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歌集「春雪花」

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 いつか来むと

  言い期し君ぞ

    待つとても

 あてもなかりき

     秋の夕暮れ



 その内行くから…そう彼は口約束をしたけれど、どれだけ待ったとしても来ないだろう…。

 私との口約束なぞ、どれだけの価値がある?
 通りすがりの脇役に…大切な約束なぞしはしないのが常識と言うものではないか…。


 どこへ行くでもない時…ただ、秋の寂しげな夕暮れだけがあるだけ…。



 溜め息を

  つくや山際

    白みたる

 明けにしけふも

   君ぞなかりき



 仕事も一段落し、ふと外を見ればまだ闇が覆っていた。
 秋も深まり、徐々に夜明けも遅くなって行くのだと…何だか寂しくなった。

 外へ出てみれば、薄雲の影から星が見え隠れし…まるで彼の様だと溜め息をついた…。

 そうして遠くの山を眺めれば…少しずつ朝の光が洩れ出していた…。


 あぁ…夜が明ける…。

 彼のいない…今日がまた、始まるのだ…。




 
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