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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女

作者:伊10
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第15話 私、先生とガチバトルします。そして………

 
前書き
玉鋼がガチバトル!相手は………… 

 
今日は一限目からIS実習。しかも、初めての二組との合同実習だ。

だったんだけど………………

「アンタがなんでそこにいんのよ!邪魔でしょう!」

「知りませんわ!大体鈴さん、貴女は衝撃砲をバカスカ撃ち過ぎて無駄が多いんですわ!」

「うっさいわねー!あんたこそポンポンビット出してんじゃないわよ!すぐにエネルギー切れるし!」

「何を!鈴さんの方こそ――――」

………………授業を始める前に実演ということで、セシリアと鈴が山田先生のラファール・リヴァイブと戦うことになった。因みにその時に織斑がやらかしてひと悶着起きたがここでは置いておこう。

で、実際のバトルなんだけど………連携が最悪過ぎて正直一対一のほうがマシだった気がする。

今もどっちが悪かったのか言い争いを続けてるし。しかもどっちの言い分もそこそこ合ってるだけに、二人の株価は急暴落中だ。

「あー、IS学園の教員の実力は理解できたと思う。これからは敬意をもって接するように。」

織斑先生がそう締め括る。かと思ったんだけど…………

「さて、予想以上に二人がチョロかっ………ゴホン。早く決着したからな。もう一戦やってもらう。………幸い、そこに血の気が有り余っている奴がいるからな。」

……あれー?バレました?そーですそーなんです。さっきのバトル中からもう割り込みたくって割り込みたくって………織斑先生!有難うございます!

「神宮寺、直ぐに準備しろ。山田先生、連戦ですが大丈夫ですか?」

「はい!ドンと来い!です!」

列から前に出て、玉鋼をコールする。思えば、改修後に人目に晒すのは初めてかも知れない。

両肩に装備していた《秋雨》は、右肩の一門のみになっている。その代わり、その一門は長砲身化し、出力40%増しになった《秋雨改》に換装されている。

代わりに左肩に搭載されたのは、巨大な肩当てだ。包丁の刃のような見た目の大きなパーツが三つ、左肩に連結されている。外見からは刃物か何か、というくらいにしか分からない。

そして、弓張月が背面に固定され、左の脇下から砲身を覗かせていた。砲身下部にトリガーが移されており、また、折り畳み式に変更されている。自由度が減少した代わりに即応力を強化した形だ。

「おお、なんか随分変わったな。」

「………織斑はこの改修の目的がわかる?」

「んん?えーっとぉ………全然。」

少し話を振るが、案の定な答えが返ってくる。代わりに答えたのは、いつの間にか戻っていたセシリアだった。

「中距離戦闘能力の強化……ですわね。」

「お、流石セシリア。どこで気付いた?」

「どこもなにも、玉鋼で改良すべき欠点なんて、そこぐらいでしょうに。」

「何をモタモタしている。始めるぞ。」

っと、織斑先生が急かしてきた。マズイマズイ。

「じゃっ、続きは後でねーっと。」

素早く玉鋼のステータスに眼を通す。全システムオンライン、問題なしっと。

「じゃあ、行きますよ!」

山田先生の気迫は、普段のほんわかした態度からは想像も出来ない強いものだった。心地よい緊張が全身を包み、思考のギアが一段上がる。相手の出方、それに対する対処、頭の中で幾通りもの展開をシミュレートする。

「いくよ、玉鋼。」

纏う愛機にそう呼び掛けると、キィン、と応えるような小さな音がした――――気がした。

「それでは……始めっ!!」

織斑先生の号令と同時に互いに左に回り始める。私は追加装備された荷電粒子ビームライフル《轟天(ごうてん)》を、山田先生はアサルトライフル《ガルム》を展開し、まず私が、一瞬遅れて山田先生が、それぞれ発砲した。

小気味のいい軽い炸裂音と、独特のバシュッ、という音とが交錯し、アサルトライフルの弾丸を紅い閃光が呑み込んだ。その瞬間、弾頭が爆ぜ、ビームがかき消される。その技量に舌を巻いた。

山田先生は、私の初撃がビームだと判明した瞬間、咄嗟に炸裂弾をビームの軌跡にぴったり合わせて撃ったのだ。恐ろしいまでの判断速度と射撃力。思わず心が踊る。

そのまま互いにグルグル円運動をしながら、何度か銃撃を交換する。紅い光がネイビーカラーのリヴァイブを掠め、小口径の高速弾が玉鋼の黒い装甲に跳ねる。

かすり傷はあれどほぼ無傷、しかし、自分が徐々に押されていくのが分かる。轟天はEパック式の兵装だからエネルギーは減らないが、先生の射撃は回数毎にその精度を上げてくる。

いつか捕まる。そう思った私は、旋回飛行からジグザグの直線的な飛行に切り替え、同時に距離を離した。追撃の弾幕を振り切り、秋雨改で砲撃しつつ、左手で弓張月を構え、照準する。

放った砲弾を山田先生は当然の如く回避。しかし、今撃ったそれは、攻撃用ではない。

時限信管が作動し、砲弾が自爆。対IS発煙弾がその真価を発揮する。ハイパーセンサーを阻害する特殊な煙幕を散布するこれは、敵味方関係なく効果が及ぶ為に、普通は撤退時に使う。

しかし、私は当然逃げるつもりはない。瞬時加速で一気に詰め寄り、左手に血染紅葉を展開。煙の向こうの山田先生に振るう。

だが、煙ごと切り裂いたその向こうに、先生はもういない。同時に警報。近接刀に持ち換えた山田先生が、煙に紛れて真上から接近していた。

自らの武器を利用された事に舌打ちしつつ、右手の轟天を掲げ、搭載されているある機能を作動させた。

銃身の下部に装着された装置から、深紅の刃が噴出する。試作型の荷電粒子ブレード発生装置《真雷(しんらい)》だ。これを銃剣として装備している。

それで山田先生の一撃を受け止め、血染紅葉で反撃、後退する先生に轟天の銃撃を加える。

「わっ!?ちょっ!?……ととと、銃剣(バヨネット)ですか。」

「………いや、ていうか一撃くらいもらって下さいよ。」

ついついぼやいてしまう。二段構えの追撃を全てかわされ、はっきり言って自信がポッキリ折れそうだ。

こうなったら、使うか。ホントは学年別トーナメントまで隠しとくつもりだったけど、火ぃ着いちゃったし。

「………山田先生。」

「何でしょう?」

「本気で行きますよ。」

「………ッ!?」

山田先生が身構える。それと同時にスラスターを点火、瞬時加速を重ねてまさに矢のように突進する。リヴァイブの欠点は一撃の火力に乏しい事だ。つまり、

「なるほど、斥力バリアを前面に押し出しますか。」

前方に、水鏡を全力展開する。本来はエネルギーの消耗が激しいために、必要量だけを部分的に展開しているのだが、短期決戦でいく今回には関係ない。

迎撃の火箭が来るが、全て斥力バリアが弾いていく。先生はアサルトライフルじゃ抜けないと判断したのか、左手にグレネードランチャーを展開。三連射する。

「………ここっ!!」

そのタイミングで私は、今まで使わなかった肩パーツを起動する。三つの巨大な刃が機体から分離。スラスターも無しに飛んでいく。

推進機関に当たる部分にはうっすらと青白い燐光が見える。そう、斥力バリアだ。

これは斥力バリアとPICを組み合わせてコントロールする、新型のビット兵器だ。刃の側面にある溝の色から、それぞれ《クロガネ》《シロガネ》《アカガネ》と呼んでいる。

BTではなく、自律稼働型のAIによって飛行するために、自身も戦闘しながらの使用が可能だ。

その三基のブレードビットが、グレネード弾をそれぞれ切り裂く。と、同時に本体の斥力バリアを解除。出力をビットに回す。

先生の周囲に展開した三基のビットが、そのエネルギーを使って正にバリアの檻とでもいうべき物を作り、山田先生を閉じ込める。

「これで決める!!」

血染紅葉を振りかぶり、隠し機能を解放する。シールドエネルギー残量が凄まじい勢いで減少し、反対に血染紅葉の刀身の根本から、圧倒的なまでのエネルギーの奔流が噴き出す。



《血染紅葉・落葉(らくよう)之型》



機体のエネルギーを血染紅葉に流し込み、過剰出力のエネルギーブレードとすることで、対戦相手のシールドエネルギーを一撃で削りきるという代物だ。

臨界までエネルギーを溜め込んだ真紅の刃は、エネルギーの回路を弄ったせいで、五本指の紅葉の葉の様に形成されている。

それを、身動きのとれない山田先生のラファール・リヴァイブに、思いっ切り振り下ろした。

ズギャアアァァァン

と、刀では有り得ない音が響き、行き場を求めるエネルギーが、四方八方に紅い閃光となって飛び散った。

が、そこに山田先生の姿は無かった。それを理解すると同時に、後頭部に銃口が突き付けられる。

「ハァ……ハァ……最後のは……焦りましたぁ………。」

息を切らしてそう言う山田先生。事実、身に纏うリヴァイブはボロボロで、なんとか稼働してるといった風情だ。

けど………動けるのならその時点で私の負けだ。なんでって………

「でも神宮寺さん。もう動けないでしょう。」

そう、この《落葉之型》はとんでもないエネルギーを消耗する分、一度使うと例えエネルギーが残っていても、オーバーヒートを起こして全く動けなくなる。

「これは、負けですね。」

大人しく降参する。普段ならここからでも足掻くところだが今回は授業だし。…………ん?授業?

『………神宮寺、周りを見てみろ。』

織斑先生から通信が入る。周り?

改めて周囲を見渡す。《落葉之型》を振り下ろしたところは、さながら爆心地のごときクレーターが出来ていて、そのクレーターの中心から、アリーナの端まで届く真っ直ぐな溝がある。アリーナの外壁にも切れ目が入っているようだ。

…………………。(思考停止)

…………………………………。(状況把握)

………………………………………………………。(行動策定)

……………………………………………………………………………………………よし、逃げよう。

脱兎の如く駆け出した私は、しかし五秒も経たずにアイアンクローの餌食になった。そこから先の記憶はない。ただ、変に歪んだ視界と、何往復もして土を運んだ一輪車とシャベルの映像だけが、頭の中で繰り返し流れていた。 
 

 
後書き
何でこうなったのか。しかし後悔はない。

玉鋼の設定資料、更新しました。 
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