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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic19-Aその日、ミッドチルダ~Midchilda Central Office~

†††Sideヴィータ†††

公開意見陳述会の終了予定時刻の19時。警戒レベルを落としてた地上部隊の警備隊の呑気っぽさに呆れつつ迎えたわけだが・・・

「マジで攻撃してきやがったな、プライソン!」

トンデモねぇ爆発音と衝撃が地上本部の物理シールドを可視化できるほどのレベルで襲ってきた。さらにもう一度「うお!?」二度目の爆発音と衝撃が襲ってきた。あたしはすかさずスバル達フォワードやギンガに「おめぇら、防護服着用! 襲撃に備えろ!」指示を出す。

「「「「「はいっ!」」」」」

それぞれデバイスを起動して防護服へと変身し終えたのを確認した直後、「召喚反応! 多数!」キャロから報告が入ると、敷地内に召喚魔法陣が数えるのも面倒なほどに展開された。魔力光からしてルーテシアによるもんだと判る。

「ガジェットに・・・、くそっ、LASまで出してきやがった・・・!」

全身を黒のバトルスーツと装甲で覆い隠した死体兵器が何十体と姿を見せやがった。武装はそれぞれ違ぇな。両前腕の籠手からブレードを伸ばした奴、アサルトライフルのような銃器を構えている奴の2種類だ。

「ヴィータ副隊長、指示を!」

LASとの戦闘はあたし達大人が担当することになってはいる。その考えは今も変わらねぇ。それにこっちにはシャルを始めとした戦力が他に居るんだ、コイツらがわざわざ交戦しなくても問題はねぇはずだ。そう、人殺しをさせるわけにはいかねぇよな。

「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。お前たち4人は本部内に入って、預かってるデバイスをなのは隊長とフェイト隊長、シグナム副隊長に渡してくれ。ギンガは、あたしやリインと一緒にここで反撃だ」

スバルに対してそう指示を出すと、「4人全員ですか・・・?」ティアナが少しばかり戸惑った。なのは達と合流してデバイスを渡すだけの仕事だと思ってるようだが、そいつは違う。

「ルシルが昔、プライソンの研究所からパクってきた兵器のデータの中には、未だに名前しか判ってねぇもんもある。ソイツが何らかの手段で本部内に侵入するかもしれねぇ。いくら隊長たちが強くても、デバイスが無きゃ魔導師としての真価は発揮できねぇ。だから・・・」

「僕たちみんなで向かう・・・。敵戦力と接敵したら戦えるように・・・」

「・・・申し訳ありませんでした、ヴィータ副隊長。これよりフォワード4名。本部内でなのはさん達と合流します。スバル、エリオ、キャロ、行くわよ!」

「「はい!」」

ティアナとエリオとキャロは強く頷いてエントランスの中へ入って行ったが、「ギン姉・・・」スバルはギンガに駆け寄った。ギンガは「スバル。お互いの役目を全力で」そう言って左拳をスバルに向けた。

「うん。・・・全力で!」

そしてスバルは右拳をギンガに向け、拳を軽く打ち合った。スバルはそれで満足したのか「いってきます!」ティアナ達を追って走って行った。それを見送りつつ「リイン、はやて達と連絡は取れたか?」リインに訊く。

「はい。本部内はそう大して混乱はしていないようです。なのはさん達は、事前に決めていたフォワードとの合流ポイントへ向かうそうで――うえ!?」

リインが耳を急に押さえて変な声を上げた。なんだ?って訊こうとしたら、「隔壁が・・・!」ギンガの言うようにエントランスや窓のシャッターが降りてく。そんでリインからは「内部との連絡が途絶えました! 通信妨害です!」そんな報告が。これで内外が隔絶されたわけだ。

「(これで敵の侵入は防げるが、逆を言えば脱出できないわけでもある)・・・とにかく、あたし達は襲撃して来てる敵戦力の撃破を最優先にする。ギンガはガジェットを。リインはギンガのサポートだ」

「了解!」「了解です!」

「あたしがLASを相手にしつつ余裕があればガジェットにも対応する。・・・すでにどっかでも戦闘が開始してんな」

遠くから破壊音や爆発音が聞こえてくる。こっちも遅れてらんねぇ。つうわけで、「行くぞ!」あたし達も前線に突入開始。早速LAS達が一斉に向かって来た。アサルトライフルによる攻撃は、ガジェットが放つエネルギーと同質のもんだな。問題はその連射力だ。一度防御に回ればシールドもバリアも貫通させられる可能性がある。

(となれば・・・!)

物質弾を8発と作り出して「シュワルベフリーゲン!」“アイゼン”で打ち放つ。狙うはアサルトライフル持ちだ。ブレード持ちと格闘戦してる最中に集中砲火なんてされちゃ堪ったもんじゃねぇかんな。フリーゲンは8体のライフル持ちの腹に着弾、大きく吹っ飛ばした。が、すぐに起き上がって「Ahaaaaaa !」叫び声を上げながらライフルを連射してきた。

「チッ、思った以上に硬ぇな・・・」

今日の為に敷地内の至る所に設置されたトーチカで一旦攻撃をやり過ごし、攻撃が止んだその瞬間、とにかく陸戦だと動きが制限されるから空へと上がる。LASに航空の能力が無いのは嬉しい話だな。

(ん? チッ。死体なのにある程度の知能は働くわけか・・・)

LASはあたしへの攻撃をやめて、トーチカからガジェットやLASを攻撃している警備隊に狙いを定めて向かっていく。勇敢にストレージデバイスの杖から射撃魔法を連射する警備隊だったが、威力が足んねぇのかLASをよろけさせる程度だ。ガジェットに関してもAMFで無力化されてやがる。

「チッ・・・!」

――シュワルベフリーゲン――

物質弾を12連発で打ち放ってLASを吹っ飛ばす。そんで「バインド!」あたしは叫んだ。正直、あたしの指示に従うとは思えなかったが、「了解!」警備隊はすぐにバインドでLASを拘束していった。

(バインドは通用するんだな。地上本部の敷地内を肉片で埋めるわけにもいかねぇし、今はそれで良いか)

あたしは空からフリーゲンを打ち放ってさらにLASを吹っ飛ばし、転倒した連中を警備隊がバインドで拘束する。それを繰り返してると、「うおっ!?」また爆発音と衝撃が襲ってきた。空を飛んでるからか、その衝撃をもろに受けちまった。

「一体、どっから――うぐっ・・・!?」

さらにもう1回おなじ爆発音と衝撃が。4回と続いたなんらかの攻撃によって「物理シールドが・・・!」とうとうトンデモねぇ轟音を立てて破られちまった。物理シールドが解除されたことで、どこに潜んでたのかガジェットのⅠ型とⅢ型が群れを成して、AMFを展開しながら魔力シールドに取り付き始めた。本局からの応援である航空武装隊が迎撃に入って次々と撃墜してくけど、ガジェットの数が多過ぎて途切れねぇ。

「魔力シールドじゃあの攻撃には耐えらんねぇ・・・! ロングアーチ!」

期待せずにロングアーチに通信を入れてみた。そしたら『はい。グリフィス!』が応じてくれた。本部内との連絡が無理だが、外部とはまだちゃんと連絡は取り合えるようだな。もっと早くから通信入れときゃよかった・・・。

――シュワルベフリーゲン――

LASやガジェットにフリーゲンを撃ち込みながら「判ってる範囲で状況報告を!」するように指示を出す。

『はい! 現在、地上本部はプライソン一派の兵器によって襲撃を受けています。さらに、地上本部が独自に進めていた魔力砲台アインヘリヤルが、クイント・ナカジマ准陸尉の率いるスキタリス、およびガジェット数十機によって破壊され回っています。直掩の地上部隊も壊滅状態です』

「んだと・・・!?」

――シュワルベフリーゲン――

クイント准陸尉たちは別行動かよ。となると、メガーヌ准陸尉たちはどこだ。召喚はルーテシアの魔法によるもんだったが、アイツらは姿を見せてねぇ。地上本部の別区画のところで戦ってるかもしれねぇが、どうも嫌な予感がする。あたしは「隊舎の警備はしっかり頼むぞ」そう伝えた。なんとなくだが、メガーヌ准陸尉たち、たとえ違っても何かしらの戦力が六課に向かってそうな気がしてならない。ヴィヴィオとフォルセティを奪い返しに・・・。

『はい。シャマル医務官、アイリ医務官、アリシア執務官補、バニングス捜査官、月村技術官、ザフィーラさんもすでに屋外で臨戦態勢に入っております』

「そうか。それでだが、地上本部を襲っている攻撃方法、それがなんだか判るか?」

『いえ。魔力・エネルギー反応が一切感知できず、どういう攻撃なのかは判っていません』

魔力でもエネルギーでもない攻撃方法、そんで使っているのがプライソンとなれば十中八九「質量兵器・・・!」になる。レールガンやミサイルなんてモンがいい証拠だ。なら「熱源を探せ!」それが一番だ。

――シュワルベフリーゲン――

『熱源・・・、あっ、ロケットの熱源ですね! シャーリー!』

『はい! 地上本部周辺の熱源を探知します!・・・』

順調にLASを無力化して行く中、「今度は何だ!?」ドォーン!と地上から爆炎が立て続けに発生した。遅れて「ぎゃぁぁぁ!」悲鳴がいくつも上がり始める始末。

『ヴィータ副隊長、大丈夫ですか!?』

「あ、ああ・・・」

目を凝らして見えるのは「おいおい、マジかよ・・・」惨劇だった。そう、バインドで捕らえてたLASが自爆しやがった。何がキッカケかは判らねぇが警備隊の何人かを巻き込んだらしく、血まみれになっている隊員たちが何人と居るのが判る。

「「「「Ahaaaaaaaa !!」」」」

「くそっ・・・。テメェら!」

――シュワルベーフリーゲン――

生きてんのか死んでんのか判んねぇが、負傷した隊員を避難させようとしている隊員たちにLASが襲い掛かろうとしてたから、すぐに迎撃を開始。また何体かを吹っ飛ばして、手の空いてるミッド式の隊員にバインドを発動させる。つうか、LASやガジェットを撃破できるだけのレベルの魔導師が足りてねぇ。

『ヴィータ副隊長! 熱源を確かに感知できました! 南方よりマッハ6で飛来! 数は2?・・・いえ、また増えた!? 時速260kmで飛来中が32の計34機! 距離16000と32000です!』

シャーリーからの報告を受けたあたしはLASへの攻撃を緩めることなく、南の空へと何度かチラッと見る。でも距離のこともあるが「ダメだ、見えねぇ・・・!」近隣のビルの明かり、さらには星の所為でまるで見えねぇ。

『こちら外周南東区画警備担当・機動六課! 負傷者多数および警備戦力の減少により、防衛ラインの維持が困難になっている! 応援を要請する!』

とにかく戦力を整えねぇと魔力シールドまで貫かれる。それを危惧しての応援要請をしながらまた上空を見て、「ん?・・・アレか!」飛来物を遠目だが捉えられた。赤い光・・・おそらくアフターバーナーが尾を引いてる何かが見える。ソレが「分裂!?」したのか、赤い光が10個くらいに分かれた。

「魔力シールドが・・・!」

その10個の赤い光が魔力シールドに着弾して、あの爆発音と衝撃が起きた。それで魔力シールドに大きなヒビが入りやがった。しかもそこを狙ってさらにガジェットが何十機と取り付く。あの攻撃は1回につき2発ごとだ。・・・ってことは、もう1発が迫って来てるはず。

『こちら外周北部警備担当! こちらも手一杯だ!』

『外周北東部警備担当! すまない、こちらも被害甚大だ!』

『外周北西部警備担当! こちらから少しは回せる! もう少し耐えてくれ!』

『こちら外周南部警備担当、教会騎士団所属のフライハイト! こっちからも増援を送るから、それまで持ちこたえてヴィータ!』

シャルからの通信も入った。ここはアイツに頼るしかねぇ。だから敵の攻撃のことについて伝えようとしたんだが、2発目の攻撃がすぐそこにまで来てた。さっきと同じように1個から10個の何かになって、魔力シールドに着弾。それでとうとう「やられた!」魔力シールドまでもが粉砕された。より一層騒々しくなるミッド地上部隊で構成された警備隊員たち。

『シャル! 南方からシールドを打ち砕いた攻撃が飛んでくる! 高度がかなり高ぇ! 次は丸裸の本部に撃ち込まれる可能性があんだ! それに、六課の探査じゃ32機の熱源もあと少しで姿を見せる!』

『っ! 南方からね、判った! 地上のガジェットやLASの迎撃は部下に任せて、わたしが空に上がる! ヴィータ、迎撃を手伝って!』

『応! リイン、ギンガ! あたしはちょっと席を外すぞ!』

『お気になさらず! 私とリイン曹長で凌げます!』

『です! ヴィータちゃんはヴィータちゃんの戦いを!』

リイン達に連絡を入れたあたしは「おらぁ、これで最後だ!」LASへと8発のフリーゲンを打ち放って、着弾したのを確認してすぐに上空へ目指して高度を上げる。

『ヴィータ副隊長、ロングアーチ03シャーリーです! 32機の機影をカメラで確認できました! 航空機戦隊です! シームルグ、アンドラス、シャックスが各10機ずつの編隊を組み、後方に輸送機マルファスを2機確認できます!』

「(アイツらかよ・・・!)そのデータを各航空部隊にも伝えてやってくれ。あたしとシャルだけじゃ無理だ」

『了解です!』

シャーリーに指示を出し終えた後、「ヴィータ!」シャルと合流した。

†††Sideヴィータ⇒イリス†††

公開意見陳述会の日に推測されてた通り、プライソンが襲撃を仕掛けてきた。ガジェット、それに人の死体をサイボーグに改造したLASとかいう陸戦兵器など、それぞれ3ケタ越えによる包囲戦。本部や応援の地上部隊の戦力は、正直に言うとあんまし使えないレベルだった。別に弱いってわけじゃない。普通に精鋭を名乗れるレベルの強さは持ってる。けど・・・

(ガジェットに決定打を与えられないとなれば、プライソンの兵器戦じゃ役には立たない)

その魔法のほぼ全てがAMFに拒まれちゃってた。LASはLASで撃破は出来たりしてるけど、元が死体ってことで腐乱した肉片や体液を撒き散らした。それからは阿鼻叫喚。内臓や体液を体に被った隊員たちも居て、みんな盛大に吐いては卒倒した。それを遠巻きに見てたわたしですら卒倒しかけて、なんとか耐えても吐き気がとんでもなかった。うちの部下は堪え切れずに吐いたけど。あ、わたしは耐えたよ、うん。

「地上本部の近くで戦うにはまずい相手ね」

モニターに映る4種の航空機をキッと睨む。何度か交戦したこともある機体もあれば、初めて見る機体もある。見たことのあるのは、赤黒い塗装をした、双発エンジン・ 前翼(カナード)付き・外に向かって少し斜めにある2枚の垂直尾翼というデルタ翼機・“シームルグ”シリーズとされる戦闘機。
蒼い塗装の双発エンジン・カナード・前進翼・内に向かって斜めにある2枚の垂直尾翼を持つ、“シャックス”シリーズとされる掩護機。迷彩柄の長い胴体・後進翼・T字の垂直尾翼・エンジンは左右の主翼下に2基ずつの計4基の機体で、“マルファス”シリーズと呼ばれる輸送機。

(そして・・・)

漆黒の塗装の双発エンジン・カナード・可変後退翼・上下2枚ずつの計4枚の斜め尾翼から構成されている。4枚の尾翼の内、上2枚は上半角の付いた全遊動式水平尾翼で、下2枚は可動部のない安定翼(ベントラルフィン)を持つ、“アンドラス”シリーズとされる攻撃機・・・だっけか。

「(何にしろ、全機を即撃墜!)ヴィータ!」

「ああ。先制で仕掛ける!」

戦闘機隊が到着するのを待ってちゃ地上本部近辺でやり合うことになる。流れ弾を今の丸裸の本部に突っ込ませるわけにはいかない。だから・・・

――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――

背中に展開してる一対の魔力翼ルビーン・フリューゲルを大きく羽ばたかせて、南方へと向かって飛ぶ。ヴィータも「おっしゃ!」わたしに続いた。

『こちら本局航空武装隊・第2212部隊! 機動六課よりデータを頂きました! ヴィータ先輩、自分たちもお供いたします!』

その途中で通信が入った。後ろをチラッと見ると30人の武装隊が居た。ヴィータは「お前ら!」嬉しそうに声を上げた。2212航空隊って確か、セレス、それにヴィータやシグナムの古巣の部隊だっけか。

「ああ!」

『同じく本局航空武装隊・第1013部隊! ヴィータ二尉、僕たちも協力します!』

「お願いします!」

さらに30名の本局の航空隊が参加してくれた。本局からの応援部隊は航空武装隊4隊になってる。うち半分の2隊が協力してくれるとなれば、一方的な不利にはならないはず。

『航空機隊のデータは見たか?』

『もちろんです。本日の警備任務のため、夢に見るほどにまで戦闘データを確認しましたので』

『それに各員、AMF対策は済んでいます。本局技術部が試験開発したデバイスを用意してきています』

「はっは!『期待してんぞ!』

展開されたモニターに映る航空武装隊の面々が持ってるのは、スナイパーライフル型のカートリッジシステム搭載デバイスだった。ルシルの銃火器談義に付き合ったこともあるから、H&K PSG1をモデルにしているんだな~って判る。

(ルシルが興味持ってるモノにわたしも理解を深めれば、ルシルともっと仲良くなれる、なんて思ってたからね~。結局、途中で折れちゃったけど・・・)

これは確かに期待できるよ。“キルシュブリューテ”の納められた鞘を握る左手に力を込める。ヴィータも「プライソンの鼻っ面をへし折ってやる!」“グラーフアイゼン”の柄を握り締めた。そして・・・

「視認!」

「剣神モード!」

絶対切断のスキル、アプゾルーテ・フェヒターを発動させる。AMFなぞに影響されない魔力攻撃じゃなくスキルだ、負けはしない。っと、もうそろそろかな。ヴィータと頷き合って、右手で“キルシュブリューテ”の柄を握り、すぅ~っと息を吸ってから止める。

≪マイスター! 全員がロックオンされた! 攻撃注意!≫

“キルシュブリューテ”から警告が入ったことで、わたしはベルカ魔法陣の足場シュヴァーベン・マギークライスを発動して着地。そして居合抜きの構えを取り、「ふっ・・・!」わたしは鞘から“キルシュブリューテ”を抜き放った。

――飛刃・翔舞連閃――

抜き放たれた“キルシュブリューテ”の刃から放たれるのは絶対切断の刃。わたしの魂の中に居るシャルロッテ様の真技、飛刃・翔舞十閃を、わたしなりにアレンジしたスキル攻撃だ。最初の抜刀で12、旋回しつつ“キルシュブリューテ”を鞘に収め、正面を向いたところでもう一度抜き放って12の斬撃を放ち、最後に縦一閃に振り下して4つ。全長1mほどの計28の刃を放つ。

「いっっけぇぇぇぇーーーーッ!!」

連閃を放ったと同時、戦闘機30機から一斉にミサイルが発射されてきた。1機につきミサイル10発同時発射ということで、300発がわたし達に向かって来た。わたしの連閃とミサイルが真っ向からぶつかって、「おお、誘爆!」ミサイルの爆発が連鎖的に起こっていく。だけど「エンゲージ!」攻撃を仕掛けてきた戦闘機30機は健在だ。

「全機、搭載兵装はミサイルポッド!」

「レールガンじゃねぇのは不幸中の幸いだな。さすがにレールガンじゃ防ぎようがねぇもんな!」

「まったくね・・・! 各員、その場で待機をお願いします!」

単独で戦闘機隊へと突撃。わたしの接近に戦闘機隊は迎撃じゃなくて軌道変更を行おうとした。さっきの攻防でわたしへのミサイルは意味が無いって判ったのかな。まぁとにかく、これはチャンスだ。

「絶刃――」

“キルシュブリューテ”の刀身に全長40mの絶対切断の刃を付加して・・・

「斬舞七支閃!」

そこから葉の無い枯れ木の如く、8~25mほどのジグザグな刃を伸ばした広域斬撃を振るう。第三者から見れば、桜色に光り輝く枯れ木を振り回してるように見えるでしょうね。そしてこの一撃で30機中19機を斬り刻むことが出来た。

「よっしゃぁ!」

“レリック”と初遭遇したあの日、戦闘機――シャックスと交戦してからずっと構築を考えてた対兵器術式だ。まぁこの七支閃はそりゃあもう制御が難しくて、枝分かれした刃の位置や形や長さはランダムだったりするから、最低50m圏内に人が居ないこと、対人戦では使用しないこと、制御するために集中できる戦況の中であること、周囲に味方が居ること、と言った条件下でのみ発動するようにしてる。

(少しでも機数を減らすことが出来れば儲けもの!)

斬撃範囲内からギリギリ離れることの出来たのは“シームルグ”4機、“アンドラス”5機、“シャックス”2機の計11機。あと輸送機“マルファス”2機も一緒に斬り払ってやりたかったけど、他3種の機体速度に比べてゆっくりしてたから見逃す他なかった。ちょっとでも遅れたら生き残りがもっと増えてたと思うしね。

「追撃をお願いします!」

わたしは絶刃を一旦解除して、再展開したシュヴァーベン・マギークライスの上に着地してへたり込む。

「了解です! 1013部隊は、1班はシームルグ、2班はシャックス、3班はアンドラスを叩け!」

「2212部隊は、シームルグは1班が、アンドラスは2班が、3班は降下しているマルファスをそれぞれ担当せよ!」

1013航空隊と2212航空隊それぞれの隊長が部下に指示を出すと、「了解!」隊員たちが10人ずつに分かれて、10人がそれぞれの死角をカバーし合いながら攻撃開始。そのどれもが対AMFに適したヴァリアブルシュートだ。それが各機体にガッツンガッツン当たってく。でも弾殻部分がAMFを突破する前に機体がマッハで離れて行くから、ほとんどが無効化されてるっぽいな~。こりゃ足止めが必要かな。

「シャル! ウェポンベイが開いて、ミサイルポッドが出て来たぞ!」

「(ちょっとクラクラするけど、そんなこと言ってられないよね!)ヤー!」

――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――

紅翼を大きく羽ばたかせて、ミサイル発射の阻止をするために猛攻を続けるヴィータや航空隊の元へ高速移動。わたしはミサイルを発射された後の迎撃のために「カートリッジロード!」して、広域魔法をスタンバイ。

(戦闘機本体にAMFはあっても、ミサイルには無いのは不幸中の幸いだよね~)

“キルシュブリューテ”の刀身に魔力を付加して、「せぇ~っの!」振りかぶった直後・・・

――ISスローターアームズ――

――ISレイストーム――

――ISツインブレイズ――

その娘たちは闇夜から突如として現れた。大きなブーメランのような大剣を持つヘッドギアの少女、エネルギーを刃状に固定した双剣持ちのヘアバンドを付けた少女、少女か少年か見た目じゃ判別しにくい子供、計3人がわたし達に奇襲を仕掛けてきた。

「墜ちてください」

「その服装、テメェらもシコラクスか!?」

「これ以上の暴挙は許さない」

「そっくりそのまま返してあげる・・・!」

ヴィータに向かって言ったのはヘアバンドの少女で、わたしに向かって来たのはヘッドギアの少女。彼女は左手に持つブーメランを投擲してきたから、わたしは鞘に魔力を付加した上で「せいや!」ブーメランを鞘で迎撃したんだけど、「重っ!?」見た目通りというか、ブーメランを受けた鞘から左手、そして全身へと衝撃が駆け抜けた。

「ふんっ!」

「邪魔を・・・!」

左手は痺れて上手く動かせない。だから右手に持つ“キルシュブリューテ”を頭上で水平に構え、少女の振り降ろして来たブーメランをまともに受け・・・ずに流して捌くことに注力する。直撃と同時に刀身を傾け、彼女のブーメランを滑らせてやった。僅かに体勢を崩した彼女の首筋へ向けて即座に「ぅらぁぁぁっ!」峰打ちを打ち込んだ。

「んぐぁ!?」

少女がよろけたところに、「かはっ・・・!」今度は鳩尾に膝蹴りを入れて、「今は寝てなさい!」その長い後ろ髪を引っ掴んで地上へ向けてぶん投げる。でもその僅かな攻防の所為で「ミサイルが・・・!」撃たれてしまった。

「くそっ・・・!」

ヴィータはヘアバンドの娘と切り結んでいて、航空隊員たちは「うわぁぁぁぁ!」3人目の子供による幾条もの光線によって次々と撃墜されていってる。戦況は最悪。ミサイルを迎撃できるのは今、わたしただ1人だけ。

「光牙――」

――スローターアームズ・クロッシングダンス――

さっきの少女のブーメランが4つと増えて、どこからともなくわたしの元へ飛来した。ああもうマジで「鬱陶しい!!」けど、ここは回避を最優先、魔法はミサイル迎撃の為に使うべき。そう判断したわたしはマギークライスを足元に展開してソレを蹴り、紅翼を折り畳んだ状態で前方へ跳ぶ。

「閃衝刃!」

紅翼を大きく広げると同時に刺突を繰り出し、刀身に纏わせてた魔力を槍として放つ。地上本部、ミサイル、戦闘機、わたしっていう位置からしてもう全弾の迎撃は難しいけど、誘爆を狙えばまだなんとかなるはず。というか、さっさとシールドを再展開してほしいんだけどね。どうせこんな事態になるなんて予想すらしていなかった所為で、再展開に手間取ってるんでしょうけど。

――ISレイストーム――

「んな!?」

光線が網目状に放たれて来て、わたしの閃衝刃をすべて相殺した。それはつまり・・・

「ダメぇぇぇぇーーーー!!」

110発のミサイルが地上本部に直撃することを示していた。でも「させっかよ!」ヴィータがシュワルベフリーゲンを12発と打ち放って迎撃を強行。先頭のミサイルに巧く着弾したことで誘爆が見事に発生したんだけど、「ヴィータ!」がヘアバンドの娘の斬撃を背中にまともに受けて、そのまま墜落してく。

――ゲシュウィンディヒカイト・アオフシュティーク――

紅翼を羽ばたかせて墜落してくヴィータの元へと急ぐんだけど、ヘッドギアの娘のブーメラン3つが襲いかかって来た。それに彼女もブーメランを手に「おおおおおお!」突撃して来る。

「サイボーグなんだから、そんな簡単に死なないでしょ!?」

わたしの周囲に氷結系魔力によって構成されたベルカ魔法陣を6枚と展開。発生するのは氷のオベリスク、そして周囲に溢れ出す冷気。

「氷牙棘華刃!」

その場で旋回して“キルシュブリューテ”で6本のオベリスクを打ち砕いて、破片全てを無数の氷の刃や礫として上方180度に一斉放射。さらに冷気を周囲に拡散させる。斬撃・打撃・凍結の3属性による、敵陣内での1体多数戦用術式。

(シャルロッテ様の有する氷雪系魔術最強だって話だね)

ホントにギリギリだったけどブーメラン3つは氷の刃と礫で迎撃できて、「体が、凍る・・・!?」ヘッドギアの少女の持つブーメランや右腕、そして後ろ髪を凍結していく。

「(ミサイルの直撃はもう諦めるしかない。ただ、着弾場所に誰も居ないことを祈るしか・・・!)ヴィータ!」

墜落し続けてたヴィータを抱き止める。意識を失ってるようで、ぐったりしてる。さすがのヴィータも、騎士服の防御力だけじゃヘアバンドの娘の攻撃を相殺しきれなかったみたい。それほどの威力を有してるってわけか。

「あとは、あなただけです」

「これ以上の戦闘行為を停止するのであれば、こちらからは攻撃は加えません」

「私をこの程度で撃墜できたとは思わないでいただこう」

光線を操る子供、ヘアバンドの少女、そして体の至るところを凍結されていても問題ないとでも言うようにヘッドギアの少女もわたしの前に立ちはだかった。ヴィータはリタイア、航空隊員たちも全滅してるみたい。

「くっ・・・!」

このまま地上本部にミサイルを撃ち込まれるのを黙って見ているしか出来ないなんて。でもさすがのわたしでもヴィータを抱えたまんまじゃこの娘たちの猛攻を潜り抜け、ミサイルや戦闘機を破壊するのは無理過ぎる。でも、あの術式を使えば・・・或いは。

『もう大丈夫だよ、シャルちゃん、ヴィータちゃん!』

――ストライクスターズ――

『私たちも防衛戦に参加するから!』

――トライデントスマッシャー――

そんな思念通話に遅れて、桜色に輝く砲撃と魔力弾8発、黄金に輝く雷撃砲が地上から放たれて来てミサイルを迎撃した。思念通話の相手、そして攻撃主は「なのは、フェイト!」だ。これで形勢逆転だ。いくらこの娘たちでも、なのはとフェイトを相手にして勝てるわけがない。そう思ったんだけど・・・

「例の部隊の分隊長2名・・・」

「僕たちの任務はこれで完了した」

ヘアバンドの少女と光線の子供(僕ってことは少年・・・?)がそうポツリと言ったのが聞こえて、ヘッドギアの少女がキッとわたしを睨みつけたかと思うと反転して、「離脱する」飛び去って行った。他の2人も飛び去ろうとするから「待て!」引き止めようとした。でも、そんな彼女たちを追い翔ける状況じゃないことを知る。

『シャルちゃん! 上!』

なのはからの思念通話に頭上を見上げて、わたしは「やられた・・・!」歯噛みした。地上本部の物理と魔力シールドを粉砕した攻撃(ちゃんと見たら巨大なミサイルだってことが判った)が、今まさに地上本部のセントラルタワーに着弾しようとしていたんだから。

「ディバイン・・・バスタァァァァーーーーッ!」

「プラズマ・・・スマッシャァァァーーーーッ!」

なのはとフェイトの砲撃が巨大ミサイルに向かって行くけど、「っ!?」その巨大ミサイルにはAMF、もしくはシールドか、何にせよ迎撃に備えて防御機構が備えてあったらしく、2人の砲撃を弾いた。そして巨大ミサイルは突如としてバラバラになって、その中から小さなミサイルが10発と飛び出し、地上本部のセントラルタワーに続々と着弾してしまった。
 
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