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オズのボタン=ブライト

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第十幕その二

「悲しんだり驚くこともないんだよ」
「ボタンの家はオズの国全てじゃ」
 こうも言った王様でした。
「この子はお家の何処かにいるのじゃよ」
「じゃあお家の何処かにいつもいる」
 カルロスは王様のお言葉を聞いてこの考えに至りました。
「そういうことですか」
「うむ、寝ている間にお家の何処かに移る」
「そうなっているんですね」
「だからな」
「それで、ですね」
「別に驚くこともなくな」
「慌てることもなく」
 カルロスも言うのでした。
「近くにいればですね」
「それでよくてな」
「遠くにいてもですね」
「また会えるぞ」
「絶対にですね」
「そうじゃ、偶然な」
「その偶然の時を待つ」
 まさにと言ったカルロスでした。
「そういうことですね」
「その通りじゃ、では明日はな」
「明日は?」
「牧場に行くか」
「この国の牧場ですか」
「そうじゃ、そこに行って遊ぼうぞ」
「ううん、牧場といっても」 
 カルロスは王様のお話を聞いて直感的に思いました。
「オズの国ですから」
「ええ、外の世界の牧場とは違うわよ」
 ジュリアがカルロスにお話しました。
「またね」
「やっぱりそうなんですね」
「そう、オズの国の牧場だから」
「外の世界とはまた違う」
「楽しい牧場よ」
「じゃあどんな牧場か楽しみにしています」
「君達もきっと喜んでくれるよ」
 王子はカルロス達に優しく微笑んでお話しました。
「だから今日から楽しみにしておいてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあです」
「王子が言われる通りにしています」
「今から楽しみにしています」
「そうしています」
 五人も王子に笑顔で応えます、そして。 
 つぎはぎ娘は新しいレコードをクラシックな蓄音機にセットして針を置きました。そのうえで皆に言うのでした。
「次の曲はじまるわよ」
「わかったよ、じゃあまた聞こうね」
「そうしようね」
「うん、ただレコードなんだね」
「CDじゃないわよ」
「しかも蓄音機なんて」
 本当に昔の蓄音機です、銅製でラッパみたいな拡声器まで付いています。
「古いね」
「わしはこうしたのも好きでな」
「古いものもですか」
「昔から持っておる」
 それこそこの蓄音機が現役だった頃からです。
「そうして聴いておるのじゃ」
「今もですか」
「CDも好きじゃが時としてな」
「レコードと蓄音機でも聴きたくて」
「こうして聴いておる」
「そうなんですね」
「ではよいな」 
 カルロス達にあらためて言うのでした。
「今日はこうしてな」
「レコードで、ですね」
「音楽を聴いていこうぞ」
「わかりました」
「レコードの曲もよいじゃろ」
 また笑って言った王様でした。 
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