| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

卒業式

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

 そのうえでだ、玲旺はまた言った。
「こうして二人はな」
「もうないか」
「学部が変わるからな」
「そう思うと寂しいな」
「まあまた一緒に会ったらな」
「jこうして一緒に食うか」
「そうしようか」
 こうしたことを話しながらだ、二人で牛丼を食べた。
 そしてそれぞれの家に帰った、卒業式前に行った最後の吉野家だった。
 そしてその運命の日だ、二人は卒業式を終えてだ。
 解散となってからだ、二人で共にまだ肌寒い初春の学園を去ったうえでだ。ここでも二人で話したのだった。
「卒業したな」
「遂にな」
 玲旺が琢矢に応える、二人はその日差しの中を歩いている。
 そしてだ、今度は玲旺が言った。
「俺明日からバイトだよ」
「何処でだ?」
「駅前のカラオケボックスでな」
「あそこでバイトか」
「大学に入ってもな」
 それからもというのだ。
「あそこで働くな」
「そうか、バイトしながらか」
「大学に通うな」
「それいいな」
「御前はどうするんだ?」
「俺か、俺はな」
 琢矢は玲旺の問いにすぐに答えた。
「北朝鮮に旅行行って来る」
「嘘だろ」
「あんなところ行ったら帰られるか」
 生きて、というのだ。
「二度とな」
「そうだな、人類最後の秘境だからな」
「滅多に行けないしな」
「行ってもな」
「帰られるかどうかわからないからな」
 そうした場所だからというのだ。
「そもそもツアーとかあるのか?」
「鳥取の砂丘で工作員が組んでるだろ」
「拉致か」
「それでな」
 冗談でこう話した、しかし。
 琢矢は実際にどうするのかもだ、玲旺にしっかりと話した。
「俺もアルバイトだよ」
「そうか」
「ああ、スーパーでな」
 そこでというのだ。
「俺もアルバイトだよ」
「働くんだな」
「金稼ぐさ」
 アルバイトをしてというのだ。
「御前と同じだよ」
「働く場所は違ってもな」
「ああ、やることはな」
 それ自体はというのだ。
「一緒だよ」
「そうなんだな」
「それで入学してもな」
 琢矢もこのことは同じだった。
「そこでアルバイトだよ」
「サークル入るか?」
「入ってから考えるさ」
 そちらはというのだ。
「ただ、アルバイト優先だよ」
「俺と一緒だな」
「そうだな」
 まさにとだ、琢矢は玲旺に応えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧