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黒魔術師松本沙耶香 騎士篇

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第四章

「けれどむしろね」
「女の方がなの」
「好きで」
 そしてというのだ。
「楽しんでるかも知れないわね」
「同性愛は死の罪よ」
 女は沙耶香にあえてキリスト教の倫理を出した。
「まさにね」
「今はそうでもないわね、それに私はキリスト教徒ではないわ」
「だからなの」
「そうしたことは気にしないわ」
 同性愛もというのだ。
「日本でそれで罪に問われた人もいないし」
「それでなの」
「純粋に楽しんでいるわ」
「いい国ね、日本は」
 女は沙耶香の言葉を聞いて彼女の東洋的な美貌を見せる顔を見て言った。
「私は同性愛は今までなかったけれど」
「欧州ではこうはいかなかったわね」
「キリスト教が強いから」
 今もそれは健在だ、ドイツにしてもキリスト教のその名前を冠した政党が存在する程だ。キリスト教は紛れもなく欧州の心であり学問もそこからはじまっている。
「だからね」
「そうね、けれどね」
「日本ではそうではなくて」
「今はあまり普通でなくとも」
「罪に問われることはないのね」
「ないわ」  
 一切、という返事だった。
「だから私もこうして楽しめるのよ」
「そういうことなのね」
「この世に生まれた理由は楽しみ為よ」
 沙耶香はこうしたことも言った。
「美酒に美女、それに美食に美男」
「美男は最後なのね」
「私にとってはね、美しいものを楽しむことこそが」
 まさにというのだ。
「この世に生まれた理由よ」
「だからこそ私と共にワインを飲んで美食を楽しんで」
「貴女自身も楽しんだのよ」
 女に妖艶な笑みを向けて言った。
「こうしてね」
「そういうことね」
「残念だけれど貴女とはこれで今はお別れだけれど」
「縁があれば」
「その時はまた会いましょう」
「楽しみにしているわ」
 女は沙耶香のベッドから起こしている白い身体も見た、細くそれでいて胸は大きく張っている。彫刻を思わせるスタイルである。
 沙耶香は最後にシャワーを浴びた後服を着て女と共にホテルを出てから入口で再会の時を楽しみにすると言葉を交えさせた、沙耶香は別れるその瞬間まで女の肩を抱いていた、それから。
 暫くベルリンの街を歩きこの街の独特の石の景色を楽しんで暗くなってから丁度目に入った小さなレストランに入った、そのレストランは昼のレストランとは違い細長い店の形でカウンターの後ろはすぐに壁で席はカウンターにしかなかった、全部で十程か。
 壁にはドイツ語でメニューが書かれているが全て菜食だった、そのメニューを見る沙耶香にカウンターの中にいる中年の痩せた男が言ってきた。見れば白いシェフの服を着ている。
「うちはそういう店なんだ」
「菜食のお店なのね」
「そうさ、最初から最後までな」
 それこそ前菜からデザートまでというのだ、当然ながらメインディッシュもだ。
「肉も魚も出ないぜ」
「そうなのね」
「それでもいいかい?」
「お酒はあるかしら」
 沙耶香は店のシェフにこのことを問うた、店の中には既に数人の客がいる。
「そちらは」
「ああ、そちらは安心してくれ」
「そう、ではワインをお願いするわ」
「どのワインがいいんだい?」
「モーゼルを」
 沙耶香が頼んだワインはこれだった、ドイツを代表する産地のものだ。白ワインが有名である。 
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