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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第11話 小猫涙の悲願、グレモリー眷属修行開始します!後編

 
前書き
 え~……投稿が遅れてしまい申し訳ありません。ペルソナ5やソードアート・オンラインといった面白いゲームが多くてついついサボりがちに……遅れてしまいましたが11話です、どうぞ。 

 
side;イッセー


 よっ、皆。イッセーだ。今俺は山登りを楽しんでいる所だ。なんでもリアス先輩が所有している別荘があるらしくそこでなら多少派手に暴れても周りに迷惑はかけない丁度いい場所らしい。しかし緩やかな山だな、前に絹クジャクの卵を取りに行った時の山はもっと険しかったな。


「はあはあ……山登りって意外ときついんだね。イッセー君は疲れてないの?」
「これくらいじゃ散歩にもならないな」
「流石だね」


 かなり重そうなリュックサックを背負う木場は少し疲れた様子を見せる。どうやらあまり体力はないほうみたいだな。まあもう山を登りだして数時間が立つしあれだけ大きな荷物を背負ってたら悪魔でも厳しいか。


「祐斗先輩、ファイトです」


 後ろから木場より遥かに大きな荷物を持った小猫ちゃんが話しかけてきた。その表情に疲れは見えない。


「おいおい木場、女の子がこんな涼しい顔してるのに情けないぞ?」
「あはは……そうだね、このままじゃ情けないね」


 木場はそういって更に山を登り始める。男の子だねぇ。


「アーシアは疲れていないか?もし疲れていたら直に言えよ?」
「はい、ありがとうございます、イッセーさん」


 隣を歩くアーシアに気遣うがどうやらまだ大丈夫そうだな。


「むう、イッセー先輩はアーシアさんに過保護過ぎます。私には何も言ってくれないのに……」
「いや、小猫ちゃんなら楽勝だろう?」
「ふん、もういいです」


 ありゃりゃ、怒っちゃったか……何が悪かったんだ?


「ほらほら貴方たち、もうすぐ到着するからもうひと踏ん張りしなさい!」
「うふふ、こういう和気藹々とした雰囲気も偶にはいいものですね」


 先を歩くリアス先輩と朱乃先輩に声をかけられて俺たちは先輩達の元に駆け足で向かっていった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「着いたわ。ここが私たちが10日間修行を行う場所よ」
「うわぁ……大きなお屋敷です」


 アーシアが言うように俺の眼前には漫画によく出てくるような大きな木造建築の屋敷が立っていた。実際にあるもんなんだな、ああいうのって。


『お菓子の家に住んでるやつがいまさら何を言ってるんだ?』


 あ、確かにそうだな。まああっちはあっちで凄いもんばかりだしな。


「さて、まず修行を始める前に着替えちゃいましょうか。私たちは二階を使うからイッセーたちは一階の部屋を使って頂戴」
「分かりました」


 リアス先輩に案内された部屋で木場と一緒に着替える。すると木場が俺の体をジッと見ていた。


「ん?どうかしたか?」
「いや、イッセー君って着痩せするタイプなんだね。普段は分からなかったけど無駄がなく引き締まった筋肉の体……まるで芸術品みたいだ」
「まあな、それなりには鍛えているからな」


 しかし何故か木場の見つめてくる目が若干熱がこもってるように感じるのはなんでだ?そんなことを思いながら俺と木場は着替えて外に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「それじゃあ早速ですが修行を初めていきますか」


 外に出た俺たちは屋敷から結構離れた森林地帯にいた。


「それでイッセー、一体どんな所業をするのかしら?」
「これからみんなにはサバイバルをしてもらいます」
「「「はい?」」」


 俺の問いにリアス先輩たちはちょっと意味がわからないな、といった表情を浮かべた。


「イッセー君、サバイバルって一体……」
「これから皆にこの森に入ってもらう、そして一分後に俺が森に入って皆を死なないギリギリまで叩きのめしに行きます。皆は俺を撃退するなり逃げるなりして生き延びてください、以上!」
「「「ええっ……」」」


 俺の問いに先輩たちは更に訳が分からないよ、といった表情を浮かべた。


「ちょっと待ってイッセー、それに何の意味が……」
「ほらほら、時間が惜しいんだからいったいった。質問は後から受け付けますから」


 俺はアーシア以外の全員を森に向かわせた。


「イッセーさん、これから何をするんですか?」
「そうだな……しいていうなら『狩り』だな」






sidei;小猫



 私たちは先輩に言われるがままに森の中に入っていきました。


「一体イッセー君は何を考えているんでしょうか?」
「てっきり漫画みたいな修行を想像してたのにちょっと期待外れだわ」
「サバイバル……一体何をするんだろう?」


 部長達もこれから何が始まるのか予想がつかないみたいです、もうすぐ一分が立ちますけど先輩は何を……ッ!?


「部長、回避してください!!」
「えっ?」


 私が叫んだ瞬間、何かが茂みから出てきてあっという間に私達を引き飛ばしました。


「がはっ!?」
「きゃあっ!?」
「い、一体何が……?」


 うう、痛いです……私たちが顔を上げるとそこにはイッセー先輩が立っていました。


「いたた……ちょっとイッセー!いきなり何をするのよ!」
「修行するっていったでしょう?」
「いきなり現れて私達をぶっ飛ばすのが修行なのかしら!」
「申し訳ないですが修業を引き受けた以上この10日間は俺もマジでいきます。10日という短い時間の中で強くなるならそれこそ死ぬつもりでやらなきゃ強くはなれませんよ」
「でもこんな……」
「お喋りはここまでです、行きます!」


 イッセー先輩は部長との話を中断してこちらに向かってきた。


「やるしかないようね。祐斗、小猫、貴方たちで彼を抑えて!」
「「了解!」」


 私と祐斗先輩がイッセー先輩を迎撃しに向かう。


「行くよイッセー君!」


 祐斗先輩が魔剣を創り出してイッセー先輩に切りかかる、でも先輩は手刀で魔剣を打ち砕いた。


「なっ!?」


 祐斗先輩が驚いている内にイッセー先輩は裕斗先輩のお腹を殴り飛ばした。


「次!」


 そして今度は私の元に向かってくる。ぐっ、先輩が相手だなんて……でも私は強くなりたい!


「行きます、先輩!」
「来い、小猫ちゃん!」


 先輩のパンチをかわして正拳突きを放つ、でも先輩は既にそこにはいなくて私の攻撃は空振りした。


「ナイフ!」


 上空から先輩が手刀を放ってくる、それを紙一重でかわして先輩の腕を取り十字固めに決めた。


「やるな、だが……」


 えっ、嘘!?先輩は技をかけられながら私を持ち上げ……


「はああ!」


 私を思いっきり地面に叩き付けた。


「かはっ!?」
「次!」


 私と祐斗先輩を倒したイッセー先輩は次に部長の元に行こうとしたが……



 カッ!!


 その瞬間先輩が立っていた場所に巨大な落雷が落ちた、朱乃先輩の雷だ。


「うふふ、油断大敵ですわ」
「そっちもな」
「ッ!?」


 でもイッセー先輩はあの一瞬で朱乃先輩の背後に回り込んでいた、そして朱乃先輩が振り返る間もなく腰を掴み……


「せやあっ!!」


 ジャーマンスープレックスで朱乃先輩を叩きつけた。


「げほっ!」
「朱乃!」
「王である貴方が最後までボーッとしてたのは頂けませんね」
「えっ?」


 そして最後に部長を投げ飛ばして地面に叩き付けた。


「ふむ、アーシア」
「あ、はい」
「全員を回復してやってくれ」
「分かりました」


 イッセー先輩に手ひどくやられた私たちはアーシアさんに回復してもらった。悪魔まで治すなんてすごい神器です。


「悪魔まで癒すなんて……ねえアーシアさん。良かったら私の眷属にならないかしら?」
「ごめんなさい、私もイッセーさんと同じで人間でいたいですから」
「そう、残念……」


 こっそり部長がアーシアさんを勧誘していましたが断られてました。


「さて全員回復したな?それじゃ再開するぞ」
「ちょ、ちょっと待って!これいつまでやるつもり!?」
「そりゃ丸一日……といいたいですが流石に無茶をし過ぎても意味はないので日が暮れるまでやりましょう」
「じゃあ後5時間近くは……」
「はい、俺にぶっ飛ばされてもらいます」


 お、鬼です……鬼がいます!あ、違った、先輩はドラゴンでした。そして宣言通り私達は日没まで地面に叩き付けられて宙を舞いました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「はあ……はあ……」
「もうダメ……動けない……」


 ようやく日が暮れてきたころには私たちは満身創痍になってました。傷はアーシアさんが回復してくれても精神までは治りません。何回も地面に叩き付けられて正直心が折れそうです。


「初日はこんなものか、それじゃあ今から今日の皆の評価をしていくか」
「評価って何の評価かしら?」
「そりゃ全員の戦闘スタイルの評価と改善点ですよ」
「え、今日一日で分かったの!?」
「まあある程度は」
「なんて洞察力なの……」


 先輩の言葉に若干呆れたような声を出す部長、部長、多分そんなことは氷山の一角にすぎません。


「まずは木場だ、最初は翻弄されていたが直に俺の動きに対応できた、それに技のバリエーションが増えたな。まさか剣を飛び道具にしてくるとは思わなかったぞ」
「あの時は無我夢中で……騎士として恥ずかしいよ」
「そんなことはない。戦いで大事なのはプライドやこだわりよりも勝ちに向かう精神だ。騎士道精神のお前にこんなこと言うのはあれだが勝つためには自分が出来る事、使える事は全部使った方がいい、たとえそれが卑怯なことに感じてもだ」
「そうだね、騎士道も大事だけどそれ以上に部長の方が大事だ。勝てるためなら何でもしていくよ」
「それがいい、後お前は速さを武器にしてるが少し単調になってるぞ」
「単調?」
「ああ、お前は速いが動きは単純だ。真っ直ぐにしか動いてないからな。特にお前と同じスピードを武器にしている奴には読まれやすい。野球で例えるなら速いストレートも最初は打てないが何回も見ている内に目がなれてくるだろう?そんな感じだ」
「なるほど、ただ速いだけじゃダメなんだね」
「そうだな、ちょっと見ていろ」


 イッセー先輩は少し離れた場所に向かう、そして同じところを祐斗先輩並みの速さで走り回る、だが次の瞬間先輩の姿が消えた。


「イッセー君が消えた!?」
「一体どこに……」
「こっちだ」


 声をかけられた方に振り替えると先輩が立っていた。


「いつの間にそんなところに……」
「木場、俺がどうやってここに来たか分かるか?」
「うーん、もしかして速く動いていた所でワザと速度を落としたの?」
「正解だ」


 え、どういう事でしょうか?


「要するに速さに目がなれてきた時にイッセー君がいきなり速度を落としたから一瞬目が錯覚したんだ、イッセー君が消えたように見えたのはそのためだね」
「そういう事だ、さっきの例えで言うならストレートになれてきた所にフォークが来て空振り三振、みたいなもんだな」
「ありがとう、色々参考になったよ」
「ああ、お前なら直に強くなれるさ、自分だけの『速さ』を掴んで強くなれ」
「うん!」


 イッセー先輩と祐斗先輩が握手を交わした。男の友情ですね。


「次に小猫ちゃんだ。小猫ちゃんは最初から俺の奇襲に気が付けた。まあ体はついていかなかったがその後は徐々に体もついていくようになったな。正直ナイフをかわされたのは驚いたぜ」
「ありがとうございます」
「ただ小猫ちゃんは大ぶりの攻撃が多いな、要するに体の動きに無駄がある。それを無くしていけば体の小さい小猫ちゃんでも今よりも強い攻撃ができるぞ」
「小さいは余計です。具体的にいうと?」
「そうだな、これも見てもらった方がいいか」


 先輩は近くにあった木の近くにいくと大ぶりで拳を振るった。


 パァン!!


 先輩の拳が木に当たり大きく抉った。


「見ててどうだった?」
「確かにちょっと隙が大きいですね、当たればいいですけどかわされたら不味いかもしれません」
「それじゃ次だ」


 先輩は隣にある木の前に立ち構えをとる。


「すうぅぅぅ……はあっ!!」


 息を吸い込み拳を握りそして打ち込んだ。


 パァァァァァァンツ!!!


 木は先程よりも大きく抉れて倒れて行った。


「凄い……」
「無駄のない攻撃ができるようになれば小猫ちゃんはもっと強くなれるはずだ、後で徹底的に教えてやるからな」
「はい、お願いします!」


 やった!イッセー先輩と個人レッスンです!


「じゃあ次は朱乃先輩ですね」
「宜しくお願いしますね、後無理に先輩ってつけなくてもいいですよ」
「なら朱乃さんで。朱乃さんはウィザードタイプのようですね。魔法の威力は大したものです。でもさっきいった二人以上に隙も大きいです、正直一対一で戦うと厳しいですね」
「あらあら、ならどうすればいいかしら?」
「正直魔法に関しては俺は素人なのでとやかくは言えません。一応助っ人で魔法に詳しい人物を呼んでますから3日後には来ると思いますのでそれまでは回避や防御の仕方に専念しましょう」
「助っ人?ここに呼んで大丈夫なの?」
「信頼できる人物なので危険はないです」
「貴方がそういうならいいけど……」


 助っ人……一体誰でしょうか?


「最後にリアス先輩……」
「私も先輩はつけなくてもいいわよ」
「ならリアスさんで。リアスさんは……率直に言って一番ひどいですね」
「ッ!!」


 部長は先輩の言葉に思わず悔しそうに俯いてしまいました。


「身体的能力は高くても回避もとれないし防御も出来ていない。攻撃も単調で滅びの魔力を真っ直ぐに飛ばす事しか出来ない。当たれば破滅的な威力だと思いますがあれじゃ当たる方が凄いほどです」
「で、でも私は(キング)だから戦いは……」
「指示だって『行け!』くらいしか言ってなかったじゃないですか。そんなのは指示とは言いません」
「ぐっ……」
「はっきり言えば貴方は、いや貴方たちは今まで格下の相手しか戦ってこなかったんだと思います」
「それは……」


 先輩の言葉に部長は、いや私たちは何も言えなかった。思い当たる事が多すぎるからだ。


「……私は今まで強者のつもりだったのかもしれないわね。上級悪魔だから強くて当然、今まで相手してきたはぐれ悪魔も私たちが強いから勝ててきたと思ってた。でも違ったんだわ。弱い相手ばかりを倒して天狗になっていたんだわ」
「部長……」


 部長の気持ち、私も分かります。もし先輩に会ってなかったら弱い敵ばかりに勝っている自分が強いと勘違いしていたに違いありません。ライザーとの対決も何も危機感も感じないで勝てると調子に乗ってそして惨めに負ける……そんなビジョンが頭に浮かびました。


「なら今から強くなればいいじゃないですか」
「えっ?」
「弱いって分かったなら強くなればいいだけです。俺も少なくとも最初からこの力を扱えていた訳じゃありません、最初に神器を手に入れた時に少し調子に乗っていた時がありました、この力があれば自分の望む事を叶えることが出来るって……その結果多くの人に迷惑をかけました。その時初めて気づいたんです、自分は弱い人間だったと。自分を変えたいと思ったから、弱い自分に負けたくないからがむしゃらに突き進んで色んなことを経験してきました。今は自分も少しは成長できたと思っています」
「イッセー……そうね、最初から強者になれる訳がないのよね。私も今よりも強くなりたい、自分の為にも眷属である皆の為にも……イッセー、改めてお願いするわ。私たちを強くして。その為ならどんなことにも耐えて見せるわ!」
「分かりました、明日からもっと厳しくいきますね」
「ええ、お願いね」


 良かった、部長も元気を取り戻してくれました。でも私はイッセー先輩の過去をちょっと知ることが出来たのが嬉しかったです。先輩も最初っから赤龍帝の籠手を扱えていた訳じゃなかったんですね、きっと相当な苦労を重ねて今の先輩があるんだと思います。


「よし、今日はここまでにしておくか。早くしないと夕食に間に合わなくなるからな」
「あら、なら私たちも協力させてもらいますね」
「先輩私も手伝います」
「なら皆で作るか、その方が楽しいしな」
「はい、頑張ります」


 こうして一日目が終わっていきました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



 私たちの修行が開始されて三日が立ちました。相変わらず私たちは先輩に吹き飛ばされています。でもやられっぱなしじゃありません。私たちはイッセー先輩の奇襲にある程度反応できるようになりました、というか反応しないと死ぬほど痛い目に合うので反応せざるを得ないんです。これが殺気を体で感じることなのでしょうか?
 その中でも部長は特に頑張っています。何回もイッセー先輩に吹き飛ばされて叩き付けられても諦めずに向かっていきます。今も先輩の攻撃をギリギリかわして反撃しました。でもかわされてまた吹き飛ばされました。私も負けていられません。



「あら、何か魔力を感じたわ?」


 部長が何かを感じたらしく動きを止めました。私も感覚を集中させると確かに何か魔力を感じます。でもこの魔力は誰でしょうか?


 シュウウウウウッ!!


 すると近くの地面に魔法陣が現れました。私たちは何者かと警戒しましたがイッセー先輩だけその魔法陣を見て「来たか……」と言ってました。


「お久しぶりです!師匠!」


 魔法陣から現れたのは金髪のとんがった帽子を被った女の子でした。見た目はまるで魔女のようにも見えます。というか師匠?イッセー先輩が?


「ルフェイ、来てくれたか。忙しい所に無茶言って悪かったな」
「そんな、師匠の頼みなら断れませんよ。だから気にしないでください」


 むっ、何だか先輩とただならない雰囲気です、面白くありません。


「イッセー、その娘は一体誰なのかしら?」
「あ、自己紹介が遅れました。私はルフェイ・ペンドラゴンと申します」
「ペ、ペンドラゴン!?アーサー王で有名なあの!?」
「はい、私はその末裔です」


 と、とんでもない人が来てしまいました。というか先輩はなんでそんな人と知り合いなんですか?


「ルフェイは『黄金の夜明け』に所属していたとても優秀な魔法使いです。リアスさんや朱乃さんのアドバイザーとして呼びました」
「黄金の夜明けって……ねえ朱乃、私驚きすぎて感覚がマヒしてきたわ」
「奇遇ねリアス、私もよ」


 ただでさえ伝説上の人物の末裔というだけでも驚きなのに黄金の夜明けに所属していたという怒涛の展開に部長と朱乃先輩はついていけない様子です。ん、所属していた?


「今は違うんですか?」
「はい、実は私ある目的の為に黙って家を出ちゃいまして……しばらくは一人で旅をしていたんですがある日上級悪魔に目を付けられて眷属になるよう言ってきたんです。それを断ったら実力行使に出てきたんです」
「無理やり眷属にするのは禁止されてるはずなのに……同じ上級悪魔として耳が痛いわ」


 部長が呆れたような表情を浮かべました。同じ上級悪魔として思うことがあるんだと思います。


「私はその時空腹や疲労で疲れていて逃げる事が出来ませんでした、そんな時に師匠が現れて私を助けてくれたんです」
「でもどうしてイッセー君を師匠って呼んでいるんだい?」
「それは師匠が小さいころに憧れていたヒーローにそっくりだったんです。私は思いました、この人みたいになりたいって。それで弟子入りしたんです」
「そうだったんですか……私もイッセーさんと運命的な出会いをしたから分かります」
「最初は魔法なんて使えないから無理だって断ったんだが熱意に負けてな。今では時々特訓してやってるんだ」


 そんな出会いがあったんですね、でも安心しました。先輩の事は師として慕ってるんですね……ってなんで私は安心したんでしょうか?


「それで頼んでいた物は持ってきてくれたか?」
「はい、ちゃんと用意してきました」
「そうか、じゃあさっそくで悪いんだがルフェイはリアスさん達のアドバイスをしてくれないか。俺は魔法に関しては素人だからな」
「任せてください!」
「頼むな」


 そして私たちはルフェイさんが部長と朱乃さん、私と祐斗先輩がイッセー先輩の班に分かれました。



「それでイッセー君、僕たちはこれから何をするの?」
「二人にはこれを付けてもらう」


 イッセー先輩は懐から何か指輪のようなものを取り出しました。


「先輩、これは何ですか?」
「説明はつけてからするよ」


 そう言われたので私たちは指輪を付けました、すると……


「ッ!?か、体が重い……!?」


 突然私たちの体に強い負荷がかかり立っていられなくなってしまいました。


「先輩、これは一体……」
「今つけてもらったのはルフェイに作ってもらった重力を増加する魔法が込められた指輪だ。つけている限り二人の感じる重力は0.2倍になる」
「なるほど……これはキツイね」


 少し重力が増加しただけでこんなにも辛く感じるなんて……!?


「二人にはそれを付けたまま特訓してもらうぞ。因みに慣れてきたら増やしていくし、最終的には2倍の物もあるから頑張れよ」
「か、簡単に言わないでください!」


 でも部長だって頑張っているんです、私も負けていられません!


「やってやります!」
「うん、僕だって意地を見せてやる!」


 私たちは立ち上がりそれぞれ戦闘の構えに入りました。


「いい根性だ、行くぞ!!」
「「はい!!」」

 そして私たちと先輩はぶつかり合いました。部長、朱乃さん。お二人も頑張ってください。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


side:リアス


 私と朱乃はルフェイに連れられて屋敷の前にいた。これから何をするのかしら?


「取り合えず最初にお二人で模擬戦をしてもらいます」
「私たちが?」
「はい、お二人がどのようなウィザードタイプか実際に戦っている所を見させて頂きたいんです」


 なるほど、私たちの特徴を知らなければアドバイスのしようがないから実戦で見るという事ね。


「そういう事なら構わないわ。朱乃、準備はいい?」
「いつでもいけますわ」


 私と朱乃はそれぞれの手に滅びの魔力と雷を纏わせる。


「それじゃ始めてください」
「行くわよ!」


 私は滅びの魔力を朱乃目がけて真っ直ぐに放った。朱乃はそれを横に飛んでかわしてすかさず雷を放つ。私は雷を滅びの魔力で相殺して再び朱乃目がけて滅びの魔力を放った。
 

「ふんふん、なるほど……」


 しばらくそれが続き一瞬のスキをついて朱乃の体制を崩した。


「キャッ!?」
「チェックメイトね」


 そして朱乃の顔の前に滅びの魔力を纏った手を翳す。実戦ならこのまま滅びの魔力を放ち決着がついただろう。


「ふう、負けてしまいましたわ」
「ギリギリ勝てたわね」
「お二人とも、お疲れ様です」


 私たちの傍にルフェイが駆け寄ってくる。


「ルフェイ、見ていてどう思ったかしら?」
「そうですね。まず朱乃さんですが雷の魔法の威力は凄いです。まともに喰らえば相当なダメージになります。でも溜める時間が多いので隙も大きいですね。でも防御用の結界や回避するときの移動魔法はとても早く発動できていました」
「イッセー君に鍛えてもらってますから」
「流石は師匠です。朱乃さんは魔法の基本は出来てますから新しい魔法を覚えた方がいいと思います、私が実戦で使える北欧の術式を教えますね」
「黄金の夜明けに所属していた方に教われるなんて楽しみですわ」
「次にリアスさんですが……」


 次に私の評価が来た。


「滅びの魔力は初めて見ましたけど凄いですね、あれはヘタな防御結界すら容易に貫通してしまうほどです。でもコントロールは出来てないようですね」
「そうね、何とかコントロール出来るようには意識してるんだけどうまくいかなくて……」
「見ていて思ったんですがリアスさんはどちらかと言えばパワー寄りのウィザードタイプだと思います、だから下手にコントロールしようとしないで寧ろ思いっきり放ってみてはどうでしょうか」
「思いっきり放つ……」


 ルフェイにそういわれた私は思い当たる事があった。私のお兄様は滅びの魔力を自在に操るテクニックタイプだったから私もそれを目指していた。でも自分には自分のスタイルがあるんじゃないかと思った。


「……よし」


 私は二人から離れると遠くにあった山に手を翳す。今まではヘタにコントロールしようとしてうまくいかなかった、ならコントロールするなんて思わないで思いっきり滅びの魔力を放ってみた。


 ズガガガガガァァァァァァァンッ!!!


 私の放った滅びの魔力は相変わらず真っ直ぐにしか飛ばなかったが速度は上がり大きなものになっていた。滅びの魔力は次々と木々を消し去っていき山に当たった。すると山の真ん中を消し去っていきしまいには大きな風穴を開けてしまった。


「す、凄い威力……ですわ……」
「凄いです、リアスさん!!」
「こ、これを私が……?」
「はい!やっぱりリアスさんはパワータイプだったんですよ、あんな凄まじい魔力は久しぶりに見ました!」
「あれが私の滅びの魔力……」


 出来たんだ……私の、私だけのスタイルが……


「じゃあこの調子でドンドン使っていきましょう、魔法も使わなくちゃ上達しませんからね」
「わかったわ。……ありがとうルフェイ、貴方のお蔭で私は強くなれたわ」
「私はアドバイスしただけです。それにまだまだ強くなってもらいますからこれぐらいで満足しちゃ駄目ですよ」
「勿論よ!私はもっと強くなって見せるわ!」
「うふふ、私もリアスには負けていられないわね」


 ようやく私は一歩前に進むことが出来た。でもこの程度で満足してはいけない、自分の我儘に文句も言わずついてきてくれる眷属の皆の為にも私はもっと強くなって見せるわ!!



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



side:イッセー


 リアスさん達との修行を開始して10日が過ぎた。グレモリー眷属の皆は才能が高く教えた事を直に覚えていた。特にリアスさんの頑張りは凄くて最初は回避もままならなかったのに今はある程度俺の攻撃や動きに反応できるようになってきた。またルフェイのアドバイスで滅びの魔力を前よりも上手く扱えるようになったらしい。威力も上がっていたしあれをまともに喰らえば格上の敵にも通じると思うほどだ。


 祐斗も(彼にも下の名前でいいと言われたからそう呼んでいる)速さに複雑な動きや虚像が混ぜられて簡単には捕らえられなくなってきたし魔剣も0・2秒早く出せるようになってきた。
 

 朱乃さんは前よりも殺気を捕らえられるようになり回避や防御の質が向上し簡単にはやられなくなったし彼女もルフェイのアドバイスで魔力の効率的なコントロールを会得し更に北欧の魔法も覚えて戦術の幅が広がった。


 アーシアも特訓して回復の力が上昇、さらに簡単な魔法や結界を教わりある程度の護身は出来るようになった。


 最後に小猫ちゃんだが彼女も動きに無駄が少なくなってきて打撃の威力が上がり技のバリエーションが増えた。


「本当にルフェイには感謝してるぜ」
「えへへ、師匠のお役に立てたなら光栄です」


 俺は今ルフェイと共に屋敷の屋根の上で話し合っている。


「それでリアスさん達の様子はどうだ?」
「はい、お二人とも覚えがいいから教えていて楽しいです」
「そうか、祐斗と小猫ちゃんも最終的に0.5倍も耐えていたからな、根性あるぜ、本当に……」
「うふふ」
「ん?どうした?」
「いえ、師匠ってあまり親しい人間関係を見た事がなかったからなんか新鮮で……」
「別に俺はボッチじゃねえよ……ねえよな?」
『知らんな』
「おいおい……」
「あはは、ドライグも相変わらずですね」


 ドライグの冷たい回答にルフェイが笑う。ルフェイは俺が赤龍帝だという事、そしてグルメ界の事も知ってる数少ない人物だ、実際にルフェイも行ったことがあるしな。


「それでどうだ?お兄さんは見つかったか?」
「いえ、それがまだ……色々探ってはいるんですが進展はあまり……」
「そうか……」


 ルフェイが家を出た理由、それはいなくなった兄を探すためらしい。


「俺も調べているはいるんだが……すまない、いい情報が見つからなくてな」
「そんな、師匠にそこまでしてもらって文句なんて言えませんよ。大丈夫、私は諦めませんから」
「強い子だな」
「えへへ……っていけない!もうこんな時間!」

 
 ルフェイはもっていた懐中時計を見ると驚くように立ち上がった。


「どうしたんだ?」
「実はこの後にリアスさん達とパジャマパーティーをしようって誘われていまして……」


 パジャマパーティーって……明日本番だろうに……まあこの10日間は皆頑張ってたし野暮なことをいうのは辞めておこう。


「楽しんで来いよ、お前は友達少ないからこれを機に親しくなっとけ」
「もう、意地悪言わないでください!さっきの仕返しですか!じゃあ行ってきます!」
「おう、じゃあな」


 ルフェイが屋根から降りて俺は一人になる。こうやって一人でいる時間は久しぶりだな。


「思えばいつからだったかな、誰かが隣にいるってのは……」


 美食屋だって一人でやっていた。ドライグもいてくれたが寂しくないと言えば噓だった。俺の育ての親は忙しいし兄さん達も気軽に会えるわけじゃないからな……


「小猫ちゃんと会ってからか……」


 小猫ちゃんと会ってから俺は一人じゃなくなった。アーシアとも出会い松田や元浜、それに桐生とも仲良くなれた。そして祐斗達とも友人になれた。一人でいることには慣れていたが……やっぱり誰かといるのは楽しいもんだ。


「……先輩?」


 不意に声をかけられて振り返るとそこにいたのは……


「小猫ちゃん?」


 俺の後輩、塔城小猫だった。




side:小猫



『この化け物が!ここから出ていけ!』
『よそ者が好き勝手に歩くな!!』
『悪しき妖怪め、退治してやる!』


 どうして皆私を傷つけるの?どうして皆私を否定するの?私が何をしたの?


『ごめんね、本当にごめんね……』


 どうしてあなたは泣いてるの?どうして行っちゃうの?傍にいてよ、それだけで私は幸せなのに……


『必ず会いに行くから……だからそれまで貴方は笑って待っていて……約束よ……』


 行かないで……行かないでください……


「姉さまッ!?」


 ガバッ


「はあ……はあ……夢?」


 どうしてあの夢を……最近は見なかったのに……どうして……


 コンコンッ


 私の部屋の扉にノックする音が聞こえたのでベットから降りて扉を開く。ノックしていたのは部長だった。


「良かった、小猫も起きていてくれたのね」
「部長、何かご用ですか?」
「実はこれから親睦を深める為に女子だけでパジャマパーティーすることになったわ。アーシアやルフェイと知り合えたんだしちょっとは交流して仲を深めようと思ったの、それに本番前の息抜きも兼ねてね。小猫、貴方も来ない?」
「……ごめんなさい部長、折角のお誘いですがちょっと体調が悪くて……」
「あら、大丈夫なの?」
「はい、明日のレーティングゲームには参加できます」
「そう……無茶はしないでね?」
「はい、ありがとうございます」


 部長は私を心配しつつ部屋を後にした。どうして断っちゃったんだろう、あの夢のせいかな……


「眠れないしちょっと散歩しようかな……」


 私は寝巻のまま外に向かった。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「綺麗なお月様……」


 外に出ると辺りはもう闇夜だった。もう深夜だしお月様に優しい光が心地よい。悪魔は夜に力が出るが私は悪魔になる前からお月様が大好きです。


「……姉さま」


 ……駄目だ、あんな夢をみちゃったから姉さまの事しか考えられない。私には年の離れた姉がいました。幼いころに両親が死んでずっと私の親代わりをしてくれた姉さま、色々酷い事を言われたり苦しい思いをしてきましたがいつも姉さまが守ってくれました。姉さまが傍にいてくれるだけで私は幸せでした。 
 
 でもそんな幸せな日々に終わりが来てしまいました。ある日一人の上級悪魔が私たちに接触してきました。その悪魔は姉さまの美しい容姿と力に目を付けて眷属になるように言ってきました、姉さまは断りましたがその悪魔は私を人質にして無理やり姉さまにいう事を聞かせようとしました。
 姉さまはその悪魔に傷を負わせて私を助けてくれました、でも姉さまが上級悪魔に危害を加えた事によって姉さまは悪魔から命を狙われるようになりました。


 それからはずっと逃亡生活を続けていましたが日に日に追い詰められていきもう後がなくなってきました。そんな時姉さまは噂でグレモリー家の事を知りました、悪魔のなかでも情に厚い変わり者だと……姉さまと私は最後の賭けとしてグレモリー家に向かいました。そして部長のお父様に事情を話して私はグレモリー家に預けられることになりました。でも姉さまは顔が割れてしまっているので流石のグレモリー家でもかばいきれなかったそうです。


 姉さまは迷惑はかけられないと出て行ってしまいました。私もついていきたかった、でも姉さまは必ず会いに戻るからここにいてと約束して言ってしまいました。そして私は部長……いえリアスさんの眷属になり平穏を得ました。姉さまを眷属にしようとした悪魔、またはその関係者に素性がバレてしまう可能性もあったので私は本当の名を捨ててリアスさんに『塔城小猫』という新しい名を貰いました。
 今はリアスさんや皆がいてくれるから私は幸せになれました、でも……


「やっぱり会いたいです……姉さま……」


 姉さまとはあれから一度も会っていない。死んだなんて思いたくない、でも本当は不安で仕方ない。大丈夫と考えても不安は消えない、寧ろ強くなってしまう。


「姉さま……」


 ぼんやりと空を見上げていると屋敷の屋根からルフェイさんが降りてきて急いだ様子で屋敷の中に入っていきました。何をしてたんだろうと思って屋敷の屋根の上を見るとそこには人影がありました。
 私はそれが誰か気になったので近くに行きました、そこにいたのはイッセー先輩でした。


「……先輩?」
「小猫ちゃん?」


 私が話しかけると先輩が振り返りました。


「先輩、ここで何をしていたんですか?」
「ああ、ルフェイと雑談していたんだ。一応弟子だからか近状報告くらいは聞いておかないとな」
「何だか年頃の娘を持つお父さんみたいです」
「俺はまだ17歳だぞ?」
「ふふっ、分かってますよ」

 
 先輩と話しているとさっきまでの暗い気持ちが和らいでいった。


「……何かあったのか?」
「えっ?」
「いやさ、何か小猫ちゃん元気がないように見えてさ。気になったっていうか……」
「……いいえ、私は大丈夫です。心配してくださりありがとうございます」
「そうか?何かあったら直に言えよ、力になるからさ」
「はい」


 先輩は私が元気がないって直に分かってくれた、それがとても嬉しかった。私は先輩の隣に座り少し寄り添う。この温かいぬくもりが寂しさを和らげてくれる。


「……先輩」
「ん?なんだ?」
「先輩は……私が人間じゃなかったらこうやって助けてくれませんでしたか?私と今の関係を作ることもなかったですか?」
「それは小猫ちゃんが悪魔だからか?」
「いえ、元々人間ですらなかったらの話です……」


 私はまだ先輩に話していないことがある、自分の本当の正体を……怖かったんです。先輩は悪魔の私は普通に受け入れてくれた、でもそれは先輩が私が元々人間だったからと思っているからなんじゃないかと思ってしまいます。
 私は最初から人間ですらありません、どこに行こうとずっと忌み嫌われてきた存在……もし先輩がそれを知ったら今度こそ先輩との関係が壊れてしまうんじゃないかって思ってしまうんです。


「人間じゃなかったらか……んー、そうだな……」
「……」
「……今と変わらない関係を作っていたと思うな」
「えっ?」
「だって俺にとって重要なのは『塔城小猫』という一人の少女と出会えたことが一番嬉しいんだ。小猫ちゃんが元々人間じゃなくってもそれは変わらない。それに……」


 先輩は私の頭を優しく撫でながら笑顔でこう言ってくれました。


「そんな些細な事で崩れちまうような脆い仲か?俺たちは?」
「先……輩……」


 嬉しかった、嬉しくて涙が止まらなかった。姉さまや事情を知るリアスさん達は私を愛してくれた、でも自分が人間じゃないから、ずっと否定されてきたからそれ以外の人には好きになってもらえると思わなかった。
 でもこの人は最初から私を受け入れてくれた。私の我儘も嫌とも言わず聞いてくれた。いつだって私の為に動いてくれた……私はバカだ。こんな温かい人を疑っちゃうなんて……


 それから先輩は泣き続ける私をずっと優しく抱いてくれました……



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー



「……恥ずかしいです」


 しばらく泣き続けてようやく落ち着いてきましたが今度は恥ずかしさが込みあがってきて先輩の胸に顔を隠しています。ううっ、恥ずかしいです。


「先輩、いきなり泣き出してごめんなさい」
「別にいいさ。アーシアの時もこうやって慰めたしな」
「……今はアーシアさんの話はしないでください」
「え、どうしてだ?」
「どうしてもです。デリカシーがないです」
「ご、ごめん……」


 先輩は申し訳なさそうにそう言って私の頭を撫でてくれます。ああ、そっか、この感触を何処かで感じたと思ったら姉さまに似ているんだ……この温かい感触が本当に似ている……心が安心して安らいでいく……


(そっか……私、この人の事がどうしようもなく好きなんだ……)


 今まで目を逸らしてきた自分の気持ち……嫌われるのが怖くて違うって言い続けてきたけどもうダメです。こんな温かくて優しい人を好きになってはいけないなんていうほうが無理です。


「……先輩、私先輩に伝えたいことがあります。でも今は言いません。ライザーとのレーティングゲームに勝ったら先輩に伝えます」
「そうか、なら楽しみにしておくよ」
「はい!」


 私はもう迷いません。姉さまを探すことだって諦めません。イッセー先輩への想いを知った今必ず先輩の心を射止めて見せます。本気を出した私はもう止まりませんよ?だって貴方が教えてくれたんです、『思い立ったら吉日、その日以降は全て凶日』だって……



 大好きです、イッセー先輩!!



 
 

 
後書き
小猫です。いよいよライザーとのレーティングゲームが始まります。不安はいっぱいあるけど成長した皆とならきっと勝てます!!次回第12話『いよいよ決戦!私、覚悟を決めます!!』でお会いしましょう、にゃん♪ 
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