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シャルワール

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第一章

                  シャルワール
 アジアとヨーロッパの間にある国トルコ、この国はかつてアジアとヨーロッパだけでなくアフリカにまで領土を持つ広大かつ強大な国だった。
 そのオスマン朝の都だったイスタンプールは今もトルコ最大の都市である、しかし今この街にある居酒屋ダーウドの中で店主のスライマーン=イズミットは浮かない顔をしていた。
 そして娘のシャハラザードにだ、こう言った。
「最近お客さんがな」
「減ってるわね」
 娘もこう返す、口髭を生やした割腹のいい父の顔を見て。
「どうにも」
「そうだよな」
「食べられても」
 淡い長い赤色の巻き毛の髪の毛で大きなはっきりとした黒い目、薄眉の娘の顔を見て言った。顔は小さくやや顎がホームベース型になっている。中学生だが背は小学生の様で一五〇ない。身体つきも幼い感じだ。
「それでもな」
「売り上げがね」
「減るとな」
「やっぱりお店としてはね」
「ああ、嫌だ」
 スライマーンは娘に本音を言った。
「どうしてもな」
「そうよね」
「母さんとも話をしてるが」
 閉店後の店で話している、掃除の後で。席はテーブルやカウンターの上に上げて完全に閉店モードになっている。
「どうもな」
「この売り上げの減少が」
「悩みだ」
「お父さんの体重よりも」
「そこでそう言うか」
 父はむっとして娘に言い返した。
「相変わらず口が悪いな」
「お母さん似よ、顔も背もね」
「それはそうだな」
 父は娘の言葉を受けてから店の奥を見た、妻はそこで店の会計をしているのだ。
「御前は完全に母さん似だな」
「そうよね」
「そしてな」
 さらに言うスライマーンだった。
「話を戻すが」
「お店のことね」
「まずわしの体重のことはいい」
 無意識のうちに突き出た腹に手をやりながら言う。
「それはな」
「そうなの」
「お店のことだ、まずはな」
「それね」
「いい知恵はないか」
「新メニューとか新しい種類のお酒入れるとか」
「そういうのか」
 居酒屋らしい話だとだ、スライマーンは聞いて思った。
「それか」
「どう?」
「ああ、やってみるか」
「それでね」
「我が国はお酒も飲めるからな」
 イスラムだがこの辺りは寛容だ、トルコ産の地酒すらある程だ。建国の父ケマル=アタチュルクも酒好きであった。
「有り難いことに」
「何か入れるとかね」
「メニューなりお酒なりをか」
「入れたら?」
「そうだな」
「そうしたらいいじゃない」
「考えてみるか」
 カウンターの中で腕を組んでだ、スライマーンは娘に応えた。娘はカウンターの椅子を一つ降ろしてそこに座っている。 
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