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アバヤ

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第三章

「そうなるわね」
「お歳はです」
「四歳違いだと」
「それ位でしたら」
「普通ね」
「はい」 
 アラブではだ、多妻がコーランに認められていることもあり後妻で若い娘が年配者の妻になることもある。ムハンマドもそうした妻がいた。
「ですから」
「普通ね、むしろ」
「近いです」
 その年齢がというのだ。
「お気になさらずに」
「わかったわ」
「ではこれより」
「ええ、服も」
 今は普通の室内着だ、白のドレスだ。だが。
 その服をとだ、サウサンはルクマーンに言うのだった。
「着替えて」
「正装といいますか」
「こうした時に着る服ね」
「アバヤに」
 ルクマーンは言った。
「あの服に着替えてもらいます」
「これから」
「そうして頂きます」
「あばやね」
「お嬢様もよく着られていますね」
「ええ、外国の方と会う時はドレスが多いけれど」
 相手に会わせるべき時はだ。
「けれどね」
「こちらが合わせてもらう時は」
「着ているわ、学校でもね」
「戒律に厳しい学校ですので」
 言うまでもなく所謂お嬢様学校だ、だからイスラムの伝統に則った服装で学園生活を送っているのである。
「着られていますので」
「わかっているわ、着るのはね」
「抵抗がないですね」
「ええ、ただ」
「緊張されていますね」
「そうよ」
 その通りだとだ、サウサンは答えた。
「普段は何でもないアバヤでも」
「今は」
「特別な気持ちよ」
 そしてその特別な気持ちで、というのだ。
「着るわ」
「左様ですか、では」
「今からね」
「着替えて頂きます」
 ここでだ、ルクマーンは。
 自分も含めた男の使用人達を部屋から出させた、すぐに女の着付けの使用人達がサウサンを囲んでだった。
 彼女のドレスを脱がしてだ、下着姿になった彼女に。
 丈の長い薄い生地のワンピースを着せた、サウサンは着せられながら使用人達に問うた。
「これは絶対によね」
「はい、ジャラビーヤはです」
「忘れてはなりません」
 使用人達も答える。
「アバヤを着られるのなら」
「どうしても」
「そうね、何でも最近はこれを着ずに」
 そしてというのだ。
「普段着の上からアバヤとなることが多いらしいけれど」
「ですが伝統ではです」
「イスラムの伝統では」
「こうしてです」
「まずはジャラビーヤを着ます」
「そうします」
 こう言ってサウサンにそのワンピースを着せる。それから。
 漆黒の薄い生地の衣裳を着せた、目だけが見えるイスラム伝統のヴェールの衣裳だ。身体全体が覆われている。 
 そのアバヤを着た姿を部屋にある姿見の鏡で見せられてだ、サウサンは言った。
「普段通りだけれど」
「それでもとですね」
「仰るのですね」
「今日は本当にね」
 それこそと言うのだった、今も。
「特別な気持ちよ」
「生涯の伴侶に会われる」
「だからですね」
「どうしてもですね」
「そうしたお気持ちになられますね」
「そうよ」
 その通りという返事だった。 
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