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Lv.9999億の骸骨(勘違い物)・ω・`)ノ

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Lv24「不死王の世界征服⑦~ドリームランド~」

スターを載せた馬車が目的地へと到着した。
護衛にホテルでの受付の作業をやらせて、一人で大理石製の階段を登る。
階段を何十段も登った先にあるのは、宿泊するだけで莫大な金を必要とするVIPルーム。
扉は高級木材を使ったのか、良い香りする。
部屋の中には、小柄なスターが、十人同時に眠れそうな巨大ベットがあり、触るだけで柔らかい感触が返ってきた。
高そうだ。スターの家にあるベットも高級品だが、それよりも明らかに質が高い。

「これだから……資本主義者が作ったホテルは困るのよ。
豪華すぎて落ち着かないわ」

異郷の地で泊まる。
それだけで胸の中が不安でドキドキだ。しかも、彼氏なし歴40年だ。

「へ、部屋の中に、誰も……いないわよね?」

最高権力者になってから、暗殺の危機を感じて、ストレスが溜まりに溜まっている。
不安を少しでも解消しようと、スターは部屋中を見回った。
無駄に大きくて隠れる場所が多いから、逆にストレスを感じさせる。
不審者と遭遇した時の事を考えて、魔法の杖を取り出し、何時でも攻撃系の魔法を撃てるように備える。

「ベットの下……不審者なし」

埃一つすら落ちていない。この仕事っぷりは褒めるしかない。

「ベランダ……誰もいない」

ベランダの手すりが全く汚れていない。毎日、ピカピカになるまで磨いているのだろうか?
幽霊系アンデットがいたら、どうしよう。そう思いながらも、スターは確認作業を続ける。
幽霊だから、きっと目で見ることはできない。
情報が悪の帝王に筒抜けかもしれない、その可能性を考えるだけで恐怖で涙が出そうだ。

「クローゼットよし。
……ふぅ、きっと誰も居ないわ。
これで安心して眠れるわね……あら?」

スターは、クローゼットの奥の方に、服の森に隠れて、大きな何かがある事に気がついた。
よく見ると、それは大きなクマの抱き枕。
とっても愛らしいデフォルメされた目が印象的だ。触るだけでモフモフしてそうだ。

「これは良いわ。
グッスリ眠れそう……」

早速、他の服をゴミのように掻き分けて、抱き枕を引っ張り出す。
幸い、中に人がいるという展開はなかった。
無駄に大きいベットの上へと熊さんを放り投げ、スターは黒いドレスを脱ぎ捨て、黒いパンツ一枚の格好になった。
どうせ、明日になったら部下が代わりのドレスを届けてくるから、シワシワになっても良い。
お風呂は明日の朝に入ろう。そうしよう。
スターは、抱き枕に抱きついて深い眠りへと就いた。
夢の中なら落ち着ける。
だって夢の世界では――スターを殺そうとする輩は居ないのだから。




~~~~
スターは目が覚めた。
夢の中で目が覚めた。
小さくて地味な部屋にいる。低賃金労働者が住むような貧相なアパートの一室だった。

「やっと……この時間がキタ━(゚∀゚)━!!」

スターは布団から飛び上がる。着ている黒いパンツが、味気のない白いパンツへと変わっていた。
ここは夢の世界ドリームワールド。
ワルキュラが降臨した頃から存在すると言われる夢世界。
現実で眠れば、誰でも、ここに来る事ができると言われている。
現実より自由で快適で、治安が良い最高の世界だ。
各種施設も無料で遊び放題。学校で学びたい放題。
共産国の有名人のスターだって、蝶蝶の仮面を被れば、平然と出歩く事ができる。
だが、ここに滞在できるのはせいぜい5~8時間、それ以上滞在すると幽霊系アンデットが大量にやってきて追い出される。
時間を無駄にしたくないスターは、すぐに目立たない白いワンピースを着て、貧相なロリボディを隠して笑顔になる。
これでもう、仮面を被った、どこにでもいる小学生にしか見えないはずだ。
いつもと全く違う雰囲気だから、知人と出会っても本人だとばれる事はないだろう。

「夢の世界だ♫らんらん♫」

ホップ、ステップ、ジャンプ~。白いスカートがヒラリッと宙を舞う。
スターは現実からの責務に開放され、無邪気な子供へと戻った。

「まずは……遊ぶわ!
……少しだけ」


~~~~~~~~~~
30分ほど、ゲームセンターで、帝国製のレースゲームを楽しんだ後、スターはとある場所を目指した。
この夢の世界は、移動時間を短縮するために、念じれば何処でも移動できるようになっている。
なんでこんな素敵な世界が、ワルキュラの降臨と同じ時期に存在したのかは分からないが、魔法の専門家が言うには『圧倒的な絶望を感じて、皆が現実逃避した結果がこれだよ!』と言っていた。
恐らくは、人類にとって現実が辛すぎるが故に、夢の世界が充実した空間になってしまったのだろう。たぶん。
不幸中の幸いという奴なのかもしれない。

「夢の中でも、仕事のために使っている私って一体……。
何が夢の世界よ……」

スターの遊びの時間は、最初の30分で終わった。
次にたどり着いた目的地は―― ドリームランド演技講座館。
『夢の世界でなら君もトップアイドル!』『現実でアイドルをやるのは楽じゃないよ!全く!』『二次元アイドルには勝てないよ!ウンコしないし!』などという夢をぶち壊す看板が幾つもかけられている。
現実で共産国のアイドルをやっているスターにとって、ここは必須な教育施設だ。
ここで学んだ演技のおかげで、大国の指導者として上手くやっていけている、そんな気がする。
教育設備だけは無駄に充実しているから、この夢世界は大好きだ。
おかげで、そのせいで、夢の中でも、勉強ばっかりしている。

「時間を無駄に使っていると……ついついここへ来てしまうのね。
はぁ、リターンを考えて行動したら、夢の世界も台無しになっちゃうわ……」

そうやってスターが悲しげに愚痴っていると、 後ろから懐かしい声が響いた。

「おや?スー殿か。久しぶりだな」

とっても優しい男性の声だ。スターは顔を満面の笑みに染めて振り返る。
そこに居たのは――十代後半ほどの少年がいた。
外見が若いが、何百年も生きたかのような威厳があって不思議な……ちょっと気になる幼馴染だ。
スターは、嬉しさを隠せなくて、涙がちょっと出る。

「ええ……久しぶりね、ワー君。
なんか、1年ぶりに再会した感じがする……」

「うむ、ドリームランドで出会うのは二週間ぶりだな。
スー殿が元気そうで何よりだ」

「ワー君は、何か……顔が疲れてる感じだわね……。
現実で何かあったの?」

利害関係なしに親しい友達を作れる。そこがこのドリームワールドのメリット。

「聞いてくれスー殿……部下が酷いのだ。
俺に相談をせずに、なぜか勘違いして暴走して、世界征服をやろうと……」

「え?世界征服?」

「あ、違った。
せ、世界中の制服を勝手に集めてしまったんだな、うむ。
おかげで大騒動になってしまったのだ」

「それは大変ね……。
誤発注って奴かしら?」

スターは、ワー君のセリフの数々から、彼が商社が何かに勤めているんだなぁと、今更ながら確信した。
世界中の制服を買い集めるとなると、世界的な大企業じゃないと難しいだろう。
その時点で資本主義者な気配が漂うが、ワー君は特別枠だから、スターは気にしない。

「うむ、大変なのだ、スー殿。
昔から長い付き合いがあるのに、部下の誰もが、俺の事を理解しようとしてくれない……
いや、理解してくれたのは師匠くらいか……?」

「その気持ち……分かるわ。
上司って辛いわよね……部下を導くついでに、国を導かないといけないし……」

「国?」

「こ、故郷の事よ!ほら!
故郷の事を故郷(くに)って呼ぶでしょ?」

「なるほど、スー殿は中々に大きい企業を経営しておられるのだな。
それはとても凄い事だ。女性を差別する国が多いのに頑張っているのだな」

「ええ、私はとっても大きい組織を背負っているの」

スターは言えなかった。
自分が現実で共産国のトップをやっていて、大量の人間を粛清したり、強制労働所で働かせている現実を。
こんな事を言ったら、きっとワー君は幻滅して二度と会ってくれない。そんな予感がバリバリする。
何故か世間での評判は『悪の帝王ワルキュラと、紅い大魔王スターのどっちが悪党なの?』と比較され、先進国から非難されて悲しい。
おかげで、未だに未婚だ。男達はスターを見るだけで忠誠を捧げるか、命乞いをしてきて恋愛どころじゃない。
ぶっちゃけ男性経験ゼロの残念女すぎた。
恋愛はやった事があるが、それは一方通行だ。
目の前のワー君は、どうやら妻帯者のようだし、略奪婚なんかしたら紅い大魔王の悪行エピソードに加えられてしまう事だろう。

「演技の練習を始めるザマスよー!
個室に入ったら、自動的に授業が始まるザマスー!」

演技館の扉が開くと同時に、おフランスなオバさんが出てきた。
周りにいる人間達が次々と扉の向こうへと入っていく。

「おや?
そろそろ演技の時間のようだな」

「……ねぇ、ワー君。
今日は一緒の部屋で、演技の練習をしない?
ほら、他人の演技を見た方が、上達早いでしょ?」

「い、や、俺の演技の練習を見ても……参考にならないと思うぞ」

「あら?
私の演技だって、たぶん参考にならないわよ?
たまには良いじゃない」

もう少し、二人で一緒の時間を過ごしたいスターは――









そうとは知らずに、悪の帝王ワルキュラ(生前バージョン)と一緒に、扉の先を潜ってしまった。
二人とも、相手が、敵対国家の親玉と気づかず、夢の世界で知り合い、友達になってしまっている。


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ワルキュラ(夢の世界で、ロリBBAと気楽に会話できて幸せだなぁ)

スター主席(なんで、人間なのに年を取らないのかしら?もう40年ほどの付き合いになるわよね?
エルフの血でも流れているの……?)


【内政チート】「丸い弾丸は、空気抵抗を受けまくって威力が低い」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/07/blog-post_22.html 
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