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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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34部分:第三話 ローマへその六


第三話 ローマへその六

「しかし。我々は彼等に対しても勝たなければならない」
「そうだ。だがまずは八大公だ」
 サガはまた言った。
「頼むぞ」
「わかりました」
 八人を代表してムウが応えた。彼等は宴を終えるとすぐにローマに向かうのだった。
 ローマ。古の都だ。狼に育てられたロムルスとレムスによって築かれたこの街は三度世界を征したと言われている。
 一度は力で。一度は法で。そして最後は心で。とりわけ最後の信仰では世界の多くを支配し今に至る。そのローマの郊外の荒野に今無数の悪魔達がいた。
 荒野には何もない。ただ荒れ果てた草原と岩があるだけだ。そして遠くには繁栄するローマの街並が見える。インプ達はそのローマを見て邪悪と言える笑みを浮かべているのだ。
「よし、今からだな」
「ああ、ローマを死の荒野にしてやるんだ」
 彼等は今からローマを侵略するつもりだった。そのうえで街にいる全ての者達を虐殺しようと考えていたのだ。それがアーレスの戦いだった。
「このローマを死の荒野に変える」
「さて、やってやるか」
 彼等が前に出ようとしたその時だった。彼等に声をかける者がいた。
「何処に行くつもりだ?」
「ああ?決まってるだろローマだ」
 インプの一人がその声に応える。
「ローマを制圧してそこにいる奴等をアーレス様の捧げものにするのよ」
「その血をな」
「そうか。ならば俺もここを動くわけにはいかない」
「ああっ!?」
「手前何だ」
 彼等が声の方を振り向くと。そこにいたのは。
「なっ、手前は!」
「ま、まさか!」
 そこにいたのは黄金の聖衣に白いマントを羽織った戦士だった。精悍な顔でインプ達を見据えている。その小宇宙は誇り高く、かつ力に満ちたものだった。
「レ、レオのアイオリア!」
「こんなところで!」
「ここで俺に会ったのが運の尽きだったな」
 アイオリアは構えをせず仁王立ちで彼等に対して告げる。
「だが。退くのなら何もしない」
「何もだと」
「何を考えてやがる手前は」
「俺の拳は俺の前から向かって来る者に対してだけ向けられるもの」
 アイオリアは彼等に対して言うのだった。
「だからだ。命が惜しければ去れ」
「馬鹿か手前は!」
「俺達はアーレス様の狂闘士!」
 彼等はアイオリアの言葉に激昂し口々に叫ぶ。
「撤退はないんだよ!」
「特にアテナの聖闘士にな!」
 そう叫びながらアイオリアに向かう。扇状に取り囲みそこから一斉に襲い掛かる。
「死ねぇーーーーーーーっ!」
「ここでな!」
「愚かな」
 アイオリアは彼等の一斉攻撃を前にしても動じてはいない。平然としたまま右手を肩の高さに出し。そして。
「受けてみよ、このアイオリアの拳」
「へっ、聖闘士の拳なんてよ!」
「痛くとも何ともねえんだよ!」
「ならば痛いかどうかは受けてから知れ」
 彼等の言葉を受けても動じてはいない。
「この拳をな。ライトニングボルト!」
 声と共に右手から無数の光が放たれた。その光はそれぞれ複雑な動きを示しインプ達を切り裂いた。それと共に彼等を吹き飛ばしてしまった。
「うわあああああーーーーーーーーっ!!」 
 インプ達はその戦衣を砕かれつつ吹き飛び地に叩き付けられた。光が消えた後に戦場に残っているのはアイオリアだけだった。
「だから言ったのだ」
 アイオリアは倒れ伏す彼等を前に右手を下ろし目を閉じて述べるのだった。
「このライトニングボルトを受けて立っていられる者なぞいはしないのだ」
「確かにな」
 ここでまた声がした。何者かの。
「レオのアイオリア。黄金聖闘士の名に恥じない強さだ」
「あれだけの数のインプ達を倒すとはな」
 しかも声は一つではなかった。複数だった。
「流石だと褒めておこう」
「しかしだ」
 荒れ果てた荒野に。彼等は姿を現わした。
「それが果たして我等に通用するか」
「是非見せてもらいたいものだ」
「貴様等は」
 アイオリアは彼等の姿を認めて今度は身構えた。身構えずにはいられなかったのだ。
「聞くまでもないと思うが、それは」
「どうかな」
「確かに」
 アイオリアも彼の言葉に頷いた。
「貴様等は」
「そう、我等こそ」
「アーレス様の戦士である狂闘士達の頂点に立つ」
 彼等は口々に言う。
「八大公よ」
 八人の男達がいた。恐ろしいまでの禍々しい小宇宙を発しながら。今アイオリアの前に立っているのだった。


第三話   完


                   2008・4・17
 
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