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ガンダムビルドファイターズ ~orbit~

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未来へのミチシルベ 前編

「やることねーなー」

「そうねー」

休み明けの教室。今は昼休みだが、ヒメラギとアマネが俺を見ながら言ってきた。

「うるせぇよ。いいから飯食ってろよ」

なんなのコイツら?昨日まで気にすんなとか許すとか言ってたよな?確かに俺がわりぃからなんも言えねぇんだけど、これはねぇだろ。

「んなことより、本当にお前達も来るのかよ? 」

話題を切り替えるために、昨日アマネから言われた事を言い出す。

「あたりめーだろ」

「もちろんよ。レイナさんに言われたのは私だし」

「ワタシもいく……」

ちなみに、アキザワとサクラも行く的な事を行っていた。

昨日言われた事…………それは、アマネが介抱されている時にレイナから言われたそうだ。


『詳しい事は私も分かりませんが、もし知りたいというのなら、レイ君と一緒にもう一度来てください。その時に、あることを教えます。もちろん、レイ君の同意の上で』


と、レイナは言ったらしい。ちなみに、昨日孤児院に帰った俺は、子供達の弾丸の如しの突進をもらい、レイナからはビンタを一発いただいた。どっちもかなり痛かった。

「レイナにその事を聞いてもなんも答えてくんねぇし、なんなんだよ…………」

紙パックのジュースを飲みきり、残りの弁当を食べ終える。





ーーー--





「今頃機体を改修したり、話し合いをして次に備えてる頃だね」

「同意だ。これでは無駄な時間を過ごすだけだ」

放課後部室に行くと、アキザワとサクラにも言われた。………………なんかもういいか。諦めよう。

「あれ?今日明日は休みにしたってムウさんから聞いたけど、なんで皆いるの? 」

部室の扉が開かれると、ハルカゼの奴も増えた。何も言わないだけで、コイツらよりはマシか。

「…………そういや、なんで普通に部室に集まってんだ? 」

「確かになー」

「職業病ってやつなのかしら? 」

「校門辺りで集まればよかったね」

「ウン……」

「体が勝手に覚えているのであろうな」

「アハハハハ。なるほどね~………………ん?校門辺りで集まればよかったって、どっかに行く予定あったの? 」

「ああ。俺の孤児院だ。なんか全員でレイナから話を聞くことになってんだよ」

「そうなの?ちなみにどんな話? 」

「知らねぇよ。聞いてもなんも答えてくんねぇし。アマネ、お前なんか知ってるか? 」

「多分アンタ絡みの話じゃないの?話の流れ的にそう感じたわ」

「…………そうか。んで、ハルカゼはそれを聞いてどうすんだよ?てかなんでお前も部室に来てんだ? 」

「あー、ちょっと野暮用でね」

そう言うと、ハルカゼは外へと出ていった。

「孤児院に行くんでしょ?なんなら送っていくよ? 」

「…………お前運転出来んのか? 」

大会前の練習試合の時、車酔いで死にかけてたハルカゼの事を思い出す。

「運転は別らしいから大丈夫だよ。それで、どうする?乗る? 」

ハルカゼに再び聞かれ、俺達は顔を合わせる。

「じゃあ乗る」

楽が出来るならそれにこしたことはないと判断し、ハルカゼに送ってもらうことになった。

だが、ここで一つ問題が発生した。

ハルカゼの車は、多くて五人。頑張って詰めれば六人までしか乗れないのであった。

「…………セシリアさんを誰かの膝の上に乗せれば行けるね」

と、頷きながら言ってきた。それって、バレたら捕まるんじゃねぇのか?

「んじゃ、俺は窓際に座るなー」

「では、セシリアちゃんは私の膝の上に乗せよう」

「ワカッタ……」

「じゃあ私は隣に座ります」

「俺は、ハルカゼさんの隣に座ろうかな」

と、各々が席に座り、残った俺はアマネの隣に座る。

「狭ぇ…………」

走り出した車の窓から外を覗きながら、あまりの狭さに愚痴る。

「こっちのセリフよ。もうアンタだけ歩いて行ったら? 」

「お前が歩いて行け。もしくはヒメラギが行け」

「なんでオメーは俺を巻き込むんだ!? 」

「騒がしいぞ。少しは黙っていられんのか? 」

「ニギやか………」

「あっ、そういえばアマネは試合のログを見てないよね。あとで渡すから確認しといて」

「あっ、分かりました」

「そういや、俺も途中から分からねぇ状態だし、一応見とくか」

「あの時の黒い翼は凄かったね~。僕もビックリしたよ」

などの雑談をしている内に、孤児院に着いた。俺達は車から降りる。

「ところで、僕はどうすればいいの?」

「どっかに駐車して待っててくれ」

「はいはーい。じゃ、ご武運を」

再び車は走りだし、駐車場に向かった。

「俺達は中に入ってっか」

孤児院の玄関を開け、皆で中に入る。すると、車の音で気づいてたのか、ちょうど部屋からレイナが出てきた。

「お帰りなさいレイ君。それに皆さんも、いらっしゃい。遊びに来た…………という感じでは無さそうですね」

「ああ。昨日の話の続きを、聞きに来た」

「そうですか…………皆さんも、よろしいのですか? 」

レイナが皆に聞くと、一斉に頷いて肯定する。

「……分かりました。では、まず移動しましょう。私も車を出すので」





ーーー--





レイナの車には俺、アマネ、ヒメラギ。ハルカゼの車にはセシリア、サクラ、アキザワが乗っている。
走っている最中、レイナが口を開いて話し出した。

「アマネさん。レイ君は二重人格者ではないか?と昨日聞かれましたよね? 」

「あっ、はい」

「あ、やっぱりオメーもそう考えてたんだな」

「なんでそんな厨二の方に持っていってんだよ、お前達…………」

「ふふっ…………では、続きを言いますね。正直、私が知っている事はほんの一部です。なので、変な先入観を持たせるわけにいかなかったので、昨日は話をしなかったんです。レイ君の場合、昔の話についてのみだったので話しませんでしたが」

「待て待て。お前、聞かなきゃ話さなきゃいいと思ってたんじゃねぇよな? 」

「結果オーライというやつです。現にこうして話しているじゃありませんか。終わりよければ全て良し、ですよ」

と、笑顔で言われた。あっ、これは何を言っても無駄なやつだ。

「話が逸れましたね。なので、これから知り合いの元に行こうと思います。あの人なら、全てとは言わず、私以上にレイ君の事について知っているでしょう」

「誰なんスか、その知り合いっつーのは? 」

「それは、着いてからのお楽しみです」

それで話は終わり、着くまでは雑談をする。
同時刻、ハルカゼの車内。

「と、まあそんな感じの話じゃないかな? 」

ハルカゼコーチの、アッチのクルマでハナされているコトについてイワれた。

「なんか、どんどん現実離れしてますね」

「そうだね~。けど、現実でもそんな人は沢山いるよ。ただ、身近になかなかいないってだけ」

「レイはそのヒトリってこと? 」

「どうだろうね~。僕もレイナさんと同じく、変な先入観を持たせるわけにいかないからね」

「では、貴様個人の意見としてはなんだ? 」

「当たらずとも遠からず、ってところかな」





ーーー--





「なんか、ただの学生じゃ体験できねーことばっか起きんな」

「そうね。探し回ったり話し合ったり真相を確かめたりしに行くとか、どこのドラマよ」

「知らねぇよ。てかお前、ドラマとか観んのかよ」

「なに、悪い? 」

「誰も悪いとか言ってねぇだろ。ただちょっと意外と思っただけだ」

「ドラマかー。俺、最後に観たのが『怪盗探偵山犬』だからなー」

「あっ、それ私も観たわ」

「私も観ましたよ」

「俺は聞いたことしかねぇ」

それから、目的地に着くまで『怪盗探偵山犬』について語り合っていた。もう一度言うけど、俺は聞いたことしかねぇから、話には参加してない。

しばらくすると車は停まり、どうやら目的地に着いたようだ。俺達は車から降り、目的地の建物を見上げる。

「…………なんで病院なんスか? 」

「ここに知り合いがいるんですよ。事前に連絡はしましたので、多分すぐに会えますよ」

そう言うと、レイナは病院の中へと入っていった。俺達もつられてあとを追い、中へと入っていく。

「もしかして、カグラ君が昨日言ってた、大怪我して入院した病院? 」

レイナがカウンターで話をしているので、待っている間にアマネが聞いてきた。

「いや、俺は県外に住んでたから、ここの病院じゃ…………あっ! 」

もしかして、レイナが言っていた知り合いって、アイツなのか!?

「?どうしたのカグラ君? 」

「…………いや、多分、俺も知っている人物だと思い当たったところだ」

「皆さーん。こっちに来てくださーい」

遠くでレイナが呼んでおり、病院内だから静かにしろよと思いながら移動する。





ーーー--





「では、まず私とレイ君で話をしてきます。あとで呼びますので、皆さんは待っていてください」

そう皆に伝え、俺とレイナは部屋の中へと入る。すると、やはり俺も知っている人物が、椅子に座っていた。

「久しぶりだな、レイ少年」

「ああ」

「お久しぶりです、タカナシさん」

あの日に大怪我し、そしてレイナが拉致られた時に俺のことを担当した人物だ。確かに、この人ならレイナより知っている事は多そうだな。

「まずは座ってください」

椅子に腰をかけた俺達は、タカナシと対面する。

「今日は知り合いとして来たので、堅苦しく話さなくていいですよ」

「助かる。私も堅苦しくのは好きじゃないのでね。で、レイ少年を連れてきたということは、彼絡みの要件でしょう? 」

レイナに言われると、一転して口調が変わった。ネクタイを少し緩ませ、俺を見ながら聞いてきた。

「はい。レイ君の事について、知っている事を全部聞きたいと思ったんです。それはレイ君や、彼らが望んだことですから」

「なるほど…………しかし、真実を知らない方が幸せの事だってある。レイ少年は、まさにそれに当てはまると思う。世の中には知らぬが仏、という言葉もあるほどだ。

レイ少年。君は本当に知りたいか?知って、絶望して、後悔するかもしれないぞ? 」

タカナシ院長は、レイナから俺へと体の向きを変え聞いてきた。その問いに対して、少し間を置き、ゆっくりと口を開く。

「確かに、知らない事の方が幸せなことだってある。けど、それでも俺は、知らないで後悔するなら、知って後悔した方がマシだ。
仮に後悔しても、俺には仲間がいる。アイツは………アイツらは、一緒に背負ってくれると言ってくれた。なら、俺が逃げてちゃ、駄目だろ。
だから、もう迷わない。目を背けたりしない。何があってもだ」

「…………ふっ、若いな。いいだろう。話そう。外にいる者も呼ぶか? 」

「ああ…………アイツらにも、聞く権利はあるからな」





ーーー--





「では、話していこう。言っとくが、気になる事があったら、手を上げてからにしてもらうと助かる」

全員が頷くと、肯定と受け取り、タカナシ院長は話していく。

「まず、レイナさんだけでなく、全員の疑問から解決していこう。
レイ少年の、レイ少年らしくない人格についてだ。これは、世の中で言う『二重人格者』と言われるが、正しくは『解離性同一障害』だろう。ちなみに、この解離性同一障害について知らない者はいるか? 」

タカナシ院長が聞くと、ヒメラギが勢いよく手を上げ、遅れてセシリアも上げた。ヒメラギ、なんで自信満々に手を上げてんだよ。

「解離性同一障害は解離性障害の一種であり、別名多重人格障害と言われる。
ちなみに、解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害だ。
解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものなんだ」

質問はあるか?っと聞いてきたが、ヒメラギとセシリア、ついでだがアマネとレイナも頭に『?』マークが浮かんでいるように見える。てかヒメラギに関しては頭から煙が出てるぞ。

「では、続きを言おう。問題は、その原因だ。レイ少年。君は知識はあるが、昔の記憶が無いだろう? 」

「あ、ああ」

「先程も言ったが、解離性障害はその時期の感情や記憶を切り離し、心のダメージを回避しようとする。レイ少年の場合、それはとても重症化しており、まるごと切り離すケースなんだろう」


その言葉に、俺はアイツが言っていた言葉を思い出す。

『レイもよく知っている日だ。今は覚えてないようだけど、正しくは()()()()()()()()()()()? 』

例えば、人は思い出したくない、忘れたい記憶とかあるだろ?けど、そういう記憶に限って忘れられないんだ。いつまでもどこまでもね。

ただし、例外はある。その人の根本的部分に触れる、その人を左右する程の記憶の場合、本能的に、理性的に記憶を追いやろうとするんだ。まるで、()()()()()記憶としてね』


…………そういや、そんなこと言ってたな。けど、もう逃げたりしねぇよ。正面から受け止めて、前に進んでやる。

 
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