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天本博士の怪奇な生活

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37部分:第三十六話


第三十六話

                  第三十六話  署長
 小田切君の予想は当たった。鏡の世界からモンスター達が出て来て人を襲いはじめたのである。死者こそ出てはいないがかなりやばいことになっていた。
「それでですね」
 事態を重く見た警察は真っ先に怪しい場所にやって来た。当然博士の研究所である。
「今度は何をしたんですか」
「わしを疑っておるのか」
 博士は自ら乗り込んできた若い署長に顔を向けていた。見れば女性であった。所謂キャリア官僚というものであろうか。どうやらかなり生真面目で正義感のある人らしい。博士にはそんなものは一切関係ないことであるが。
「何をされたのですか」
 疑っているのではなかった。決め付けていた。
「今度は」
「わしがやったと思っているのか」
「思ってはいません」
 署長は言う。見れば何処か小○真○に似ている。小田切君はそれを見てふと思ったがそれは言わなかった。
「確信しています」
「けしからんことだ」
 博士はそれを聞いて憤慨した。
「ですがやられたのですよね」
 署長はそれでもさらに問うてきた。
「今度もまた」
「わしは隠し事はせん」
 こうまで言う。
「これのことじゃな」
「やはり」
 署長は博士が懐から取り出してきたカードを見て声をあげる。
「貴方でしたか」
「そうじゃ。それで逮捕でもするのか?」
「いえ」
 だが署長はそれはしようとはしてこなかった。
「今回はそれはしません」
「ではどうするのじゃ?」
「この事件を収めて下さい」
 署長はこう述べた。
「あのモンスターを何とかしようとしたらそれこそ正義の味方が必要なので」
「わかったわ。仕方がないのう」
 それを聞いてかなり不本意そうな言葉を述べた。
「収めてやろう。では暫く待っておれ」
「わかりました。それでは」
 署長はそれを聞いてから研究所を後にした。後に残った小田切君はそっと博士に尋ねてきた。
「それでどうするんですか?」
「簡単じゃ。中にいるモンスターを全部わしと契約させる」
「契約ですか」
「それで問題はない。わしもそれでまた研究をしてやるわ」
「そうするんですか」
「しかしのう」
 博士はそこまで語ったうえで忌々しそうに溜息をついた。それから述べた。
「流石防衛大学出身じゃ。キビキビしておる」
「やっぱりそうだったんですか」
 小田切君はそれを聞いて自分で納得した。
「気付いたのか?」
「ええ、何か顔で」
「顔で。顔に自衛官とでも書いてあったのか?」
「いえ、ちょっと似ている人がいましたんで」
「そうか」
 博士には少し事情がわかりかねていた。どういうことなのか。
「ア○トなんて知りませんよね」
「ああ、わかったぞ」
 それを言われるとすぐに察してきた。頭は伊達ではなかった。
「映画版じゃな」
「そういうことです。胸もないですしね」
「そうじゃな。では総監が出ないうちに話を収めるとしよう」
「やっぱり総監の正体は」
「言わない約束じゃ。ではな」
「はい」
 こうして博士はモンスターの騒動を収めて全てのモンスターと契約することになった。話は何か得意な方向に向かっていくのは小田切君の想定の範囲内ではあったがそれ以上のことはそうではなかった。


第三十六話   完


                   2006・11・20

 
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