| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

天使のエンブレム

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第八章

 機体の足は折れずにそのまま進みだ、何とかだった。
 機体は停止した、その時には。
「燃料がです」
「ああ、もうな」
 キートンはコクピットの燃料のパラメーターを見て言った。
「ないな」
「空ですね」
「本当にな」
「いや、ギリギリでしたね」
「全くだ」 
 冷や汗を顔中に流しつつだ、キートンはブルーに答えた。
「何もかもがな」
「車輪、足の調子も悪かったですね」
「あそこでこけてたらな」
「えらいことになってましたね」
「そうなっていた」
「いや、助かりました」
「下手に攻撃を受けるよりもな」
 その状況以上にというのだ。
「危なかった」
「でしたね」
「しかしな」
 何とか落ち着きを取り戻しながらだ、キートンはこうも言った。
「俺達は助かった」
「そのことは事実ですね」
「ああ、何とかな」
「皆無事か?」
 ブルーは他の搭乗員達に聞いた、爆撃手や銃手達に。
「生きてるか?怪我はないか?」
「はい、大丈夫です」
「生きてますよ」
「怪我もないです」
「無事です」 
 返事が来た、そして見回せばだ。
 全員健在でしっかりと動いている、その状況を見てだった。 
 キートンもほっとしてだ、彼等にあらためて言った。
「それじゃあ出るぞ」
「全員助かりましたし」
「それで、ですね」
「ああ、出てな」
 そしてというのだ。
「機首の方に行くぞ」
「わかりました」
 全員でだ、実際にだった。
 機体から出てだ、機首の方に行くと天使のエンブレムがあった。やたらと露出の多い格好で左目をウィンクさせている。
 その天使を搭乗員全員で見つつだ、キートンは全員に言った。
「本当にな」
「はい、この天使様のお陰ですね」
「俺達が全員助かったのは」
「まさにそうですね」
「そうだ」
 その通りというのだ。
「そうとしか考えられいだろ」
「まさにですね」
「その通りですね」
「俺達全員で祈ったから」
「天使様が助けてくれましたね」
「若しこの天使様がいないとな」
 それこそというのだ。
「俺達は生きて帰られなかったな」
「ですね、こうしてここにいなかったですよ」
「天使様あってですね」
「俺達皆ここにいますね」
「そうだ、俺達をアメリカに帰してくれたのはな」
 まさにというのだ。
「この天使様だ」
「じゃあ天使様にですね」
「あらためてですね」
「お祈りしような」
 こう笑顔で言ってだ、そしてだった。
 彼等はあらためて全員でだ、天使のエンブレムに祈った。天使はその彼等に明るい色気のある笑顔でウィンクをしていた。


天使のエンブレム   完


                         2016・2・19 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧