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仮面ライダーAP

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第一章 鉄仮面の彦星
  第1話 シェードの残影

 夜の帳が下り、艶やかなネオンが煌めきを放つ夜の東京。その一角にある小さなバーで――とある一人の若いバーテンダーが、カウンターの上に設置されたテレビを眺めていた。

『相次ぐ、シェードの改造人間による襲撃事件は留まることを知りません。警察も自衛隊も、この神出鬼没の怪人達に対抗しうる術を見出せていない状況です』
『シェードと交戦している謎のヒーロー「仮面ライダー」を目撃した――という情報もありますが、依然としてその実態は明確にはされておりません』
『そもそも、仮面ライダーには本当に正義があるのでしょうか。被験者保護施設の関係者や人権団体からは、改造人間の生存権を著しく侵害する凶悪な連続殺人犯と、糾弾する声も上がっています』

 城南大学二年生、南雲(なぐも)サダト。20歳を迎えたばかりの彼は、テレビで絶えず報道されている物騒なニュースに、居心地の悪さを覚えていた。
 というのも、報道された事件現場がこの近くだからだ。

「……たくよぉ! 近頃の世の中は物騒過ぎらァな! ついこないだまで対テロ組織だなんだと担がれてたシェードが、今じゃ悪の秘密結社! 連中にいつ襲われるかわからねぇってんで、今じゃ若いねーちゃんも夜道をうろつかねぇ! 昔は会社帰りにナンパし放題だったのによォ!」
「お客さん、飲み過ぎですよ。もう直ぐ店じまいですし……」
「るせぇクソガキ! 誰のおかげでこのガラガラのオンボロバーに金が落ちてると思ってんだ、えぇ!?」

 4、50代のリーマンは飲んだくれながらサダトに八つ当たりし、赤い顔のままふらついていた。

「お客様。あまり飲み過ぎてはお身体に障りますよ。今日は、娘さんの誕生日でしょう? 早く帰って、安心させてあげてください」
「……ちっ、わぁったよ」

 だが、サダトの後ろから現れた白髪の老紳士に諭されると、罰が悪そうに立ち上がる。彼はそのまま会計を済ませると、よろめきながら店を出てしまった。

「すみません、オーナー……」
「いいんだ、サダト君。君が対応に困るのも無理は無い。何せ彼は、7年前のテレビ局占拠事件で、奥様をシェードに殺されているのだから……」
「……」
「――ゆえに今は、一人娘だけが拠り所なのだ。それでも、どうしても奥様のことを忘れられないでいる……。だから酒に溺れることで、現実から逃れて安らぎを得たいのだよ。……私に免じて、許してあげて欲しい」
「……別に。怒ってなんかいません。ただ、やるせないだけなんです」

 何もできないもどかしさ。客足の途絶えたこの小さなバーに、その感情だけが残されていた。

 ◆

 ネオンの光も届かない、穏やかな住宅街。輝きを失った夜空は、その闇を以てこの空を覆っている。

(シェード、か……)

 バイトから上がり、赤いレーサーバイクで帰路についていたサダトは、その中にある下宿先を目指して夜道を走っていた。

 馴染みの公園はすっかり闇夜に包まれ、設置されている照明だけが、そこを照らしていた。

 ――そこを越えた先にある曲がり角まで、いつものように向かった時だった。

(なっ……んだ!)

 ドタドタと深夜に忙しく響く足音。その音源に目を向けた先には――フードを深く被った厚着の少女を、迷彩服を纏う数人の軍人達が追いかけている光景があった。

 非日常極まりないその絵面の異常さだけに気を取られそうだったが――サダトは少女を追う軍人達の装備に目を移す。その見た目には、見覚えがあった。

(な、なんでシェードがこんなところに!)

 脳がそれを理解した瞬間、サダトは咄嗟に一刻も早く逃げようと、アクセルを踏み込もうとする――が。

「……くッ!」

 どうしても、それはできなかった。女の子を見捨てては逃げられない、というなけなしの理性が、恐怖という絶対的な本能に胃を唱えたのだ。

 彼はバイクをターンさせると、行き慣れた道を通じて軍人達の背後に回る。

「ぐわぁあ!?」
「く、邪魔者か!」

 そして後方から容赦無く、バイクによる体当たりを敢行した。だが、シェードの手先ともなればやはり改造人間であることは間違いないらしく――バイクの追突で吹き飛ばされたはずの彼らは、憤怒の表情で立ち上がってくる。

(化け物かこいつら! ――ちくしょうッ!)

 だが――サダトは恐れを振り切り、赤茶色のレザージャケットを翻してバイクから飛び降りる。そして、襲いくるシェードの刺客に強烈な突きや上段回し蹴り、裏拳を見舞った。
 それでダメージを受けてはいなかったが、予想外の反撃を受けた彼らは、警戒した表情でサダトを睨み付けた。

「貴様……何者だ」
「……少林寺拳法四段、テコンドー五段。なんだけど、まるで効いちゃいない……よな」

 手応えは確かにあった。普通の人間なら、間違いなく一発で病院送りにできるほどには。しかしシェードの軍人達には、まるで効き目がない。却って警戒させて、隙を狙えなくなってしまっていた。

「……乗って!」
「あ、あなたは……」
「話は後だ、急いで!」

 こんな怪物相手では、武闘派バーテンダーであるサダトでもどうにもならない。彼は足早にバイクに跨るとタンデムシートに少女を乗せ、緊急発進する。
 無論、シェードの軍人達は阻止しようとするのだが――それよりも先に体当たりを再び食らわされ、転倒させられたのだった。

 そして彼らがもう一度立ち上がる頃には――二人の男女を乗せたバイクは、夜の闇に消え去っていた。

「あの男……」
「……ドゥルジ様に報告しろ。新しい『素体』になり得る」

 
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