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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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第25話『乱戦』

 
前書き
最近の俺の話は、最後が掛け声で終わることが多いと気づいた。
習慣化すると飽きられそうなんで、何かしらの対処をしないと…(←自分が気をつければいい話)
あれ、今回も・・・? 

 
部活戦争のスタート地点は魔術室ということもあり、大した移動もすることなく、昼食を終えた流れのまま準備を始める俺ら。
ちなみに参加メンバーは、魔術部の中で魔術を使える数少ない四人の・・・


俺こと、三浦晴登。風使い。

クラスメートの、暁伸太郎。光と火を放つ。

ロマンチストな魔術部部長、黒木終夜。黒い雷を使いこなす。

男子の人気を総取りの魔術部副部長、辻緋翼。焔を自在に操る。


・・・で挑む。
正直、常人が持たない力を持っているから、そうそう負けるってことはないだろう。
ただ、他の部活だってそれは同じ。全員が個性の固まりなのだ。

よって、大差なんて無い。
全ては技術と作戦で決まる!!


「にしてもな~」


部長が気怠そうに呟く。
無理もない。この部活戦争に対しての調整が、今に至るまでほとんどできなかったのだから。


かなり唐突で、あくまで噂の様な話だったが、あの暁君の言葉は本当だったのだ。





──昼食

魔術室に現れるなり、俺と部長と副部長に驚愕の事実を伝える暁君。その内容は『部活戦争開始時刻が繰り上がった』というものだった。


「どういうことだ、暁?」


部長が理由を問う。その顔には焦りの色が見えた。


「理由には天気が関係してるみたいです」


それを聞いた俺は拍子抜けする。
てっきり大きな理由と思ってたのに。


「それって、午後に雨が降るってこと?」

「そういうこと…だな」


俺の発言に暁君が頷きながら納得する。
にしても、どうしてそれだけで部活戦争の時間を繰り上げるんだ?
別に『これからの競技を続行で、部活戦争を中止』とかいう策が有ったり・・・とにかく、普通に体育祭の競技をやればいいんじゃないのか?


「もしかして、体育祭の競技より部活戦争の方が優先…!?」


俺はその答えに行き着く。
いやでも流石にそれはないだろう。体育祭といえば、一年間でトップクラスに大きな行事だぞ? それを(ないがし)ろにしていいほど、部活戦争は大事じゃないだろう。
まぁ部費が懸かってはいるが…。


「…三浦、実はそういうことなんだ」

「まさかな・・って、うそーん!!?」


部長は首を振りながらそう言った。俺はあまりの驚きで、つい変な反応をしてしまう。


「な、何で…ですか?」

「ただの競技と違って、これには顧問の先生の意地とかプライドが懸かってるからね。部活動同士で戦う、すなわち部員だけでなく顧問の先生たちの争いでもあるのよ。ここで勝てば校長にアピールできる…みたいな」


副部長の意見を聞き、「なるほど」と納得する俺。
つまりは先生たちの裏の顔のせいということらしい。
大人の世界って複雑だな…。


「だから体育祭より部活戦争が優先。校長もそこは理解して、部活戦争開始を許可してんだ」


生徒だけじゃなくて、先生方も大変だな…。
でもこれで理由がわかった。

となると、この後の競技はどうなるんだろう?
もしこのまま天気が悪くなったら、どこの団が優勝とか決められなくなるよ? う~ん・・・。


「でも、何だって急に天気が変わるんだ? まして、体育祭の競技を中断させるほどの…」

「今日の天気予報は『一日中快晴』だったのにね…」


一日中快晴か。そういや今朝は新聞もテレビも見なかったから知らなかったな。でも外を見てそれがわかるくらい、今朝の空は確かに綺麗だった・・・


──!!


その瞬間、ある事が頭の中をフラッシュバックする。“今朝”というワードで思い出した。

俺が最近たまに見るようになった夢。確か今日は『雨』が降っていたはずだ。
…でも、あくまでアレはただの夢であって、これを予知していたとは考えにくい。そんな天気予報みたいな便利な代物じゃないだろう。
だがしかし、突然快晴が雨に変わるというのも不思議な話だ。関係がないとは断言できないのではないか。


「どうした三浦? 暗い顔して」


俺が考え込んでいると、暁君が声を掛けてきた。
おっとマズいマズい、と俺は顔を笑顔に戻し、


「いやいや、このあとどうやって敵を倒そうかな~なんて」


…と、考えてもいないことを口走った。
だが彼はそれで納得したらしく、「何とかなるだろ」と言って、会話を終えてくれた。


「何だよ三浦。考え事してる暇が有ったら、さっさと飯を食ってくれ。食べるのが遅くなって満腹で戦っても調子出ないだろ?」


おっといけない。
弁当を広げたまま、ほったらかしにしてしまっていた。
『腹が減っては戦はできぬ』だ。とりあえず早く食べとかないと。


「あ、そうだそうだ。罰ゲーム何にしよっかな~?」

「ちょっと、いい加減忘れなさい!」


今日も賑やかだな、魔術部は。







──となって、今に至る。
部長が調整する時間が無かったっていうのは、副部長と口喧嘩していた部長自身のせいだったりするよな。
俺はそう思いながら、腕を伸ばしたりと必要なのかもわからないストレッチをする。

昼食の時間後、放送で部活戦争についての知らせがあった。
暁君が言ったことは本当だったのであり、でもって開始は各々の部室から、ってことになった。


「どこからやる?」


部長が腕を組みながら訊く。
『どこから』というのも、今回は部費を集めるのを第一としているため、戦闘向きでない部活を狙うのが最も効率が良いといえるからだ。


「やっぱ文化系の部活がやりやすそうね」

「決まりだな」


副部長が狙おうと決めたのは文化系の部活、すなわち運動をあまり必要としない部活だ。確かにそれなら勝てそうである。


「そういえば部長、ウチの部活は何に部費を使うんですか?」


俺は気になったことを部長に問う。文化系の部活を狙って荒稼ぎしようとするなんて、そこまでお金に困っているのだろうか。部費は多いに越したことはないけども…。


「んなもん…ちょっとしたアレだよ、アレ」

「何ですかアレって…」


部長の意味深な答えに、俺は困惑する。"アレ"って何だよ、めっちゃ気になる!


「そんなことより、あと1分で始まるっすよ」

「「「!!」」」


話が脱線していた俺らは、暁君の一言で引き戻される。
確かに、変更した開始時間は1分後に迫っていた。


「競技時間は2時間でいいのよね?」

「ああ。各自テープで全員を縛り上げてやれ!」

「「了解!」」


部長から渡された、手からはみ出す程の量の拘束テープ。
それを見つめながら俺は、「ついに始まる!」と心踊らせていた。


『ピンポンパンポーン。皆さん、時間になりました。それでは部活戦争スタートです!』


「行くぞお前ら!!」

「「おー!」」


放送が終わると同時に俺らは部室を出て、それぞれが別の方向へと駆けた。







「意外と出会わないもんなんだな」


無駄に広い校舎の廊下を、隠れることもせず歩く伸太郎。
彼は、そうやって歩いているのに拘らず、敵との遭遇が無いということに疑問を持っていた。


「教室も使用可だから…奇襲も有り得るな」


彼は横にある教室を見ながら言った。
その窓から中を見る限り、誰も居る気配は無い。


「考えすぎか?」


そう言うと、彼は歩調を緩めることなく歩き続けた。







「罰ゲーム何にしよっかな~?」


魔術室のある階で魔術部部長である終夜は、壁に寄り掛かり先程までずっと考えていたことをまたも考え始めた。


「いや~アイツはノリノリで俺との賭けを承諾したんだし、何しても文句は言わんだろう」


そう呟いて独りでに納得する終夜。


しかし、その彼に忍び寄る影があった。


「あーでも部活戦争に集中しないと…いやでも…」


奇妙な選択肢に惑う彼。目を瞑り、ウンウンと唸っていた。

それを隙と見たのか、影はゆっくりと迫った。


「いやでも、やっぱり部費が大事だな!」バリッ

「い!?」


バタッ


「ん、まずは一人だな。素人が、気配で丸わかりなんだよ。さて、ハシゴ…ってことは演劇部ってとこか? てか俺今これで殴られそうになったの? 怖っ」


終夜は、自身の雷によって気絶した彼をそう解析した。


「よし、今ので10万ゲットだな。部活動はたくさんあるから…上手くいけば1000万は稼げる訳か」


計算がかなり大雑把であるが、そんなことを気にも留めない彼は「やってやる!」と意気込んだ。







「私ってどこかに隠れた方が良いのかしら…」


そう言いながら、緋翼はとある教室の教卓の下に入り込む。ずばり、己の小柄な体型を利用した奇襲作戦である。


「いやいや、どうして自分で自分のコンプレックス刺激しなきゃいけないのよ。やっぱり嫌、こんなとこ早く出よ──」


ガラッ


「!?」


突如として鳴ったのはドアが開かれた音。そして教室に響く足音。
緋翼は誰かが入ってきたと察して、出ようとしていたのを止める。


「誰も…いないよね?」


声からして、入ってきたのは女子のようだ。しかも少し怯えている。
今からこんなか弱そうな子を奇襲すると考えると少々気が咎めるが、これは勝負。緋翼は思い切り教卓の下から飛び出した。


「覚悟!!」

「ひぃっ!?」







「誰もいないのはちょっと怖いな…。てか、ホントに人に向かって魔術使っていいのか?」


見渡す限り、周りには誰も居ない。
自問自答をしていた晴登は安堵の息を溢す。

自身が1年生であるにも拘らず、魔術部代表という立場で出てしまっているのが、嬉しいような恥ずかしいような…。
しかし、他の部活は恐らく3年生ばかり。肉弾戦で勝つことはまず有り得ない。よって部活の道具とも言える魔術に頼らざるを得ないのだ。


「バレないように使うんだぞ、俺」


自分自身にそう言い聞かせているその様子は、不安を隠し切れていない。
晴登は再度周りを見渡し、「案外出会わないな」と考えつつ、歩みを進めた。







「やっと見つけたぞ、終夜」

「はっ、バットごときで俺に勝てるとでも?」


その頃、終夜はまたも敵と交戦していた。
相手は同じクラスの野球部の男子。ヘルメットにユニフォームにバットにボール・・・どこからどう見ても野球部の格好であり、さすがの重装備であった。


「バットで殴れば一発ってことよ」

「おっかねぇな。でも、マジックナメんなよ?」

「いや無理無理」


ここで終夜が“マジック”と言ったのには訳がある。
実は晴登だけでなく、魔術部の誰一人として魔術のことを周りの人に話すことはしていない。だから周りは魔術なんぞ露知らず、ただのマジック部と思っているし、公共の場では終夜たちもそう活動している。

そのため、野球部の彼はバカにするように手を振っている。「マジックごときに負ける訳がない」と。


「言ったな。じゃあ今からその金属バットに面白いことしてやるぜ」

「んな暇ねぇよ!」


終夜がお遊び感覚でそう言うと、野球部の彼は痺れを切らして殴り掛かってきた。


「ったく、少しはショータイムにさせろっての」ガシ

「がっ!? 痺れっ…る!?」


終夜はそのバットを掴み、瞬時に電流を流す。その電流は金属を伝って彼の体へ潜り込み、そして麻痺させた。
その後彼は倒れ、気絶しているかのようにピクリとも動かない。


「ってか、このテープ俺には必要ないな」


自分の力に麻痺の要素が有るため、テープを持つ必要性がないことにようやく気づく終夜。
いっそ捨てていこうかと考えたが、他の部活に盗られたらマズいのでポケットに入れておくことにした。。


「開始5分で2人…まぁまぁだな」


時間は残り115分有るということで、「これなら、あと46人行けるな」と思い、余裕ぶる終夜だった。







「この状況はマズいな…」


そう困ったように呟く伸太郎。
なんと彼は現在、それぞれ部活の違う男子4人に囲まれてしまっているのだ。
壁へと追い込まれ退路を塞がれているため、絶体絶命である。


「コイツは俺がやる!」
「1年生みたいだし楽勝だな!」
「お前らに部費はやらねぇぞ!」
「やんのか? おい!」


だが幸いにも、全員が違う部活所属なようで、狙われたり狙われなかったりしている。
それにしても、1年生相手に4人がかりとはどうなのだろうか?
でも・・・

今の内に逃げるか、4人を倒すか。

伸太郎はその決断をしなければならなかった。


「(野球部、サッカー部、テニス部、バスケ部・・・全部運動系の部活か。だったらここで倒しておいた方が後が楽だろうな)」


伸太郎は言い争いをしている4人を見てそう思った。
ここで運動系の部活を倒すということはとても重要なことだ。運動系といえば、戦闘にももちろん向いている。つまり後々人数が減ってきた時、運動系が残るというのは明白だ。
だから伸太郎は即座に決断をした。


「お、おいアンタら。俺を1年生だって馬鹿にしてるみたいだけどな、そんなの勝ってもないのに言えるのか?」


彼らを倒す。
伸太郎はそんな感じのことを仄めかすように堂々と言った・・・つもりだった。


「あぁん? 何て喋ってんだお前?」

「ボソボソ呪文唱えてんじゃねぇぞ、気持ち悪い」


なんと伸太郎の中では意気揚々と放たれた言葉は、彼らには届いていなかったのだ。
つまり今この時、伸太郎の重度なコミュ障が発動していたのである。


「え? だ、だから…」

「ゴチャゴチャうっせーな!」


そんなことに気づかない伸太郎に、遂に1人の拳が襲い掛かった。
咄嗟に避けようとするも後ろは壁。逃げ場なんてない。屈むにしても、上から殴ってきているので無意味。伸太郎は万事休すだと悟った。


アレの存在を思い出すまでは。


「あ、そうだ」

「「眩しっ!?」」


伸太郎は魔術を使って、自分を光源として目映い光を放ち、相手の目を眩ませた。すると、彼らは目を必死に抑え、悶絶する。

実は先程まで、脱出の糸口を探すことに夢中になっており、伸太郎は魔術の存在をすっかり忘れてしまっていたのだ。


「「うわ!目が!目がぁ~!!」」


光を直視したため、叫びながら悶える4人。
それを見て伸太郎は「哀れだな」と一言思い、彼が目覚めるまでに全員の手首に拘束テープを結んだ。


「こ、これで良いんだよな?」


全員が地べたに這いつくばっている様子を見た伸太郎は、とりあえず離れようと考え、その場から立ち去った。







「馬鹿な連中ね」


一方緋翼は、先程から自分に襲い掛かってくる男子たちを蹴散らしている所だった。
見下ろすと、ボコボコにされて気絶している無様な男子5名が転がっていた。


「数で挑んだって私には勝てないわよ。女子だからってナメないでね」


緋翼は手をヒラヒラとさせながら、独りでに言った。だがそれを聞いている者はいない。


「はぁ〜思ったより退屈ね。まぁ去年よりはマシだけど」


彼女は小さい背丈で目一杯伸びをして、再び廊下を進み始めた。







「こんなことって有るんだな…」


その頃晴登は、ある廊下で偶然出会った人物に驚愕していた。
きっと、余程の実力が有ったから彼はここに居るのだろう。


「驚いたか?」


晴登の目の前に立つ彼は、晴登に訊いた。
その表情には笑顔と期待が混じっている。


「もちろん。まさかここで会うなんてな」


晴登はそう返す。
その表情からもまた、今からの戦闘に興奮しているという感じが滲み出ていた。


「互いに全力で・・・」
「正々堂々闘おうぜ!」


青いユニフォームを身に纏い、サッカーボールを片手に持つ彼こと『鳴守大地』は、晴登に向かって「キックオフだ」と一言放ち、ボールを地面に置いた。

 
 

 
後書き
次回もその次回もこんな感じで進めていきます。
多分読みにくいと思うでしょうが、そこは勘弁ください。
あと急に下の名前で書き始めると、なんか新鮮ですね。

今の所は、
終夜……20万
緋翼……60万
伸太郎…40万
晴登……0  ですね。
もう12人も倒してますが、簡単に言うと3つの部活が魔術部にやられたということです。
これストーリー的に大丈夫か?・・・気にしないでいきましょう(逃避)

書いていて意外と楽しいです。
今の所は、なんか話が小さいですが、これからドンドン大きくしたいと思います!
では、また次回会いましょう!! 
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