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作られた善行

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第二章

「この連中はな」
「絵に描いたみたいにか」
「チンピラだよ」
 一家全員そうだというのだ。
「生き方の悪いな」
「俺もそう思うけれどな」
 正樹は優樹にこう返した、だが。 
 テレビでのその長男と一家に対する説明を聞いてだ、彼にこうも言った。
「テレビでは全然違うこと言うな」
「俺達が感じたのとな」
「一家でまとまってる、仲がいい、柄は悪いけれど根はまっすぐ」
「一家で兄弟三人世界チャンピオンを目指してる」
「今時珍しい立派な一家だってな」
「それは嘘に決まってるだろ」 
 優樹は極めて忌々しげに弟に返した。
「それこそな」
「やっぱりそうか」
「そうだよ、こいつ等どう見てもな」
 テレビに映る長男のその嫌な険しさ、チンピラ独特の生き方をしてきた輩のみが備えられるその目を見て言った。
「ならず者だよ」
「テレビがやけに持ち上げてるだけか」
「どうせその為にだろ」
「これだけ素晴らしい素晴らしいって言ってるのか」
「そのボクシングもな」
 まさにというのだ。
「碌なものじゃないな」
「そうに決まってるか」
「ああ、こんな連中持ち上げたらな」
 それこそともだ、優樹は正樹に話した。
「害にしかならない」
「本当にそうだな」
「こんな奴等持て囃したらな」
 優樹はこうも言った。
「テレビで観た子供の教育にも悪いぞ」
「それもそうか」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「こんな連中テレビに出すなよ」
「本当にそうだな」
「出したらそれだけで観る方も不快になってな」
「子供の教育にも悪い」
「チンピラはテレビに出すな」
 持て囃す形でというのだ。
「自称番長のあの馬鹿と一緒にな」
「ああ、あいつもそうだな」
「あいつもプロ野球選手じゃないだろ」
「変に格闘家ぶってるな」
「馬鹿か、野球選手が格闘家の筋肉つけてトレーニングして何になるんだ」
 優樹はサイダーのコップの中の氷を口の中に入れて噛み砕きながら忌々しげに言った。
「怪我とか多くなるだけだ」
「それもその通りだな」
「あいつもテレビで持て囃されてるがな」
「子供の教育に悪いのにな」
「この一家もあいつもだよ」
 両方共、というのだ。
「こんな大人になったら駄目だtってな」
「教えるべきだな」
「それを持て囃すな」
「無理に善行に仕立ててな」
「そんなことするから世の中悪くなるんだろ」
 優樹は機嫌をどんどん悪くさせていた、正樹以上に。
「本当にな」
「兄貴本当に怒ってるな」
「俺はこういう奴等が大嫌いなんだよ」
「俺も嫌いだけれどな」
「全く、こんな馬鹿共テレビに出すどころかな」
 それでは済まさせずにというのだ。
「ボクシングもさせるな」
「あいつも球界から追い出せってか」
「そうだよ、どっちもだよ」
 それこそというのだ。
「スポーツをする資格ないだろ」
「まあこの連中がどういう試合するかだな」
「チンピラだぞ、まともな試合する筈ないだろ」
 優樹はさらに忌々しげに言った、サイダーをもう一杯自分で入れながら。 
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