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私inワンダーランド

作者:しばいぬ
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第三話 大体ここまでがプロローグ

 
前書き
最終面接を受けました。ひゃっはー
これを見ているもの好きたちへ!考えるんじゃない!感じるんだ! 

 
雀はほこりをかぶった本棚から本を一冊抜き取った。表紙には『高天原星空計画』と書いてある。
 高天原中心部、高天原会議室のさらに上の屋根の上に九尾が座っている。
「おい!九尾ぃ!こいつなんてどーよぉ!?」
赤鬼が一つの星をつかんで九尾に話しかけた
「赤!それでは光が足りない!これくらいでなければ!」
青鬼も一つの星をつかんでいる。
「私には、どちらも同じに見えるわ。」九尾は少し考えた後に
「じゃあ、どちらも明けの明星にしちゃいましょう」パンと手をたたいた。
その日から高天原に明けの明星が二つ輝くことになった。
「もう星空は大体完成かしらね」
明け行く空にはまだ、たくさんの星が輝いている。
「九尾~できたよ~」きゅうがぴょんぴょんとはね、作った月を空に設置する。
月は薄く光りながら沈み始めた。
「『星空計画』。最初は無理だと思いましたが、どうにかなりそうですね」
青鬼が空を見上げしみじみと声を漏らした。空にはもう無数の星がきらめいていた。
「残りは太陽。ね」
太陽のない空は、徐々に明るくなってきている



明け行く空で天狗と猫又は上昇を続けていた。
「んで、あんたはいつ成仏する」
フワフワと天狗に抱えられながら猫又は聞いた。
「俺にだってわかんねぃよ」天狗はそっぽを向く。
「成仏の仕方なんざわからねえ未練も、なんもねえはずだからな」
「へぇ、幸せもんだね」猫又はニヤリと笑った
「ほら、空中島だ。孫娘を頼むぜ」天狗は猫又をぽいと投げた。
「お前はどうすんだい」
天狗はゆっくりと空中島離れていく。
「さあな、俺にだってわっかんねぇ」
天狗の姿は地上に消えていった。



空中島は決して広いわけではない。一日もあれば島を一周できるほどの広さではあるが長年使われていない建物が多くあり、無造作に生えた雑草や蔦が視界を邪魔していた。木造の家は腐り始めており、土壁にはひびが入っている。一歩と踏むたびに草についた雫が足袋にしみこんでいく。
「ほんと、何考えてんだろうかね、あいつらは」
行く先を阻む蔦をかき分け中心部へ進んでいく。雀のにおいは島の中心部に続いている。
島の中心部には周りの建物とは違い、教会じみた見た目をしている。
さび付いた門を開けると、こもった湿気の独特なにおいが鼻をなでる。
「あ、猫又さんだ」
雀の声が小さく反響した。本をベッドにして寝ころんでいる雀は『高天原星空計画』と書かれている。
「天狗からなんかいわれた?」つかつかと猫又は雀に近づいていく
「帰りたいなら帰れるはず、って」
「帰る方法ね・・・」
「ここの本、大体読みましたが、ろくなことありませんでした」雀がポンポンと本をたたいた。
「そりゃあまあ、娯楽か日記くらいしかないだろうね」
教会内には本は数多にあれど、日記や漫画、趣味嗜好の本くらいしかない。
窓から差し込む光が漂うほこりを輝かせている。
「・・・それで、あんたはこれからどうすんの」
「とりあえず雇ってください。お金も家もないのです」
「お金なんてここにはないけどね」
フッと息を吐き強く足を踏む。カンッと下駄がなり、空中島が揺れ始めた。
「え?なにこれ」
「落ちるよ」
空中島は落下を始めていた。
空中島が大きく唸りながら降下していく。
雲を吹き飛ばしながらゆっくりと、高天原西部に着地した。引き起こされた爆風は建物を吹き飛ばし、揺り動かされた地面は耐えたものたちをくじかせる。だがそれらは一瞬で元通りになった。
「ほへぇ」
「おもしろいでしょ。壊れても壊れないんだ」
潰された部分は元通りにならず砂煙は鰯になり、建物はマンタになり空を泳ぎだし、空を覆った。
「お」
雀の足元がグニグニと動き出した。
「ほら、はなれるよ!」
猫又が雀の腕を引き空中島から屋根の上へと飛び乗った。
空中島は徐々に黒く形を変えていき、二匹の鯨に変わり、雲を吐き出し空へ泳いで行った。
「ほほう」
「海がないからね、代わりに空を泳ぐんだ」
「それ、理屈になってます?」
マンタたちが群れを作り空を横断していく。つぶされた箇所には木が生えていき、建物の三階部分まで伸びていき、色とりどりな鳥が羽ばたいていった。



******************************



ここは高天原。空には鳥が飛び、魚が泳ぐ。私、西宮雀は西側領地の『猫又食堂』でアルバイトをしています。中心部から徒歩一時間十分という立地ではありますが、地下妖力車が通り、それなりに人通りがあります。ですが客足は全くありません。だって、考えてください。その土地、もとい世界の重役トップ5のうちの一人が経営するお店。とっても入りづらいですよね?
そんなわけで店内外を箒で軽く掃き、あとはカウンターで居眠りするのが私の日課です。
そんなわけで今日も箒タイムがやってくるわけなのでした。
「あ、四丁目の達磨さん、おでかけですか?」
「おう、ちいと北までね」
「そらへびさん、最近また、ながくなりました?」
「3cmほどねー」
3か月もここにいると並たいていのことでは驚かなくなりました。
「あ、ドラキュラさん、お久しぶりです」和洋折衷。いい事ですね。
「すいません」と、私の耳に聞きなれない声が聞こえてきました。
「猫又さん、はいらっしゃいますか?」
卵みたいな体に手足がついているこのお方。童話でみたことのある・・・。そう、ハンプティーダンプティーです。
「はあ、ただいま外出中ですが」
「そうですか」すると、ハンプティダンプティの頭にひびが入り始めました。
「では、ハンプティ、ダンプティが、現れた、と、お伝えください」ぴしぴしとヒビが広がっている
「はあ」私は頭のメモ帳に『卵おじさん現る!』とメモをしました。
「な・・・なにがあってもぉぉぉぉ!!」ヒビは卵おじさんの全身に広がっていき。
パキン!
と、心地よい音を立て、大きな二本脚のひれをもったナマズになり、タッタカと走っていきました。
「面倒ごとはごめんですよ~」
私が走り去った方向へ言うとズズン、と2回、どこかの地面が揺れ、砂煙が立ち昇った。


場所は変わり高天原会議所。ここではいつも通り中央と東西南北の領主が集まりいろいろなことを適当に決めている。
議長席に座っているのは九尾、高天原の最高決定権を持っている。
「それで・・・今回の議題は何だったかしら・・・」
「今回行われる祭りについてですね。正式な高天原全域を巻き込む祭りは私が知っている千百年中では初です」流れで進行役を務めている青鬼がプロジェクターに東西南北それぞれで行われた祭りを映し出した。
「北、私、青鬼の管轄で多く行われている祭りは『地獄式ダイエット祭』です。みなさんの地域ではどうでしょうか」
ほかの全員は話を振られまいと、お茶をすすり団子を食べ始めた。
ふう、と息を吐き、青鬼が眉間を指で押さえた。
「私が知っている限りは3回・・・」
九尾が宇治金時をつつきながら話し始めた
「一回目は私が先代代表から聞いた話。大体二千八百年前になるのかしらね・・・」
会議室の床や壁、天井に色とりどりに塗られた町の映像が映し出された。
「『大暇つぶし色塗り大会』。東西南北四色に分かれて色を塗って、その面積を競う大会ね。集計が面倒くさくて勝敗はつかなかったそうよ」
映像が変わり、次は可笑しな形をした生き物たちが映し出された。
「これは千七百年くらい前ね。名前は『暇つぶし生物生成大会』名前の通りあたらしい生物をつくって一番可笑しな生物を作った人のいる土地が優勝ね。三か月にわたって続いたんだけど作った生物たちが反乱を起こしちゃってね・・・。いまは高天原の外側、禁足地に追いやっているわ。」
最後に映し出された映像には巨大なロボットが映し出されていた
「これは・・・青鬼が知らないのだから千百五十年前だったと思うのだけれど・・・『暇つぶし大討伐大会』。みんなで力を合わせて巨大ロボットを倒そうってお祭りね。操縦はきゅうがやったわ」
ビシとウサギのきゅうが敬礼をした。
「そろそろみんな、退屈してきたころだと思うから、もっと大きな騒ぎが必要ね」パンと扇子を開き、風鈴を仰ぎ始めた。
「騒ぎねぇ・・・」赤鬼が角をいじりながら考えた。
「騒ぎよ」きゅうが人参をかじりながらつぶやく。
九尾が扇子を閉じ青鬼が猫又を見つめる。
実は高天原中の話題になっている生者が迷い込んだという事件。ここ3か月は一応これ以上の事件は起こっていない。はずである。
「いや、でも。ほら、あいつは炊事以外なんもできないけど?」
「人間はなんにでもなれる・・・」
「妖怪にも」
「幽霊にも」
「・・・化け物にも、でしょ?」きゅうがニッと笑った。
これから起こることを考え始めたら、自然と笑みが浮かんできた。次々に生まれた笑みが会議室を埋め尽くしていく。狐も、鬼も、兎も、猫も。みんなが笑い始めた。笑いが笑いを生み、笑いが笑いにつながる。何が面白いかもわからなくなり、みんな、ただ、笑い続けた。
そして次の日、号外新聞により、今回の祭りは『だいだらぼっち他暇つぶし大騒ぎ祭り』に決定したことを報じた。



私は今日もいつもどうりに箒で外を掃きます。これが仕事、日課。労働、バンザイ。
すると、今日もズズン、と2回、地ならしが起き、砂煙が立ち上りました。町民達がそちらに気を取られている間に、私は拉致されてしまいましたとさ。
もちろん犯人は、一日目に出会ったあの猫割合の高いグループでした。
そして同じ場所に座らされ、性懲りもなく私は勧誘をされるのです。ただ今となっては私も常連さん。お茶やお菓子が用意されています。
「だからクロちゃん、私はそんなグループには入りませんよ?」
ボス猫さんは黒い毛並みをしているので私はクロちゃんと呼んでいます。
「お前、今日の新聞を見ていないのか!?」
クロちゃんは丸い目を見開き肉に覆われた顎をぶるんと揺らしながら新聞を取り出した。
「『だいだらぼっち他暇つぶし大騒ぎ祭り』・・・。なんです、これ?」雀の眉間にしわが寄る。
「見出し以外もちゃんと読むんだよ!」
「はいはい。えっ、と。『昨今世間を騒がせた生者遭遇事件。先日、高天原会議でこの生者、西宮雀を祭りの大元にすることを決定した。』っと・・・。」
雀は周りの猫たちを見渡し
「いまいち要領がつかめないんだけど?」
「だ、から!おまえがだいだらぼっちにされるんだよ!」
「いや、なれないよ」雀の眉間のしわと頭の上のクエスチョンマークは一向に消えない。
「あ、あ!こ、れだ、から!」クロちゃんが頭をガシガシと掻き毟り地団太を踏む。
「いいか!?お前は長生きじゃないからそんなことが言えるんだ!いや、まあ私も六十年そこらしか生きとらんが!」
「あれ、四十代だとおもってた」
「お前とは生きてる時間が違うんだ!でも!考えろ!高天原会議メンバーはいつから生きてるかわからん!あの猫又も私が生まれてから容姿をシワ一つも変えない化け物だ!」
「あれ、ところで平均寿命てどのくらいなの?」
「平均して百五十だ、長く生きても二百年だろうね」
「へえ」
「でもあいつらは、私のばあちゃんの代から生きている。つまり!最低でも200以上!生きることに飽きているから。こんなことができる・・・」
「ほお」
「ほかに書いてあることを見てみろ、禁足地の開放、巨大ロボットの再稼働・・・。いみがわからねえ」
「・・・それで、祭りを邪魔したいと?」
「そうだ、お前をだいだらぼっちにならせなければ、祭りのメインが破たんするんだから、案外簡単に勝てそうだな」
「クロちゃんて案外優しいですよねえ」
「おへっ、そ、そうかい」クロちゃんのひげがピンピン動く
「でも大丈夫だよ。私、そういうのには強く当たれる人だから」
雀はひらひらと手を振りニャーニャーと声のする部屋を後にした。
薄暗い廊下を抜けて食堂に戻ると、あろうことか高天原会議メンバー5名が勢ぞろいしていたのでした。 
 

 
後書き
それにしても物語を作ると思い通りに進まない。だって主人公は男のはずだったのにね。 
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