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逢魔

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第二章

「その奥さんも二年前天寿を全うして」
「今は、なのね」
「そうしたお話もなくて」
「孤独なお年寄りの筈なのね」
「それなのになのよ」
「そうしたお話になってるから」
「余計に不思議がられてるのよ」 
 美稀は晴香に話した。
「そういうことよ」
「そうなのね、じゃあ」
「真相が気になる?」
「結構ね」
 定食の味噌汁を飲みながらだ、晴香は美稀に答えた。
「なるわ」
「そうよね、晴香ちゃんならそう言うと思ったわ」
「私が好奇心旺盛だから」
「そう、だからね」
 友人がそうした人間だからというのだ。
「そう言うと思ったわ」
「そうなのね」
「それでね」
 美稀はその好奇心旺盛な友人にさらに言った。
「これから真相を調べたいと思ってるでしょ」
「ええ」
 その通りだとだ、晴香も答えた。
「実際にね」
「そうよね、そう言うと思ったわ」
「気になるからね」
「じゃあね」
 友のその言葉を聞いてだ、美稀もだった。
 大人びたまさにアジア系の美女といった顔を微笑まさせてだ、こう言った。
「私もね」
「美稀ちゃんもっていうのね」
「何かあって一人じゃ危ないし」
 この理由もあってというのだ。
「私もね」
「そっちが本音?」
「どっちも本音よ」
 これが美稀の返事だった。
「一緒に行きましょう」
「わかったわ、じゃあ源田さんのお家の近くで張り込みしましょう」
「探偵みたいに」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「調べましょう」
「それじゃあね」 
 こう話してだ、二人はお互い所属しているテニス部の部活が終わってからだった。老人の家の壁のところに来た。
 するとだ、実際に家の中からだった。
「あっ、本当にね」
「賑やかね」
「声が聞こえるわね」
「そうよね」 
 こう二人で話す、そして。
 そのうえでだ、晴香は美稀に言った。家の中に耳を澄ませて。
「複数、十人以上ね」
「いるのね」
「ええ」
 声を聞くと、というのだ。
「それも老若男女ね」
「様々なのね」
「一杯聞こえるわ、しかもね」
「しかも?」
「どんちゃん騒ぎよ」
 そこまでの賑やかさだというのだ。
「これは」
「どんちゃん騒ぎ」 
 美稀は晴香のその話に眉を顰めさせた。そのうえでこう言った。
「それはね」
「ないわよね」
「もう奥さんに先立たれて孤独死が心配されていた人よ」
「そうした人の家でどんちゃん騒ぎ」
「ないわよ」
 こう晴香に言った、そして。
 美稀自身もだ、家の中から徐々に聞こえてきた。その声が。
「確かに」
「聞こえてきたわよね、美稀ちゃんも」
「ええ、凄い騒ぎね」
「本当にどんちゃん騒ぎでしょ」
「そうね」
「何でかしらね」
 晴香は美稀に怪訝な顔で尋ねた、老人の家の中から聞こえてくるその宴会を思わせる声を聞きながらだ。 
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