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天本博士の怪奇な生活

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6部分:第五話


第五話

                 第五話  巨大ロボット開発
 突如として研究所が崩れその中から出て来たのは。
「見給え小田切君!」
 博士が崩れ落ちた廃墟の中から叫んでいた。
「これがわしが新たに開発した巨大ロボットだ!」
「って博士、研究所ぶっ壊しちゃいましたよ」
「そんなことはどうでもよい!」
「よかないですよ。明日から何処で生活するんですか」
「大丈夫じゃ、この研究所は自己修復機能を持っている。ナノテクというわけじゃな」
「とことん無茶苦茶な研究所ですね、本当に」
「そんな小さなことにこだわるでない!この巨大ロボットじゃが」
「何で動いてるんですか?」
「原子力じゃ」
 博士の返事には淀んだところがなかった。清々しいまでにきっぱりと言い切った。
「ニュー○ロ○ジ○マーキャ○セラーも搭載しておる。半永久的に動けるぞ」
「ってまた原子力ですか」
「何処ぞの将軍様の国からな。こっそりと拝借したのじゃ。内緒でな」
「・・・・・・何処の国ですか、それって」
「ちょこちょこニュースになってる国じゃ。まあ気にするな」
「何か思いきり不安なんですけど。まあいいです。それでですね」
 小田切君も深いことは考えないことにした。これ以上エネルギーで突くとそれこそ国際問題どころか日本そのものが世界から糾弾されると思ったからだ。ここは聞かなかったことにして済ませることにした。
「装備は凄いぞ。まずはハイメガ○ャノン砲」
「はい」
「ドラ○ーンシステムにビームシ○ールド、ツインバズーカにビームジャベ○○、隠し腕にミサイルランチャー、八八ミリバルカンにフ○イズシフト装甲、ヴェ○○ーに光○翼じゃ」
「何か僕の考えた最強ロボットみたいですね」
「うむ、空も海も宇宙も。怖れるものはない」
「どっかの夫婦のアイディアパクったみたいですね、話だけ聞くと」
「フン、わしを甘く見るな」
 無論そんな人真似なぞする天本博士ではない。ちゃんとオリジナルなのである。
「このマシンはリモートコントロールで動く」
「怪しい電波が出る操縦桿が二つついてるあれですか?」
「君、案外古い知識じゃな」
「有名ですから、あれも」
「あれよりもさらに高性能じゃ」
「はあ」
 どうせ滅茶苦茶なものだろうと思ったがそれは言わなかった。この博士は常識とかルールとかそういったものは一切理解しない頭の構造だともうわかっているからだ。
「これで操縦するのじゃ」
 取り出したのは携帯電話であった。
「携帯!?」
「最近はな、これで何でも出来るからのう。それこそロボットの操縦もな」
「どういう理屈なんだろう」
「天才の理屈は誰にもわからんよ。では」
 博士は早速携帯をカタカタとやりはじめた。
「まずはテスト飛行じゃ」
 言いながら携帯を打つ。
「マッハ三〇で空を飛び」
「はあ」
「どんな敵もイチコロじゃ!見よ、この雄姿!」
「雄姿って博士」
「どうした?」
「街、壊れてますけど」
 見れば街がマシンが空を飛んだ時の衝撃波で完膚なきにまで破壊されていた。
 見事なまでに跡形もなくなってしまった街。ただ天本博士と小田切君だけが立っていた。
「ううむ」
「どうするんですか?博士」
 小田切君は博士に尋ねた。
「テスト飛行の段階で街木っ端微塵になってしまいましたけど」
「天才の研究には犠牲がつきものじゃ」
「何呑気つーーか他人事みたいに言ってるんですか!街潰れちゃったじゃないですか!」
「街の一つや二つで大袈裟な」
「これ立派なテロですよ!おまけに犠牲者まで出てそうじゃないですか!どうするんですか!」
「何、心配はない」
 しかし博士は相変わらず動じてはいない。
「心配ないって」
「タイムマシンを使うからな。これで時間を戻す」
「どうやってそんなもの開発したんですか?」
「このロボットの研究の片暇にな。つまらんものじゃ」
 どうやらこの博士にとっての面白い、面白くないは多分に派手さや破壊力が基準になっているようである。将にマッドサイエンティストであった。
「このカメラで街を写す。それだけじゃ」
「それで街が元通りですか」
「そうじゃ。一時間前の街に。ほいっと」
 そう言いながら写真を撮る。すると忽ちのうちに街は元に戻った。
「なっ、この通りじゃ」
「どういう理屈なんですか?」
「気にするな。簡単なことじゃからな」
「全然納得いきませんが。それで」
「ロボットじゃな」
「どうするんですか、そんなの開発して」
「決まっておる、これを自衛隊に売る」
「はあ」
「そしてわしの名を世界に広めるのじゃ。人類史上最高の天才科学者としてな」
「わかりました。でも博士」
「どうした?」
「僕はこの件に関して何の関係もありませんからね。そこのところは宜しくお願いしますね」
「面白くないのう、共同研究者として歴史に名を残せるのに。まあいいわ」
 それならそれでよかった。どっちにしろ歴史に名前が残るのだから。
「ではな。早速売り込んで来る」
「本当にいいんですね、それで」
「何か色々と引っ掛かるのう。わしがいいと言ったらいいのじゃ」
「わかりました。それじゃあ」
「うむ」
 このまま博士は暫く国家権力に抑留された。原子力を無断で密かに使用していたことと不明瞭どころか明らかにまずい入手ルート、とんでもないレベルの兵器性能と様々なところを突かれ抑留されたのであった。
「全く。またしてもか」
 博士は拘置所の中で呟く。
「日本政府も頑迷な。天才の閃きを理解せぬとは。こんなことでは潰れるぞ」
「あんたみたいな人野放しにしとく方がよっぽど潰れるよ」
 そんな看守の突っ込みも耳に入らない。それどころか次の日には訳のわからない瞬間移動の機械で脱獄して話をさらに大きくする博士であった。

第五話   完


                 2006・7・25

 
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