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歌集「春雪花」

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 待つことの

  愚けき秋の

   夜もすがら

 秋虫の音に

     涙零しぬ



 どれだけ愛おしくとも…彼を待つのは愚かなことなのだ…。

 始めから解っているはずなのに…それでも…。

 秋の夜長、独り…そんなことを自問していると、外からは蟋蟀や鈴虫の鳴き声が聴こえ…無性に侘しくなってしまう…。

 私はなぜ…生まれてきてしまったのか…。


 ただ虫の音に…涙するほかなかった…。



 朝見ゆ

  侘しき夢に

   目覚むれば

 留めぬ白露

  落ちて散りにし



 朝方に見たもの寂しい夢に目を覚まし…ふと、彼のことを考えて、より淋しくなってしまった…。

 夢にすら現れてもくれず…まるでこの世は、彼を想い続ける私を嘲っているかのように思えてしまう…。

 薄明かりの中、淋しさのあまりに流したものは…朝露のように落ちて散り去り…。


 それは誰にも…気付かれることもなく…。




 
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