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ヘレロ族の服

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第三章

「美味しいです」
「イギリスと聞いて期待していませんでしたか」
「料理については」
「イギリス料理も作る人次第で」
「上手な人が作るとですか」
「美味しいんですよ」
「そういうことなんですね」
 英治はガイドの説明に納得して頷いた、ディナーのローストビーフを食べつつ。
「イギリス料理も」
「まずいと評判ですが」
「作る人次第で大きく変わるんですね」
「そうです、他のものも美味しいので」
「そちらも期待していいですね」
「はい、そして明日の三時は」
 三時となるとだった、イギリス文化では。
「ティータイムですが」
「その時にですね」
「こちらの女の子達が来ますので」
「では」
「ご期待下さい」
 こう話してだ、そのうえで。
 英治はディナーを楽しみそしてだ、その後の酒も楽しみぐっすりと寝た。それからイギリスでこれだけは美味しいと言われている朝食も楽しみだ。
 そしてだ、午前中は周囲の観光をして昼食も食べてだ、午後は庭を散策し。
 三時になった、その三時になるとガイドは英治にも他のツアー客にも言った。
「では今日のティータイムですが」
「ティータイムに、ですね」
「女の子達が来てくれます」
「このナミビアの」
「彼女達と一緒にお茶を楽しんで下さい」
 一緒に出されるティーセットもというのだ。
「是非共」
「はい、それじゃあ」
「そちらもです」
「お茶もティーセットも」
「楽しまれて下さい」
 こうした話をしてだった、英治達はホテルに戻りその庭、緑と薔薇が奇麗なその園でだ。
 ティータイムを楽しむこととなった、ここで来た少女達は。
 赤い、くるぶしまで隠れたドレスだった。ワンピースタイプでスカートは端にいくにつれて広くなっている。端のところには青の草模様が入っている。
 手首まで生地で覆われ肩のところは膨らんでいて胸元も閉じられている。頭の帽子も赤いが横に突き出した形であり前から見ると平たい、手には小さなバッグがある。
 その服を見てだ、少女達は言った。
「何か」
「アフリカ風ではないですね」
「ヨーロッパの服ですか?」
 こう言うのだった。
「この服は」
「この娘達はヘレロ族でして」
「この辺りの民族ですね」
「ナミビアだけでなくボツワナやアンゴラにも居住しています」
「そのヘレロ族の服ですか」
「この国はイギリスの植民地だったことはお話しましたね」 
 ガイドはあらためてこのことを話した。
「それでその影響で」
「こうした服ですか」
「はい、そうです」
「服にもイギリスの影響があるんですね」
「そうなのです」
「やっぱりイギリスの植民地だったんですね」
 英治はガイド達の言葉を聞きつつしみじみとして言った。
「いや、影響は今も強く残ってるんですね」
「そうなのです」
「それでそのイギリス風の服を着た娘達とですね」
「これからお茶です」
「いや、アフリカにいるのに昔のイギリスにいるみたいですね」
「その雰囲気もお楽しみ下さい」
 ガイドは英治に笑顔で言う、そしてだった。
 彼等はその娘達と共にお茶を楽しんだ、お茶は言うまでもなくイギリス風のミルクティーでありかなり甘い。
 ティーセットはスコーンやエクレア、シュークリームにサンドイッチそれにフルーツやバウンドケーキといったものだ。三段のセットにそういったものがあり。
 白いテーブルに座って少女達と共に飲んだ、少女達とは言葉が通じず共に飲んで食べるだけであったが。
 英治はこの時も楽しい時間を過ごした、そしてだった。 
 これから後もツアーを楽しみそのうえで日本に帰ってだ、豊に蕎麦屋でざるそばを食べつつそのうえで言った。
「アフリカにいるのにな」
「イギリスにいるみたいか」
「そうだったよ」
 ティータイムの時の写真をだ、豊に見せつつ話す。その少女達の姿もそこにある。 
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