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機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
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宇宙編
月決戦編
  第41話 想い

「隊長、大丈夫ですか?顔色が…」
自室でベッドに入ろうとしているところで、メアリーの声で意識が冴える。
「あのなぁ…一応上官で異性の部屋に入るのに、ノックも躊躇いもないのか?」
「アクシズではありませんでしたよ。私は隊長が心配で来ただけです」
「なんだそりゃ…。メアリーは変わったよな。初めて会った時はなんだか…近寄りがたい雰囲気だったけど、今は違う」
隣に腰掛けたメアリーの香りが、鼻を擽る。
「私もそう思います。自分が変わったのがわかる…今まで意識しなかったことに気づくことが増えたんです」
「意識しなかったこと?」
「はい、自分が知らない感情が増えました。…今もそうです」
なんとなく小恥ずかしい気持ちになったフーバー。
「好きっていうん…ですか?なんだか胸が熱くなって、あなたのことを見たいと思ってしまう…」
これは…告白?
「私、たぶん隊長のことが…」
顔を赤くして喋る彼女は、なんら変哲のない少女に見える。
「ごめんなさい…こんな時にわけわからないことを…ゆっくり休んでっ…!!」
顔を逸らして立ち上がった彼女を、少し強く引き寄せた。
「隊長…?」




「ったく…」
リゲルグが仕上がるまであと少し。
疲れた体を休めるつもりだったが…
「…腹減ったな…」
静かに誰もいない個室で呟いたフーバーは、ゆっくりと部屋を出た。



「センサーに熱源反応‼︎ふた…いや三つの反応が本艦に急速接近中‼︎MSと思われます!」
センサー長が声を荒げて叫ぶと、隣から再び声が出た。
「データ照合完了!…これは…⁉︎ドーベン・ウルフ⁉︎ドーベン・ウルフと二機のドライセンです‼︎」
うぅむ。と静かに唸り、艦長は腰をあげ目の前の虚空を見つめながら口を開いた。
「第一種戦闘配置、MS隊発進準備だ。対空防御怠るな‼︎」
グワンバンの主砲と対空砲が一斉に咲き乱れ、三機のMSを攻め立てる。
「俺を墜とせるつもりか?」
火線の嵐を飛び抜け迫る敵機に、直掩についていたギラ・ドーガが迎撃に向かう。
「流石は少佐、機動がちがうぜ」
ギラ・ドーガのビームマシンガンが三機の間を掠め、同時に散開したうちの一機に追撃を行う。
「来るのか?」
「ルクア、任せる」
二機がそのままグワンバンへと突進し、ドーベン・ウルフのメガ粒子砲がカタパルトを吹き飛ばした。
「被弾!第二カタパルト大破、ダメージコントロール班急げ‼︎」

「出せますか⁉︎」
MSデッキに飛び込むやいなや、機付き長に問いかけたフーバー。
「いつでも!火は入ってる、生きて帰ってこい!」
返事を聞くより先にコックピットに乗り込むと、何か懐かしい感じがした。
「ゲルググの中も久々か…」
ライフルを携帯し、シールドを構えると、カタパルトに乗ってバーニア点火の準備に入った。
「フランクリン・フーバー、出ます」

切り結んだギラ・ドーガに拡散メガ粒子砲を浴びせ、溶解した装甲にライフルを構えた瞬間、背後に閃光が奔るような感覚を覚え、無意識にそちらに機体を向けた。
大きくせり出したバインダーと、見慣れたフォルムのMS。
「ルクア、イーロン退がれ!俺が艦を沈める、お前らは後退して援護だ」
ドライセンが一旦離れ、ギラ・ドーガも狙いをドーベン・ウルフに変えた。
「ドーベン・ウルフ…グレイブス教官が、ここに‼︎」
ミサイルを掃射し対空砲を潰しつつ、ドーベン・ウルフはグワンバンの正面に出た。
「これで終わりに…」
「させない‼︎」
ブリッジを狙うドーベン・ウルフに突撃し、ライフルを発射するリゲルグ。
「やらせるか‼︎この艦を!」
足先を掠めた光軸を尻目に、ドーベン・ウルフも掌のビームカノンで応戦する。
「フーバーか…俺を抑えにきたのか?」
「俺たちを裏切ったあんたに、俺は容赦はしない‼︎」
迫る粒子砲を避けながら、距離を詰めるリゲルグにドーベン・ウルフの有線ハンドが取り付いた。
「くっ‼︎」
「フーバー、俺と来い。お前はわかってないだけだ。なにも」
接触回線と取り付いた手の両方を振り切り、グワンバンを背に距離をとったフーバー。
「…何をいってる…」
目前に構える異形の兵器。
ドーベン・ウルフは踵を返す様に後退するのを、今度は見逃さなかった。
「逃がさない。あんたはここで追い詰める‼︎」
両肩のバインダー内のスラスターを全開にし、急加速するリゲルグ。
「追ってくるのか…」
信号弾を放ち、グワンバンに攻撃を仕掛けた二機に撤退を促す。
「いける…‼︎」
改めてフーバーはリゲルグの感覚に感動していた。
可変機でもない半ロートル機を、自分の手足の様に操る感覚を、直接感じとっていた。
戦場だとか、自分の気持ちとは切り離された純粋な心に、フーバーは自機の魅力を再確認していた。
「バウに勝るとも劣らないこの機動力。シンプルな分マイルドで癖がない。一対一なら、ドーベン・ウルフを喰える‼︎」
二機のMSがぶつかり合い、すれ違う意識で激しい火花を散らす…

 
 

 
後書き
次回に続きます! 
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