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能力者たちが事件を起こしたり解決したりするようです

作者:平社員
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第十話 大海を制すもの

 
前書き
ドーモ、ドクシャ=サン、サクシャデス 

 
少し開けた裏路地、百数メートルほど進めば大通りに出るような場所だ

そこに二人の男が居る

一人...星雅は眺め、もう一人の蒼い髪の男、建速須佐之男(たけはやすさのお)は攻撃を受けている
星雅が攻撃しているのではない、目に見えない何者かから攻撃を受けそれを刃で受け止め火花を散らしているのだ

そんな単調な攻防が数秒ほど続く

瞬間、数メートルほど離れた場所に濃い灰色の髪の二本のナイフを持った男が現れる・・・速水 風真である

「いやーすごいな、初速とはいえここまで避けきるとは」

「貴様、なかなかの手練だな...神速の異能者は伊達ではないという事か」

速水の表情は依然として余裕を保っている
だがそれは須佐之男も同じであった

「ククク...これでまだ操血鬼も残しているとは...疼く、疼くぞ!」

辺りの水が呼応するかのように大きく弾ける

「おーおー、俺は前菜扱いかよ...その余裕の表情も数秒で潰してやるよ、井の中の蛙ちゃん?」

フッと風が吹きそれと同時に速水が消える

瞬間速水は須佐之男の背後に姿を現す、それと同時に須佐之男の体ごく小さな、だが多くの切り傷ができる

「もはや捉えきれんな...」

頬に出来た切り傷からすうっと一筋の血が流れる、それを指先で拭いながら

「ククククク、クヒハハハハハハハ!!!!」

狂気と歓喜を含んだ笑いを上げる

「良い、良い良い良い良いぞぉぉぉぉぉ、もっと俺を楽しませろ、もっと俺を喜ばせろ!!!!!」

地面に大太刀を突き刺し地面を抉り取るようにそのまま大太刀を振り上げる、アスファルトが散弾のように弾け、周囲の水道パイプが抉り取られ水が溢れ出す、ボコりとへこんだ地面に水が溜まってゆく

「なんつー馬鹿力だよ、その武器どうなってんだよ」

速水は顔をしかめ数歩後ろに下がる

「遅いぞ、神速の異能者よ!」

瞬間、須佐之男は距離を詰め、大太刀を振り下ろす
それは空を切り、速水はもう一歩後ろに下がる
大太刀は地面に溜まった水を巻き上げ、同時に石の礫を飛ばす

速水はナイフで石を弾き、去なす

「お前も充分遅いけどな!」

瞬間、速水の腕に激痛が走り、水と血が入り混じったものが袖を濡らす

「貴様は視界が狭いな、落ち着きもない、だからこうなるのだ、阿呆め」

「ああ、そういうことね、もはやここはお前のホームグラウンドって事か、結構...(こす)いねぇ」

よく見れば、速水の服にはほんの少し濡れている

「水しぶきで濡らして水分を一部に集めて切りつけんのか」

「ふむ...なかなかに鋭いな、流石は歴戦の戦士という訳か...」

不敵に笑みを浮かべながら大太刀を横に一薙ぎする、建物の鉄筋コンクリートや既に穴だらけのパイプなどを抉りとる、パイプからはより一層水が溢れ当たりに水が溜まっていく

「時間をかけるとやべーな、速攻でぶっ(とば)す」

速水は軽く踏み込みまたしても消える
それと同時に須佐之男が大太刀で水を巻き上げ壁を作る
瞬間、須佐之男の背後からうなじに向かって速水がナイフを突き出す
須佐之男は上半身を軽く回し、致命傷を回避したが、右肩の肉を抉り鎖骨を切断される、それと同時に大太刀で突きを放つ、
返す刀が速水の左前腕部(ひだりぜんわんぶ)を捉え、橈骨と尺骨の間を貫く

「ぐおー...くっそいてぇな、穴空いちまったじゃねぇかよ!!」

そう言いながら空いた穴から覗き込む

「おあいこだろう...?」

二人共息を切らしながら傷口を抑え込む

先に動き出すのは須佐之男だった、

「その程度でこの闘いは止まらんぞ!!」

グンと間合いを詰め突きを放つ
速水は首を傾けそれを間一髪で避けるが、大太刀にまとわりついている水が頬を浅く切り裂く

「いてぇんだよ!!」

片方のナイフを投擲し、後ろに飛び退く
ナイフは須佐之男の右手の甲の突き刺さる


─────────────────────────



速水と須佐之男が激しく戦う中、星雅は退屈と思いながらゆったりと傍観していた、


が、その退屈は背後からの押し潰されそうなほどの殺気によって打ち砕かれる

「この戦いを今すぐ辞めさせていただけませんか...?」

その殺気とは裏腹に背後に立って星雅の首筋に得物を...生きた毒蛇の牙を突き付けているのは膝元まで届くほど長い美しい黒髪の、深緑の着物を着ている女性、少女だった

「おっと、その生き物は俺には愚策だぞ?」

星雅は振り向きもせず挑発的に微笑を浮かべる

「あまり荒事は好きでは無いのです」

そう言う少女の腕は怒り混じりに小刻みに震えている
着物の袖から伸びている毒蛇の牙が星雅の首筋に触れ一筋の血が流れる

「このまま毒を流し込むこともできるのですよ?」

「人の話を聞けよ、だから『(その)刃物(ふたつ)』は愚策だって」

「毒で悶えて死になさい!」

そのまま蛇の顎に力が入り、当たっていただけの牙が首筋に喰い込み
血液が溢れる

「人の話を聞けっつってんだろうがよ」

そのまま流れ出す血が毒を押し出しそのまま蛇の頭を押し潰す
そしてそのまま紐のように伸び、腕を絡めとる
赤い紐が首筋まで伸び、先端が鋭くなり太い針のように鈍く光る

「この程度で私が縛られるとでも?」

瞬間、星雅の足首に激痛が走る

「っ...!」

足元を見ると、2mほどある大蛇が3匹足首を噛み付いている
大蛇の顎の付け根を突き刺し無理やり足から引き剥がす

「気が緩むと血液による拘束も緩むのですね」

「いってぇんだよ!!」

叫びながら大蛇をぶつ切りにするように切り裂く
切られ息絶えた蛇は煙のように消える、そして蛇の死骸があった場所には黒く美しい髪の毛が残っていた

「髪の毛が蛇にでもなんのか...?」

「正解でもあり間違いでもあります、私は優しいので私の異能を教えて差し上げます」

そう言うと裾から何匹もの蛇が湧いて出てくる

「私の異能は自身の肉体の一部を代償にその代償と同価値の蛇を生み出すのです」

そう言いながら自らの手の爪をすべて引き剥がす
剥がれた爪と傷口から溢れた血液が一つにまとまり、先程よりも大きな20mもある巨大な蛇のバケモノが産まれる

「そんなのもありかよ...」

「須佐之男様、退却の時間です」

そう言いながら少女は須佐之男の方へ駆け寄っていく

────────────────────────

あたりは既に日が落ち元々照明のなく薄暗い裏路地は闇に染まっていた

隣で星雅と少女が小競り合いをしているが、この2人には目にも入っている様子はなかった
須佐之男の胸には大きな切り傷ができ、速水の脇腹には深々と刺し傷が出来ていた

「ふむ、貴様もなかなかに強いな、神速の」

「そりゃどーもな、そろそろスタミナ切れしそうなんだ、とっとと終わらせるか、それともお互いに矛を収めるか」

先程までの殺し合いから一転、2人は呆れ返るほどに冷静だった

「こうも邪魔をされては興が削がれる...全く余計な事を」

と、悪態をつきながらもほんの少し頬を緩める
須佐之男は既に少女と星雅の事に気付き、遅まきながら速水も気が付いた

「お仲間も来たみたいだしさ、もう今日は帰ろうや、良い子は帰って晩飯を食う時間だぜ?」

そう言いながら速水は背を向け、こちらに駆け寄ってきた少女と入れ違う

「ふふふ、そうだな、神速の異能者よ、今日はとても楽しませてもらったぞ、貴様の評価今一度改めさせてもらう」

そう言いながら少女を抱え背を向ける

「櫛名よ、そろそろ良い子は飯の時間だそうだ、帰ろう」

先程までの荒々しい気迫は既になく
妹を抱きかかえる兄のような優しい声で話しかける

そしてそのまま、櫛名と呼ばれた少女と須佐之男は裏路地の奥の闇へと消えていった


 
 

 
後書き
クシちゃんは萌え袖着物っ娘です、ヤンデレです、一人称はわたくし、です、胸は控えめです(真顔)


あと20mちょっとのバケモノ蛇がどうなったかはまた次回(小声) 
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