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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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第百三一幕 「全てはヤツの手の内に」

 
 どうも、数か月ぶりっぽい雰囲気を醸し出しつつ実は物語内では数日しか経っていない佐藤です。
 この数日間私が何をしていたかというと……みんな聞いても怒らないでね?


 海で遊んだりベル君なでたり森林浴したりベル君の世話焼いたり美味しいもの沢山食べたりベル君と寝たりしてました☆

 
 ……い、いや!目的忘れたりしてないよ!?ただこっちで佐藤稔になってから初めての海外旅行だし!?イタリア料理って日本人の舌に凄く合うから食べる物食べる物が全部美味しいし!?ベル君可愛いし!?何よりこの町って海とか綺麗で観光収入メインの町づくりだから普通に過ごせちゃうんだって!!

 実際、ベル君護衛3人衆も良くしてくれたし、ベル君の伯父さんも強面ながらすごい優しくしてくれてるし。学園で色々と面倒を見てくれてありがとうって頭下げてきたからこっちも慌ててゆこちー式土下座(第六七幕参照)をしかけちゃったよ。ギリギリで過ちに気付いたけど。

 ベル君は一見して故郷を満喫しているように見えるが、時折周囲の目線をやけに気にしたり町の一方向を複雑な表情で見たり警察官に異様に怯えたりとすこし情緒不安定な部分がある。こういった行動はこの町に来てからだし、ほぼ間違いなくこの行動はベル君の故郷で起きた何かしらの影響なのだろう。

 ………この何日かでこの町の構造は大体理解した。ベル君が警戒してる方向も割り出した。いい加減ベル君の口の周りについたトマトソースをぺろっと舐める仕事は終わらせて動くべき時が来たか。IS学園ベル君直属護衛兼世話係長、佐藤!!推して参る!!

「アングロちゃーん、わたし今日はちょっと一人で町を回るからベル君のお世話は任せたよー!」
「ほう、やっと自らがベル坊の愛のパートナーとして許されざるほどに劣っていることを自覚したか!なんならそのままIS学園に戻ったらいいと思うぞ!ベル坊の世話はこれから一生私が焼くのだからな!!ふふふ………アハハハ…………!!ハッ!!こうしていられんベル坊の世話を焼くために体を清めなければ!!」

 そう叫んでアングロちゃんはシャワールームに走っていった。いつもより気合が入っているのは結構だが、友達なんだから幾らなんでもそこまで気を使わなくとも……。
 安定のアングロちゃんであるが、私がベル君の世話を焼きすぎたせいで仕事が無くなって禁断症状に見舞われているせいか目が血走って口から涎が垂れている。控えめに見てもヤク中にしか見えない。そのせいで余計にベル君に避けられている気がしないでもないのでちょっとフォローしてあげよう。いやぁ私ってなんて優しいんだろう!

 え?そもそも私がベル君独占してんのが原因?
 ………おら、佐藤さん優しいって言ってみ(低音)。

 とかやっているとベル君邸のリビングに我らが病弱もやしっ子のベル君がちょっとよたよたした歩き方で訪れる。ISが使えるようになってから足取りは大分安定していたのだが、やっぱり寝起きは辛いらしい。今日はコーラがベル君を起こす係だったのだが、寝ぐせだらけの髪の毛が微妙に全部梳かしきれていないようだ。しょうがない、あの寝ぐせのしつこさときたら何度整髪剤を使おうかと思ったほどなのだ。きっとベル君が髪を伸ばしたら自分の寝ぐせに体を縛られて起きられなくなるに違いない。
 ロン毛の寝ぐせベル君か………全然アリだね。むしろ寝ぐせのままの方がかわい……って違う違う、そうじゃない。

「ベル君、わたし今日はお外行って町の風景を見てくるから、今日はアングロちゃんのお世話になってね?」
「やだ……最近のアングロは怖いし。それだったらいっそ学園に戻る」
「こらこら、ワガママ言わないの。………とはいえ一対一で不安があるのも事実。ここはIS学園の大軍師ことミノリ参謀総長の策を授けようではないか!」

 大丈夫、ベル君は安心して行動が出来、なおかつ今のアングロちゃんを極めて自然に封殺できる最終奥義があるのだ。今日から私を「兵法家・四方田稔(しほうでんみのりん)」と呼び崇め奉るがいい!………い、いや。やっぱり普通に佐藤稔でいいです。そうやって調子に乗るとまた日本の掲示板であることないこと書かれまくるし、本当に軍師扱いされそうでヤだから(※手遅れです)。


 ――数分後。


「ベル坊!今日は私が存分に面倒を………べ、ベル坊?」

 すすーと静かにベルの部屋の扉をオープンしたアングロは、呆気にとられた。何故かベルの部屋に妙にいい香りが漂っており、その中心にベルがいるのだ。しかもそろそろ朝食(皆は済ませている。朝の遅いベルだけ後からなのだ)で寝ぐせも梳かされているのにベルはパジャマを着て寝る態勢に入っていた。

「アングロ」
「な、なんだベル坊改まって。悩みか?欲しいものがあるのか?私のお小遣いなら2万ユーロぐらいまでなら何とか……」
「アングロ」

 そう名前を呼ばれるだけで脳内麻薬がドバドバと溢れ、背筋を不思議な快感が通り抜けていく。
 ベルは自分のベッドに座って、ぽんぽんと横を叩いた。ここに座って、というジェスチャーらしい。

(ベル坊が私に、私にこっちに来てと……ああ、ベル坊が私を求めているんだぁ……頭がふわふわとする……)

 操られるようにベッドに座ったアングロは大分イッちゃっていたが、そんな彼女の脳みそは更に蕩けてしまう事となる。なんと、ベルの細い腕がアングロの肩を掴み、そのままベッドへと押し倒したのだ。ほんの非力な力だが、アングロはされるがままに背中をベルのベッドに倒した。

(なななななっ!?べ、ベル坊ぉぉ!?だだだ大胆だぞベル坊!!そんな、こんな、ベル坊の匂いがしみ込んだベッドに私を押し倒すなんてぇぇぇ!?なんなんだ!サトーと一緒に行動することで逆に私の魅力を再確認してこれからヴァージンロードルートに乗ってしまうのかそうなのか!?い、いかん堪えるんだ………式にたどり着くまで鼻血は出すんじゃない!いや式で鼻血も駄目だけどっ!!)

 この残念美人、既に思考回路が遠く離れた世界に羽ばたいてしまっている。しかしそんな残念美人にベルはさらに畳みかけるように隣に寄り添い、耳元でその美しい声の囁きを届ける。

「最近、疲れてるんじゃない……?目もちょっと充血してるし、僕はアングロが倒れてしまわないか心配です」
「ああ、ああ……ちょっ、ベル坊……耳元で囁かれるとゾクゾクするっ……」
「寒気もあるんだ。やっぱり久しぶりに帰ってきた僕のせいで気を使って疲れてるんだね」
「うあ……いや、そうじゃな………」
「………ふぅっ」
「はひゃあ!?」

 突然耳に小さく息を吹きかけられたアングロは普段なら絶対に上げないほど情けない声を上げた。しかしこれ、実際問題やられたらかなり来るだろう。なんせベルは間違いなく美少年で、しかもその美しさと子供のかわいらしさが同梱した声はとても耳にくすぐったい。そんな少年に耳元に息を吹きかけられたりしたら、そういうのが好きな人にとっては抗いがたいゾクゾクを感じる筈だ。
 どんどんベルのペースに持ち込まれ、アングロは完全に主導権を失った。

「寝よう、アングロ。寝たらきっと元気になる………」
「……うん」
「寝てるアングロの顔が見たいな」
「……はい」
「僕が眠れるまで手を握っててあげる」
「………おねがいしまふ」

 得も言われぬ幸福感とぼうっとした心地よい熱に脳髄を溶かされ、アングロはベルの言われるがままにベッドに潜り込み、その幸福感に支配されながら深い眠りに落ちた。ベルの小さな手を優しく握りしめながら……。

 1分後、アングロが幸せそうな顔で寝たのを確認したベルはその手をあっさり放してもそもそと着替え始めた。動きは遅いが自分で着替えるぐらいのことは出来る。後ろで幸せそうに寝息を立てるアングロをちらりと見たベルは、棚から一冊の本を取り出してそのタイトルを指でなぞる。

「ミノリのくれた『ジャマダイ式洗脳法』……本当に上手くいくとは。というかミノリ、こんな胡散臭い代物を一体どこで手に入れたの?」

 ――そうです全てはあの佐藤さんの策略だったのです!!

 この本と部屋のお香はかつてミサイルハッピーになっていたシャルが使っていたあの洗脳本とお香である。一時は千冬に没収されていたものだが、佐藤さんはこれを教務補助生の立場を利用して(というかそろそろシャルに返してよかろうと説得した結果、判断を任せられた)手に入れていたのだ。
 きたない流石佐藤さんきたない。しかし実際アングロは精神的に疲れていたため休息を取らせるというのも嘘ではない。それに結果的にベルはこの一日を自由に使える訳だし、お香の効果で彼女はあと5時間は起きないだろう。そして佐藤さんはアングロに何の恨みも買わず、ベルの願いも叶えた上で悠々自適に家を後にしたのだ。

 そんな様子を見て、計画失敗時の保険として部屋を監視していたアラスとコーラは戦慄する。

「………恐るべしサトーさん。まさかベルを介してアングロを手玉に取るとは。IS学園の大軍師を名乗るだけありますね。あれは時代が時代ならかなりの女狐ですよ?」
「前々から思ってたが、やっぱ唯者じゃねーなサトーさんはよぉ……」

 これ以上適切な説明はないだろうが……イタリアに来ても佐藤さんは佐藤さんであった。



 = =



 凰鈴音という少女は、年の割にはしっかりしているがちょっとだけ浅慮なところがある。

 例えば一夏が絡むとその特徴は顕著になるし、意外と寂しがり屋なので友達が絡むと盲目になったりもする。そして彼女の両親はそんな特性を理解したうえで丁度いい感じに誘導するのに長けていた。

 まぁつまり、あれだ。

「もう誤魔化されないんだからね!!きっっっっちり真実を語ってもらうわよ、二人とも!!」
(ぐっ、もう少し誤魔化せると思ったのに……)
(あと2日くらい粘ったらそのまま日本に再出発すると思ってたのに)
「な・に・を・残念そうな顔でヒソヒソ話してんのよぉぉッ!!」

 鈴は、両親のちょっと無理があるぐらい露骨な思考誘導に見事に引っかかっていることを帰国後二日目の夜にようやく気付いたのである。

 以下、実際に起きた信じられない親子間のやり取りである。

 例その1。

「ねぇパパ、ママ。二人って離婚調停したことあ……」
「はい鈴、できたてホカホカの桃饅よ?冷えないうちに食べるのよ~!」
「わっ、久々のママの桃饅!!食べる食べる~!」

 例その2。

「パパ、パパが昔アタシに渡してくれたあのネックレスって一体……」
「お、見てみろ鈴!パンダの赤ちゃんが沢山テレビに映ってるぞ!」
「ほんとだー!パンダの繁殖もだいぶノウハウ溜まってきたのねぇ………」

 例その3。

「ねぇ、二人とも私に何か隠してな………」
「今日の晩御飯は代表候補生補助金で買った天然のフ・カ・ヒ・レ♪」
「てっ、天然んんんんんんッ!?ホント!?ホントに食べられるの!?」

 ……実に露骨なのもそうだが、引っかかってしばらく聞くべきことを忘れた鈴のうっかり加減はどこぞの宝石ばっかり買っている優雅な名家も黙って頷くほどである。きっと13歳でビクトリーなロボットのパイロットにされたどこぞの少年も「ウッソだろお前!」と叫ぶほど、浅慮な鈴は誘導に引っかかりすぎである。挙句、昼寝中の夢の中で『麟王』に「汝、真実を知る為に虚偽を暴くことを望むか?(訳、いい加減騙されてんのに気づけ)」とまで言われてやっと思い至った彼女の人の好さはある意味無限大である。


 しかし、ある種知らないままの方が幸せだったのかもしれない。

 何故なら、その真実とは鈴の華奢な体一つで背負うには余りにも重すぎる真実――「一大劫」を超越して尚受け継がれる過酷な試練の序章だったのだから。
  
 

 
後書き
月一更新すら怪しいとかもうだめですねこれ。
しかし、イタリアルートと中国ルートでシリアス局面に突入する準備が出来ました。
あとはラウラ・シャルの合同ルートとゆこちー漫遊記とジョウさん任務無双と……多すぎる!?考えなしにキャラクターを掘り下げすぎるからこんなことになるのか……!!夏休み終わるまであと何年かかるんだ本当に!?まだ出してないオリキャラや中盤からの敵ボスとかいるのに……。 
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