が生じる可能性があります。それを避ける為、ラーの鏡は返却する必要があった……でも入手方法を明かして、盗人の引き渡しを要求されてはグランバニアに都合が悪い。だからバレバレの嘘を言い、その嘘に乗って貰うように仕向けたんだと思います」

「そうなると気になるな……あのメイドは如何なったのかが」
「そうですね兄さん……ラーの鏡を取り返したと言う事は、グランバニアは被害に遭わず泥棒を捕まえたと見て良いと思います」

「なのに引き渡しには応じない……って事はリュカがメイド(泥棒)に手を出して情が湧いたって事かなぁ?」
「お義父様、私の父を馬鹿にしすぎです。確かにあの人は極度のフェミニストですけど、我が国との関係を拗れさせる事はしないでしょう」

「“フェミニスト”って言葉を飾ってるが、アイツはだたのスケベ野郎だ」
「その事を否定はしませんが、私の言ってる事は間違ってますか?」
……間違ってはいない。流石のリュカも、女関係で国家間トラブルを発生させる事はないだろう。

「では犯罪者の引き渡しに応じれない理由って何だ?」
「う~ん……流石に私にも解らないわ。ウルフに聞いてみましょう!」
俺の問いに首を傾げるポピーは、直ぐにMH(マジックフォン)を取り出してグランバニアから情報を得ようと動き出す。

「あ、グランバニアの宰相に連絡するのなら、何処か別の部屋でお願いします。それと兄さんも通信には参加しないで下さいね……2人の国王が揃って他国の内情を聞き出そうとしてるなんて噂を立てられたくないですから」

「そ、そうだな……通信はポピーだけに任せて、俺は内容を聞くだけにしてよう」
面倒な事だが、国王自ら他国の者に話を聞いたのでは、良からぬ噂が立ってしまうかもしれない。
ここはポピーに任せて、俺はMH(マジックフォン)に映らない場所で見守る方が良かろう。

ヘンリーSIDE END



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧