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ラブライブ! コネクション!!

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Track 2 受け取るキモチ 繋げるミライ
  活動日誌10 ぼくらは・いまのなかで! 1

「……お疲れ様ー」

 残るは花陽さんだけになった部室内。
 全員が思い思いに時間を過ごしている中、部室の扉が開いて花陽さんが入ってきた。全員がそれぞれに挨拶を交わしていく。
 そしてお姉ちゃん達と同じく、花陽さんも入ってくると真っ先に色紙の変化に気づいて――ことりさんと優しく微笑みを交わしていたのだった。

「……さてと?」

 花陽さんがいつものお誕生日席に座り、そう切り出すと――全員が思い思いの行動を止めて、真剣な表情で花陽さんの方へと向き直る。
 私達1年生も、緊張の面持(おもも)ちで花陽さんの言葉を待っていた。
 いよいよ、今日の話し合いの議題が発表されるんだ。
 そんな風に思っていると――

「まずは、穂乃果ちゃんより生徒会からのお話があります」
「……えっとね? とりあえず、新入生歓迎会の部活説明――に関しては、花陽ちゃんが出席することになっているんだけどね? 歓迎会の後でライブが出来れば? と思うんだけど……どうかな?」

 花陽さんからお姉ちゃんへと話が振られていた。するとお姉ちゃんは全員に向かい、こんな提案をしたのだった。
 新入生歓迎会の後のライブ――
 それは去年、お姉ちゃん達がファーストライブを(おこな)った日。
 本当の意味(・・・・・)でのお姉ちゃん達のスタートになった日だ。
 去年の場合は自分達(お姉ちゃん達)が絵里さん達の在籍(ざいせき)をしていた頃の生徒会に申請書(しんせいしょ)を提出していたんだけどね?
 今年の生徒会は自分達が運営しているから、講堂の使用状況は把握出来ているんだよね。
 今のところ、誰からも使用申請が出ていない――ううん、きっと全員が願望を抱いているからなんだと思う。お姉ちゃん達にライブをやってほしいって!
 だから使用申請を出していないのかも知れない。まぁ、単純にその時間に講堂を使える(・・・)活動がないからだとは思うんだけどね?
 そんな状況だから自分達がライブが出来ると判断して、全員に提案をしたのだろう。
 と言うより? この話って生徒会関係あるのかなぁ?
 どっちかと言えばアイドル研究部の話のような――ま、まぁ、生徒会からの要望ってことなのかも知れないけどね?

「凛は、やりたいニャ!」
「……そうね? 新しく6人で活動するって決めたんだし、早いうちにライブをするべきなのかもね?」
「もちろん、私も賛成(さんせい)だよ?」

 凛さんと真姫さんと花陽さんは、お姉ちゃんの提案に笑顔で賛同していた。
 まぁ、海未さんとことりさんは賛同(許可)しているから、お姉ちゃんも花陽さん達に提案(・・)したんだろうし。
 うん。話を聞いても何も驚いていなかったからね、海未さんが。
 とりあえず、全員一致でお姉ちゃん達のライブは決まった訳だ。
 久しぶりのお姉ちゃん達のライブ――たぶん私達はお手伝い(裏方仕事)が忙しいだろうけどね? 舞台袖で見れると良いな?
 そんなことを考えていた私の耳に――

「それで、雪穂達はどうかな?」
「……何が?」

 突然、お姉ちゃんがそんなことを訊ねてきたのだった。
 いや、話の流れ的に私達のライブって話なんだってわかるよ? 今、考えれば!
 だけど、あの時は全然そんなことを考えている訳ないじゃん!
 確かに? 去年のお姉ちゃん達は歓迎会の後にライブをやったよ?
 でも、それは廃校を阻止する(・・・・・・・)為の一環(いっかん)だった訳だし――そうしなければダメだったからなんだもん。
 だけど私と亜里沙と涼風――今年の新入部員には、そんな大義名分(たいぎめいぶん)は存在しない。
 まして、お姉ちゃん達がライブをするのだ。
 想像するだけでも、講堂を埋め尽くす――色とりどりの光の星(サイリウム)脳裏(のうり)に映し出されるほどの、満員を約束されているお姉ちゃん達のライブ。
 そんなステージに私達が一緒に上がるなんて、ねぇ?
 まだまだ、そんな自信も度胸(どきょう)も持ち合わせてはいないから!
 だから、まさか私達もライブをするなんて思っていなかったんだよ。隣に座る亜里沙と涼風も、私と同じような表情でお姉ちゃん達を見ていた。
 きっと、私と同じで――ライブをするなんて思っていないのだと感じていたのだった。

「ライブに決まっているじゃん!」

 まぁ、そうなんだけどね? お姉ちゃんが笑いながら答えていた。
 私達3人は無言で顔を見合(みあ)わせる。もちろん、私達3人だってライブはやりたいんだけどね?
 でも、さっき書いたように自信も度胸もないから――同じような困惑の表情を突き合わせていたのだった。
 そんな3人を見ながら――

「あのね? ……確かに、初めてのライブって緊張するだろうし……怖いかも知れないよね? でも……3人にもあのステージ(ライブステージ)に立って欲しいって思うんだ……だって、スクールアイドルを目指しているんでしょ? それなら……スポットライトの下で、お客さんの笑顔の前で歌う喜びを早く味わって欲しいんだよね?」
「凛も、そう思うニャー!」
「……私も花陽の意見に賛成ね? 確かに怖いかも知れないけれど、終わった後には良い経験になるんだから。どの道いつかは通る道なら、早い方が良いでしょ?」
「凛も、そう思うニャー!」
「……。……貴方達のライブの成功を祈って、凛はライブ終了まで大好きなラーメンを断つ(・・・・・・・)そうよ?」
「凛も、そう思……わないニャーーーーーー! ちょっと、真姫ちゃん何を言っているニャ!」
「――それはコッチの台詞よっ! なんで自分の意見を言わないのよっ!」
「えっ? ……い、いや、凛は……2人の意見に……賛同したから……」
「……ふーっ。まぁ、良いけど?」

 花陽さんが優しく声をかけてくれていた。そんな花陽さんの意見に賛同する凛さん。
 続けて、真姫さんも優しく声をかけてくれていた。そんな真姫さんの意見に賛同する凛さん?
 そんな凛さんを横目に(むずか)しい顔をしながら見ていた真姫さんは、突然凛さんの麺断(めんだ)ち宣言をする。
 真姫さんの意見に賛同しようとして、(すんで)のところで思いとどまった凛さんは否定をすると――言わせようとした真姫さんに食ってかかっていた。
 ところが真姫さんは正論を投げかける。
 正論を投げかけられた凛さんは、いとも簡単に萎縮(いしゅく)して、弱気な声で反論していた。そんな凛さんを見て、一呼吸をついて苦笑いを浮かべながら、話を止める真姫さんなのだった。
 私達は花陽さん達を見つめながら微笑みを浮かべていた。そして、3人で顔を見合わせ、無言で笑顔を交わすと――

「「「……私達もライブがやりたいです!」」」

 声を合わせて答えるのだった。
 そんな私達を優しく見つめているお姉ちゃん達。そして――

「……あっ、でも……そのライブって、時間をずらせますか?」
「……えっ!?」

 私はお姉ちゃん達にライブの時間をずらせるのかを聞いてみたのだった。
 当然、お姉ちゃん達と、亜里沙と涼風は驚いて私の顔を見つめた。
 
「……ずらすって、具体的には?」
「私達のライブを歓迎会直後に……お姉ちゃん達のライブを私達のライブの30分後とかって無理ですか?」

 私の時間をずらせるのか(・・・・・・・・・)と言う問いに、ことりさんが具体案を聞いてくる。
 だから私は具体的に、私達のライブとお姉ちゃん達のライブの間隔(かんかく)を30分ほど空けてほしいと答える。
 まぁ、私達のライブと言っても1曲披露する程度で終わる――いや、それ以上は体力的に無理だしね?
 それから30分後にライブを開始しても、お姉ちゃん達だって数曲のライブだろうし? 放課後とは言え、時間的に大丈夫だろうって考えていた。

「えっ! ――っでも、それじゃ――ぁっ!? …………」
「……それで……良いのですか?」
「はい! …………」
「「…………」」
「……お願いします!」
「……わかりました。それでは、決定ですね?」
「「「「「…………」」」」」

 私の具体案を聞いたお姉ちゃんは、私の言ったことの意味(・・)に気づいて心配そうな――だけど驚きの表情で椅子から立ち上がりながら、前のめりになって声をかけようとしていた。
 だけど言い切る前に海未さんの――瞳を固く閉じた難しい顔で()り出された、無言で目の前に出された彼女の手のひらの前に、()()りながら言葉を失っていた。
 お姉ちゃんの言葉が止まったのを確認すると、海未さんは瞳を開いてジッとコッチを見ながら言葉の持つ意味の重さを感じさせる――そんな声色で私に訊ねるのだった。
 そんな海未さんと同じような表情で私を見つめるお姉ちゃん達。
 きっと海未さんも――ううん、たぶん全員が理解していたんだと思う。そう、私の言葉の心意を。
 歓迎会直後のライブ――その時間は校庭で部活の勧誘(・・・・)が行われる時間だ。説明会で話を聞いて、興味がある部活の先輩から、詳しい話を聞いたり簡単な体験などが出来る時間。
 そこで部活の活動内容などを知って興味を持てた、入りたいと思った部への入部届を後日提出する――部活を決める上での大事な時間なのだった。
 いくら私でも、そんな時間にライブを開始しても人が集まらないことくらい知っている。
 
 そして、お姉ちゃん達とのライブに間隔を空けること。
 それはすなわち――
 お姉ちゃん達目当て(・・・)でライブに来るお客さんを望めないと言うこと。
 確かに、一緒にライブをすれば私達のことを沢山(たくさん)のお客さんが見てくれるだろう。
 でもそれは私達を見に来たのではない。あくまでも、お姉ちゃん達を見に来たついで(・・・)なのだと思う。
 もちろん応援はしてくれるだろう。キッカケにしてくれる人もいるかも知れない。
 だけど私はそれで満足をしたくなかったのだった。
 
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