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機動戦士ガンダム0091宇宙の念

作者:むらたく
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宇宙編
月決戦編
  第38話 白い悪魔2

 
前書き
アムロ・レイ
一年戦争で、白い悪魔と恐れられたMSパイロット。グリプス戦役ではエゥーゴに加勢し、カラバの一員として地球で活躍した。戦後は連邦軍に復帰、対ジオン残党部隊ロンド・ベルのMS隊長となる。 

 
「チェーン!」
すらっとしたボディに特徴的なスリットマスク。
目の前にそびえる機体のコックピットから姿を現した彼女は、この艦のメカニックだ。
「アムロ大尉?なにか」
彼女の名はチェーン・アギ。
「この機体の兵装、特務仕様とあるが?」
「えぇ、狙撃を主としたZガンダム用のメガランチャーです。高出力で強力ですが、その分取り回しが悪く機動性が落ちます。大尉の技術でカバーしてください」
「あまり好きじゃないな」
「まだ調整が済んでませんので…BWSが装備できません。ジェガンが4機着くそうです」
「仕方ないな。何より時間がない。少しブライトと話してくる、調整を頼む」
「はい!」

月面外周宙域
「おいジャック‼︎聞こえてろ!」
ヘルメットに手を当てながら回線を繋ぐ。
「敵にモニカがやられた、お前らズサ隊は後退してロンドラとミンドラの直掩に回れ!」
「隊長!?了解しました…」
どうやらミノフスキー粒子が薄く、聞こえたようだった。
敵のMS3機、うち1機はエースだろう。
そう判断したメイソンは、ここでなんとか時間を稼ぎ、母艦からの砲撃に合わせ撤退するつもりだった。
「戦艦ならMSを振り切れる。たとえここを失ってもグワンバンと合流できる!」
ならばできるかぎり敵を減らしておくのが最善!
つまりメイソンが選んだのはあえてできた逃げを捨て、ここに留まり一戦交えることだった。
「隊長、水クセェことは言わないでくださいよ‼︎モニカの仇は取ります!」
「あぁ、ドリー。やるぞ」
2機のMSがまるで野獣のようにジェガンに迫る。
「大尉!あいつらやるつもりですよ‼︎」
「ジェガンは後退しろ!ここは俺一人で充分だ!」
対するアムロも、既に2機のジェガンを墜されている。
もっともそれはジェガン部隊が先行していたためだが、アムロはMS2機を一人で相手にすることを選んだ。
それはアムロ自身が相手を決して侮ったわけではなく、寧ろ相手の力を把握した上で、この選択が一番合理的だと考えたからである。
それはアムロ自身が自らの力を理解した上での行動であり、無論焦燥や迷いはない。
これは戦線の優劣や、そもそもの力量に大きな差があることに起因するのは言うまでもない。
「一機で相手するつもりかよ?俺たちをォ‼︎」
ドリーのガルスが切り掛かるも、敵機は軽々とそれを避ける。
更に追撃せんと機体を向け、強張らせた刹那。
既にガルスのモニターには閃光が迫っていた。
一歩引いて見ていたメイソンは、その一瞬で相手を察した。
「ドリー‼︎離れッ…‼︎」
メガランチャーのまばゆいまでのビーム砲が、ガルスを至近距離から消し飛ばした。
「ッ…‼︎」
メイソンは全身が冷えたように逆立つ感覚を覚えた。
圧倒的なまでのその強さ。
まさにそれは白い悪魔に名に相応しい姿だった。
連邦のニュータイプ、アムロ・レイ…
「フッ…」
しかしメイソンは決して退かなかった。
それは虚栄や強がりではなく。
パイロットとしての血が騒いでいた、からである。
「食い止める…!」
ランチャーの二射を躱し、肉薄するザクIII。
「この間合いなら‼︎」
サーベルを、間一髪で手首から発生させたビームトンファーで抑え込まれた。
「避けた‼︎こいつ、やるぞ⁉︎」
リガズィのバルカンが薄く辺りを照らし、ザクIIIの腕部を破壊した。
「しかし、見える‼︎」
アムロとメイソンの差はその初動の違いである。
ニュータイプ特有の勘とも言うべき行動の読みは、戦闘の僅かな隙の合間では決定的な武器となる。
「くっ、止められた!」
メガランチャーの先端がビーム刃を形成する。
ザクIIIも、弾かれたサーベルをスカートアーマーのサブアームで掴み、切り結んだ。
干渉の光が広がり、幾度も2機がぶつかり合う。
「なんて…やつだ…」
アムロは、敵部隊を突破し、母艦を攻撃することこそ作戦の本質と承知していた。
しかしここで正面から戦い消耗するよりも、ジェガン部隊を温存した方が後の艦隊攻撃が有利に働く。
更にラー・カイラムからは第二攻撃隊が出撃しており、ここで敵を足止めすることは重要な意味を持った。
対艦装備のジェガンでは、むしろ足手まといになると判断したアムロは、先に後退させたのだった。
「そこ‼︎」
リガズィのビームライフルがザクの脚部を貫いた。
「チッ!」
一瞬早く対応できたことでビームは間一髪足部を掠めた。
後退の姿勢を見せたザクに迫るリガズィ。
その時、アムロの脳裏に電光のような思考が奔る。
「来る‼︎」
戦艦の主砲級のビーム光がリガズィの間近でデブリを溶解させた。
「始まったか‼︎」
「艦隊からの砲撃だと⁉︎」
集中する火線に乗じて、母艦へと向かうザクIII。
しかし、アムロは砲火を物ともせず追撃する。
「このビームの中を…!しかしお前に構っている暇はない‼︎」
目前のデブリを急制動で横に回避するメイソン。
「捕まるものか!」
対するリガズィは上昇し、デブリを蹴り上げザクの上方に付いた。
「止める‼︎」
リガズィがバックパックから射出されたサーベルをつかむや否や、回転させて投げつけた。
慣性によってまっすぐ飛んで行ったサーベルが、ザクIIIの目前で弾け飛んだ。
「くっ⁉︎干渉が‼︎‼︎」
砲撃をサーベルの干渉によって拡散させ、ショットガンのようなビーム弾を受けたザクIIIの動きが一瞬止まる。
「そこ!」
リガズィのビームライフルが放った粒子塊は光速でザクのコックピットを貫いた。
「‼︎…⁉︎……」
融合炉に直撃し、激しい爆光が辺りに奔る。
周囲のデブリを瞬時に溶解させ、一際強く輝いた。
「一旦引く!」

宇宙また命が散っていく
星が煌めきは途切れない

宇宙世紀0091年 11月31日
メイソン・ローレンツ少佐 戦死
 
 

 
後書き
最近本当に更新ができず申し訳ありません(இ﹏இ`。)
絶対に失踪だけはしないつもりなのでどうぞよろしくお願いします…
次回に続きます! 
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